知的財産権コラム第12回「並行輸入と商標」 | 鹿児島 弁護士|弁護士法人グレイス 鹿児島県弁護士会所属

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並行輸入と商標

企業法務

2016/10

森田博貴

1 外国製品が日本国内で販売されるまでのルート

外国のブランド品を、当該ブランド企業が日本で販売しようとする際は、日本に正規代理店を置くのが通常です。この場合、商標については、外国企業が日本でも商標権者となった上で代理店に専用実施権を設定したり、当該外国企業と代理店契約を結んだ国内法人が同法人名義で商標権を取得したりと色々なパターンがあります。

いずれにせよ、海外のブランド品は、正規代理店を経由して販売するのが通常ですが、一方で、別ルートを介してブランド品が日本に持ち込まれて販売されることもあります(あくまで「正規品」を問題としており、いわゆる「海賊品」についてはここでは議論しません)。こうした正規代理店を経由しないルートの輸入は、一般に『並行輸入』と呼ばれます。

たとえば、イギリスのブランド企業が日本に正規代理店を設置し、そこを通じてブランド品を販売する一方、同ブランド企業は中国にも同じような代理店を置き、日本よりも安い値段で同じ商品を提供しているとします(日中どちらの国で売られている商品も正規品です)。この場合、中国国内でそのブランド品を購入した後、日本に持ち込んで正規品より低廉な価格で転売した場合、その差益を取ることができます。並行輸入とは、こうしたインセンティブに基づいて行われる貿易形態をいいます。
 

2 商標法との関係

もっとも、商標法2条3項2号は、以下のとおり規定しているため、並行輸入は、形式上商標の「使用」に当たり、商標権者の許諾のない限り商標権侵害となります。

2条(定義等)
  3項 この法律で標章について「使用」とは、次に掲げる行為をいう。
  二 商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し、引渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為

では、上のような例で、並行輸入を行った者は、日本国内において当該商標の商標権もしくは専用使用権を有している者の権利を侵害したことになるのでしょうか。
 

3 結論

結論として、次の要件を充たす限り、商標権侵害にはなりません(大阪地裁昭和45年2月27日判決 パーカー事件)。

一 商標が、海外(上の例ではイギリス)の商標権者もしくは同人から使用許諾を受けた者により適法に付されたものであること
二 海外の商標権者と日本国内の商標権者が同一人、もしくは同視し得るような関係(上の例でいえば正規代理店)があり、商標も同一の出所(上の例でいえばイギリスの企業)を示していること
三 商品の品質が同一であること

この『パーカー事件』の『パーカー』とは、万年筆で有名な米国パーカー社のことです。米国パーカー社は、日本で同社の万年筆を販売するに当たり、「PARKER」の日本国内商標を自社で取得した後、カナダ法人を日本国内販売ルートの正規代理店として、同社に対し同商標の専用使用権を設定していました。この米国パーカー社は、香港でも同社ブランドが付された万年筆(正規品)を販売していたのですが、この際の販売価格が日本国内の販売価格よりも低かったため、当該万年筆が日本国内に並行輸入されていたのです。

この並行輸入が当該カナダ法人の専用使用権侵害に当たるかが裁判で争われたのですが、大阪地裁は、上記3点の要件を充たす限り、商標権が防ごうとする商品の出所混同を来すことはなく、消費者が不利益を被ったり、商標権者が有する商品の信頼に関する利益が害されることはないとして、当該並行輸入は、商標権侵害に当たらないとしたのです。

もっとも、上記3点が充たされない場合には、商標権侵害となりますので、注意が必要です(最高裁平成15年2月27日判決 フレッドぺリー事件参照)。

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