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遺産分割の諸問題(1) -特別受益と寄与-

家事

2015/10

茂木佑介

相続に際して遺言が存在しない場合、各相続人が法定相続分(民法900条)に応じて遺産を相続するのが原則です。しかし、各相続人が生前、被相続人から受けた利益の内容や程度(特別受益)、又は、被相続人に対して寄与した内容や程度(寄与分)によっては、相続の段階において相続分が修正される場合があります。

まず、「特別受益」は、共同相続人の中に、被相続人から遺贈を受けたり、生前に贈与を受けたりした者がいた場合に、相続に際して、当該不公平を調整する制度です(民法903条)。もっとも、生前に為された贈与が全て「特別受益」と判断されるわけではありません。あくまで当該贈与が「相続財産の前渡し」と評価されるか否かを基準として判断されることになります。なお、被相続人が事前に当該贈与を、相続に際して調整することが不要と考えている場合は、その旨を遺言その他の方法で明らかにしておけば、「特別受益」による修正をする必要が無くなる場合があります(持ち戻し免除の意思表示)。

次に、「寄与分」は、共同相続人の中に、被相続人の財産の維持又は増加に特別の寄与をした者がいた場合に、相続に際して、当該寄与度を調整する制度です(民法904条の2)。もっとも、相続人の寄与が全て考慮されるわけではなく、「通常期待される程度を超える貢献」をした場合に限られています。当該相続人が、被相続人に対し、医療費や施設入所費等の金銭等を出資していた場合は「寄与分」に該当すると判断されやすいですが、いわゆる療養介護の場合は、被相続人の状態や、介護の度合いによって大きく異なってきます。

「特別受益」と「寄与分」に関する典型的な事例として、相続人の一人(相続人A)が被相続人の介護を一身に担っている一方で、被相続人から使途不明金が度々流出している(おそらく相続人Aが引き出していると思われる状況)というケースがあります(以下「本事例」といいます)。他方の相続人(相続人B)は、「相続人Aは被相続人より多くの特別受益を既に得ている。」と主張しますが、相続人Aは「使途不明金ではなく、被相続人の療養看護費として使用されたものである。むしろ、自分は長期にわたって被相続人を介護していたのだから『寄与分』を貰えるはずだ。」と主張する場合が度々あります。

もっとも、本事例のような場合、使途不明金の部分が「特別受益」に該当すると評価されることは難しいことが多いです。前述のとおり、「特別受益」はあくまで「贈与」として為されたものである必要がありますが、本事例においては、被相続人が相続人Aに対して財産を「贈与」したわけでは無い可能性が高いからです(あるいは「贈与」したことを立証することが困難なことが多いです)。その為、遺産分割の手続ではなく、上記使途不明金を取り戻す為には、別途不当利得返還請求訴訟等を行う必要があります(その際も、立証の問題は避けられません)。他方、相続人Aの「寄与分」についても、相続人の要介護度が余程高かった等の事情が無い限り、認められない場合が多いです(一般的に要介護度が2以上になると寄与分が認められやすくなる傾向があるようです)。

いずれにしても、遺産分割は法律上の専門的な問題が複雑に絡んできます。何か不明な点があれば、遺産分割案件を多数取り扱っている当事務所にご相談ください。

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