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意見照会手続について弁護士が解説

投稿日:
更新日:2024/02/22
意見照会手続について解説

1. 意見照会手続とは

 意見照会手続とは、プロバイダ責任制限法に定められた手続で、権利侵害を受けたと主張する側が、コンテンツプロバイダやインターネットサービスプロバイダ(アクセスプロバイダ)に対して発信者情報開示請求を行なった際に、プロバイダが、発信者に対し、「あなたの情報を開示してよいですか」と、意見を尋ねることを意味します。

 インターネット上で誹謗中傷を受けた方は、発信者を特定して名誉毀損や業務妨害を理由とした法的な反撃を試みることが少なくありません。もっともインターネットは匿名性が高い空間のため、被害を受けた方(以下、発信者情報の「開示請求者」と言います。)は、コンテンツプロバイダやインターネットサービスプロバイダ(アクセスプロバイダ)に対して、発信者情報の開示を求め、発信者を特定する活動を行う必要に迫られます。意見照会は、この一連の発信者情報開示手続の中で、開示請求を受けたプロバイダが発信者に対して行う問合せ(照会)のことを指しています。

 プロバイダ責任制限法に基づく発信者情報開示請求を受けると、その請求を受けたコンテンツプロバイダやインターネットサービスプロバイダ(アクセスプロバイダ)は、原則として、発信者に対して、情報を開示して良いかについて意見を聞かなければなりません。このように発信者に対して開示の可否について尋ねる手続が意見照会で、プロバイダ責任法4条2項に定められているものです。

2. 意見照会がなされるタイミングについて

 コンテンツプロバイダに対してIPアドレスの開示を求める請求においては、このコンテンツプロバイダは問題となっている投稿等の投稿者の連絡先を知らないことから、意見照会をすることができません。

 意見照会手続がなされるのは、コンテンツプロバイダからIPアドレスの開示を受け、そのIPアドレスを元にインターネットサービスプロバイダ(アクセスプロバイダ)に対して投稿者の住所氏名の開示請求が行われたタイミングとなります。この意見照会への回答期間は、ガイドラインにより2週間とされています。

3. 意見照会に対する回答とその後のプロセス

(1) 意見照会に対して、発信者が開示に同意する場合には、同意する旨を記載して回答することになります。

 しかし、多くの場合、発信者は今後自己の責任が追及されることを想定し、不同意の回答を行います。発信者が同意しない場合、インターネットサービスプロバイダ(アクセスプロバイダ)は開示請求者に対して発信者情報を開示しない傾向にあります。

 そのため、開示を求める側は、プロバイダを被告とする発信者情報開示請求訴訟を提起し、判決で開示請求が認められれば、プロバイダから発信者情報が開示されることになります。

 なお、発信者は、意見照会に対して不同意の回答を行う場合、不同意とする具体的な理由を記載することが求められます。

 なお、意見照会に対して回答を行わない場合、プロバイダとしては、意見がないものとして、情報を開示する可能性があります。そのため、発信者としては、意見照会書が届いた場合には不測の事態を避けるためにもこれに回答すべきと言えます。

(2) それでは、不同意する場合、意見回答書にどのような記載をすれば良いのでしょうか。回答としては、以下の2つが考えられます。
 ①権利侵害に関するもの
 ②開示を受けるべき正当な理由に関するもの

 以上の内容について順に説明します。
 まず、①の権利侵害に関するものは、裁判においても中心的な争点となるところであって重要です。開示を拒みたい発信者としての具体的な回答案には、「投稿には同定可能性(その書き込みが誰のことを指しているのか、他者が見てわかること)がない」、「投稿内容は名誉毀損と言えるものではない」といった結論を理由を付して主張するものが考えられます。この権利侵害性(①)に関する回答は、投稿内容によりその主張内容が変わりますので、具体的な反論については専門家に相談することをお勧めいたします。

 次に、②の開示を受けるべき正当な理由に関するものとは、プロバイダから発信者情報の開示を受けるべき正当な理由が開示請求者には認められないと意見するものです。回答の具体例としては、情報が開示されると、情報の開示を受けたものが自宅に押しかけてくる、ネット上にその情報が晒されてしまうなど、不当な攻撃が予想されるなどの、開示が実現した場合に予想される弊害や、その弊害の発生可能性が高いと推測される根拠を主張することが考えられます。

 その他、契約者と投稿者の同一性に関するものについては、投稿は自分がしたものではないという回答が考えられます。しかし、特段の事情がない限り、契約者と投稿者は同一と推定されるという裁判例もあるため、有効な回答とは言い難い面があります。

4. 意見照会回答後の流れについて

 発信者情報開示請求が任意の請求で行われている場合には、プロバイダは意見照会の回答を加味して、当該発信者情報請求へ対応することになります(発信者が開示に同意しない場合、プロバイダは開示請求に応じない傾向にあります。)。その結果、発信者情報が開示されない場合には、訴訟によって、発信者情報の開示を求めることとなります。

 訴訟において、発信者情報開示請求がなされた際の意見照会についてはその回答、プロバイダはその回答を踏まえて訴訟手続を遂行していくことになります。場合によっては、この回答書が証拠として提出されることもあり得ます。 発信者情報開示請求訴訟が提起された場合、被告となるのは発信者ではなくプロバイダです。本質的に利害関係のないプロバイダが手続上、被告の地位に立つというのがこの制度の面白い点でもあります。訴訟の当事者となったプロバイダは、意見照会への回答を通じて発信者が主張している内容に立脚して訴訟追行を行うこととなります。回答書は、プロバイダ側の証拠として裁判所に提出されることが多いです。

 以上のとおり、意見照会に回答した後は発信者情報開示請求を受けているプロバイダが対応を行い、発信者としては、当該請求に関する判断を待つことになります。

5. 最後に

 以上のとおり、意見照会を受けた場合に無視するのは発信者の立場からすると得策ではありません。もっとも、意見照会の回答として不同意を出す場合、その回答内容はその後の発信者情報開示請求の結果に直結するため注意が必要です。できれば、記載内容については専門家の意見を参考にした上で作成するのが望ましいでしょう。名誉毀損による賠償を避け難いような局面では無意味に不同意を出して争うよりも開示に同意した上で弁護士を通じて示談を試みる方が合理的なケースも多いです。

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【著者情報】

企業法務部 部長 福岡県弁護士会(弁護士登録番号:33334)

九州大学大学院法学研究科修士課程 修了

米国Vanderbilt Universityロースクール(LLMコース) 卒業

三菱商事株式会社、シティユーワ法律事務所を経て、現在弁護士法人グレイスにて勤務

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監修者

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