企業法務コラム
土地建物の明け渡しの5つのステップ
更新日:2023/12/20
賃借人が家賃を支払ってくれない・・・
賃借人以外の人が住んでいるようだ・・・
このような場合であっても、賃貸人は賃借人の同意なく、賃貸人自身で勝手に鍵を交換したり、部屋の荷物を片付け処分したりして、明渡しを強行することはできません。このような方法をとったときには、場合によっては刑法に抵触することや民事上の責任を問われることもあります。
したがって、法的な手続きによって明渡しを実現することが重要です。以下、明渡手続の流れを一例として紹介させて頂きます。
1.内容証明による催告・交渉
賃借人と連絡がとれる場合には、賃借人の事情を聞き、話し合いや交渉を行うことで、裁判手続を行わずに解決できるケースもあります。
まずは内容証明郵便によって、賃料の催告や賃貸借契約の解除を求める意思表示を証拠に残した上で、話し合いや交渉を開始します。
任意交渉で明渡しが完了できれば、裁判手続きを行うよりも短期間での解決となり、また費用も大幅に抑えることが可能です。
2.物件の調査
弁護士が一緒に直接現地に赴き、現況を調査します。物件の調査時に、賃借人が在宅していれば、直接話し合いができる可能性もあります。また、賃借人が訴状を受け取らない場合には居住(占有)していることの確認を必要とするため、今後の手続をスムーズに進めることを目的として、証拠化しておくことが重要です。
3.占有移転禁止の仮処分
賃借人が多重債務などに陥って行方不明になり、得体の知れない占有者がいるという場合があります。このような場合、占有者は物件の明渡しを妨害するため、物件の占有をさらに第三者に移してしまうことがあります。
明渡しの判決を得る前に第三者に占有が移転してしまうと、その後に得た判決が無意味になり、再度占有者を相手に訴えを提起しなければなりません。占有移転禁止の仮処分は、これを防ぐための手続です。
4.賃料請求・明渡請求訴訟
賃借人が話し合いや交渉に応じないときや、賃借人が行方不明になっているような場合もあります。このような場合には、裁判所に建物明渡しに関する訴えを提起し、判決を得ることで、明渡しを実現することができます。また、これと同時に賃料の請求を行い、判決を得ておくことは、後の債権回収に有益です。
5.強制執行
明渡しの勝訴判決を得ても、直ちに賃借人が退去するとは限りません。賃借人や占有者が開き直って任意に明け渡さない場合や、賃借人が行方不明になっているような場合には、強制執行手続によって、強制的に明渡しを行います。
強制執行申立後、数日のうちに催告日が決められ、執行官が物件に赴いて催告を行います。通常は催告の日から1か月後に強制執行を行う期日(断行日)が定められます。断行日に執行官、執行補助者という運送業者等が物件に赴き、荷物を強制的に取り出し、明渡しが完了となります。
なお、未払賃料に関する判決を取得している場合は、明渡強制執行とともに、動産執行の申立を行うことで、催告時に、部屋に動産(貴金属や高価なブランド品等)があった場合には、それを換価して未払賃料に充当することもできます。
以上の手続きとなりますが、賃貸人にとっては一刻も早く明渡しを完了させることが、経済的なメリットとなります。また、適正な手続きを踏むことが、後のトラブル防止にもつながります。明渡しに関しては、それぞれのケースにより柔軟に対応していく必要がありますので、まずは、お気軽に弁護士にご相談下さい。
監修者
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