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防護標章制度について

企業法務2016/11  森田博貴 (※ニュースレター35号掲載)

今月は、防護標章をテーマに取り上げます。
防護標章とは、使用する予定のない商品や役務についても、著名な商標を有していれば権利として保護され、他人の権利化や使用を阻止できる制度です。
たとえば、米国の大手IT企業の一つである「IBM」(余談ですが、弊所代表弁護士の古手川がかつて勤めていた会社でもあります)は、主力商品である「電気通信器具、電子応用機械器具」を対象に「IBM」という商標の登録を行う他、「織物、編み物、フェルト、その他の布地」等の同社の事業内容とは無関係の商品に対しても、防護標章を獲得しております。

商標権は、対象となる商品・役務を指定して登録することは既に何度もご説明して参りましたが、防護標章制度は、そうした制度の不都合を是正するために設けられた制度です。
すなわち、たとえば、私が「IBM」という商標を「織物、編み物、フェルト、その他の布地」という商品類型を指定して登録した場合、私は、Tシャツに「IBM」のロゴを用いて自由に売ることができることになります。もっとも、たとえば私がものすごく恰好の悪いTシャツをデザインし、そこに「IBM」のロゴを常に付けたとすると、IBMはどのような不利益を被るでしょうか。「IBM」という商標が社会からの嘲笑の対象になるなど、IBMのブランドイメージを下げる事態が生じかねません。

防護標章とは、そういった事態を避けるべく、自らが使用する予定のない商品・役務についても、自らが既に登録している商標を保護(防護)することを目的に一定の保護を与えるものなのです。
その保護の内容についてですが、具体的には、防護標章の登録がなされた場合、他者は、当該標章と同一内容の商標登録を受けることができず、また、無断で勝手に当該標章を利用している場合には、その差止めや損害賠償の責めを負うことになります。
たとえば、上のIBMの例でいえば、IBMは、「織物、編み物、フェルト、その他の布地」を対象に「IBM」の防護標章登録を行っているため、私が「織物、編み物、フェルト、その他の布地」を対象に「IBM」という商標の登録を得ることはできず、また、勝手に「IBM」というロゴを用いたTシャツを作って販売することもできないこととなります(これを行うと商標権侵害となり損害賠償責任等の法的責任を負うこととなります)。

なお、上の説明を受けて、「そうであれば、IBMは、『織物、編み物、フェルト、その他の布地』についても、防護標章ではなく、通常の商標登録を受ければよいのではないか」との疑問を抱く方がいらっしゃるかと思います。しかしながら、これはできません。すなわち、通常の商標の登録には、「使用する意思」(商標法3条1項『自己の業務にかかる商品又は役務について使用する商標』)が必要とされています。IBMには、Tシャツの作成・販売を行う意思は通常認められないため、「織物、編み物、フェルト、その他の布地」を対象とする商標登録はできないのです。

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