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企業法務コラム

自主再建

投稿日:2022/08/10
更新日:2023/12/11

銀行に対し、支払い猶予を求めたり、リスケジュールを打診することが可能です。
しかし、むやみにするものではありません。

自主再建を考える場合について

将来的に大きな売上が見込めるが、来月の支払が厳しい・・・
毎月の約定弁済が厳しいので、返済方法を変更したい・・・

このような場合、取引銀行にかけあって支払猶予を求めたり、リスケジュールをお願いしたりしてみることが有効かもしれません。長年の付き合いがある銀行であれば、案外すぐに応じてもらえるかもしれません。しかし、むやみに打診することは禁物です。

支払猶予等の打診とともに、あなたの会社の財務状況をさらけ出すことになりかねないからです。取引銀行に対してリスケジュールを打診した後、あなたの会社の財務状況が悪いため、取引銀行がリスケジュールの打診に応じずに債権回収に専念してくれば、元も子もなくなります。

支払猶予やリスケジュールを求めるにも、相応の準備が必要であり、また打診するタイミングも見計らう必要があります。また、そもそもそのような打診をすべきかどうかも、あなたの会社の財務状況等に照らして総合的に判断する必要があります。

まずは、弁護士に相談し、客観的に状況を把握することをお勧めいたします。

1 自主再建とは

自主再建とは破産や民事再生などの法的手続による再建ではなく、裁判所が直接に関与することがない再建のことを指します。

2 自主再建か法的手続か

(1)法的手続を利用するか否かを判断するにあたっては次の要素を考慮するとよいでしょう。

ア 対象となる債権者と同意を得る見込み

自主再建の場合には、協議を要請する債権者を任意に決めることができる反面、弁済計画には全債権者の同意が必要となります。これに対し、法的手続の場合には、債権者全員の同意がなくとも権利内容の変更を強制的に実現できます。

イ 手続の公正さ・透明性

私的整理は裁判所を介するものではないため、法的手続と比べ手続が不透明であるという特徴があります。債権者からすれば、財務情報など必要な情報開示を受ける保障が確実でない等がその例です。また、私的整理は手続の主宰者も裁判所ではないため、個人的な資質や善意に委ねられる点も挙げられます。

ウ 手続に要する時間と費用

法的手続は時間がかかる上に裁判所へ支払う予納金などの費用も高額となります。他方、自主再建の場合には短期間で終わることが多い上、費用も低額に抑えられます。

エ 企業価値の毀損の可能性

法的整理によると債務者の情報が官報に掲載されますが、自主再建であれば密行性が保たれます。そのため、自主再建であれば企業価値の毀損が最小限に抑えられるという事実上のメリットがあります。

オ 強制力の有無

法的手続は一律に債権者による個別的権利行使が禁止されるのに対し、私的整理は債務者からの要請と債権者による自制に委ねられる点で強制力に差があります。

(2)上記のような考慮要素を総合的に判断して法的手続か自主再建かを検討する必要があります。このような検討についても当事務所で随時ご相談を承ります。

3 自主再建の代表的な種類

(1)債権カット(債務免除)

現在負担している債務の全部又は一部を免除することにより、自主再建を図る方法です。自主再建としては最も効果のある方法ではありますが、債権者の了解を得るのが難しい方法の1つです。しかし、債務免除の範囲を限定するなど条件によってはこれに応じてもらえる場合もあります。後述するリスケジュールでは自主再建が困難な場合に使われる方法です。

(2)リスケジュール

通常の金銭消費貸借契約においては、「(一定の期限までに)支払いがない場合には、期限の利益を失い、残金全額を直ちに支払わなければならない」旨の規定が置かれております。この規定が存在することによって、返済の猶予が失われるだけでなく、残金全額についての利息まで支払わなければなりません。
そこで、遅滞している支払い分について、期限の利益を回復し、一定の期間内に弁済を行う約束を債権者との間で取り交わすことによって、返済計画を見直すことが考えられます。また、遅滞している支払い分はないものの、資金繰りに窮している場合に、弁済期間を延長することで余裕のある資金繰りを実現することも考えられます。これらをリスケジュールと呼んでおります。資産や事業がさほど劣化しておらず、負債もさして過剰でない場合に利用される方法です。

(3)事業譲渡・会社分割

既存の債務について交渉するのではなく、財務状況が悪化している不採算部門を企業から切り分け、収益性や将来性の見込まれる事業部門を抽出し、第三者に譲渡する方法です。これにより、譲渡代金を得るとともに、将来に向けて経営改善を行うことが考えられます。事業譲渡は会社法の規制に服しますが、必ずしも裁判所を解する必要はなく、任意に行うことができます。

(4)第二会社方式

上記の事業譲渡を応用させる方法です。すなわち、事業譲渡や会社分割によって、収益性や将来性の見込まれる事業部門を切り出し、第二会社(スポンサー、従業員、親族などによる事業の受け皿)に承継させ、収益の改善を図りつつ、不採算部門は会社に旧会社に残し、破産などによって金融債務にかかる不良債権処理を実施し、事業の再生を図る方法です。

4 自主再建の具体的方法

(1)任意の交渉

何らの機関等も利用することなく、債権者との間で個別の交渉をする方法です。あくまで私的な交渉ですので、やみくもに交渉に臨んでも債権者の了承を得ることはできません。また、債権者に対する説得力も必要となります。このような場合に、弁護士の存在が有益です。交渉段階から弁護士が入ることにより、できるだけ債権者から好条件を引き出すことが可能になります。

(2)特定の機関による各種制度を利用する方法

現在利用可能な制度としては

 ①中小企業再生支援協議会による再生計画策定支援制度
 ②整理回収機構による企業再生業務
 ③事業再生実務家協会による特定認証ADR制度
 ④地域経済活性化支援機構の制度があります。

それぞれの制度は主催者が異なり、細かな点に違いこそありますが、これらの制度は大まかに言えば、次のような手続きの流れにより進められます。

まず、複数の金融債権者から借り入れのある債務者企業が、金融債務に関する免除や猶予といった支援要請を含む事業再生計画を策定します。そして、これについてメインバンクなどの主要債権者の同意を得て、金融支援の要請先である債権者に対して共同提案を行い、債権者が行う個別回収や保全強化の「一時停止」を申し入れます。その後、第三者である専門家アドバイザーによる客観的視点からの調査報告を仰ぐことで、債権者における検討と判断に資するようにして、3ヶ月程度の協議期間を経て合意形成をめざすという流れです。

(3)裁判所による特定調停制度

裁判所を介すという意味では、純粋な私的整理ではありませんが、民事再生や会社更生と異なり、手続の開始決定により債権者の個別的権利行使を禁止する効力や、法定多数の同意で可決された再建計画の認可決定により不同意債権者を拘束する効力がありません。むしろ、債務者の弁済計画案について債権者や担保権者との間で合意をめざすという点で私的整理と同様の性格を有します。

監修者

弁護士法人グレイス企業法務部

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