企業法務コラム
第1回 『事業承継』とは何か
更新日:2019/10/27
事業承継
弁護士:播摩洋平
私は、弁護士になり13年近くになりますが、その大半は、会社関係の案件に従事して参りました。
事業承継という言葉は、会社を経営されている方であれば、どこかで聞いたことが必ずあると思います。中小企業において、事業承継が課題になっているという話は、一般的によく聞く話です。
他方で、事業承継という言葉のイメージだけが先行しており、その内容が良くわからないという方もおられるかと思います。
事業承継とは、簡単に言いますと、会社の後継者をいかにして見つけるか、見つけた後継者にどのようにして会社を引き継ぐか、という2点に尽きます。
会社の多くは株式会社です。株式会社のオーナー(所有者)は、株主です。中小企業の多くでは、会社の株主と社長は同じ方であることも多いと思いますが、事業承継で問題になるのは、「株主の引継ぎ」です。株式会社であれば、事業承継は、会社の株式を誰に引き継ぐか、引き継ぐ先が決まった場合にどのようにして引き継ぐか、ということになります。株式を引き継ぐことができれば、社長の引継ぎも、自ずと決まっていきます。
昨今の少子化により、中小企業の後継者問題は、難問となっています。会社の経営はうまくいっているものの、後継者がいないために、「自分がいなくなった後、会社がどうなるのか」という不安を抱えている経営者の方もおられます。その懸念は、年月を経るたびに大きくなります。
身内・社内のいずれにも後継者がいなければ、会社を外部の方に買っていただくほかありません。経営者の方としては、成長させてきた会社を手放すことに寂しさと抵抗があると思います。しかし、売上が出ており、取引先もあり、何よりも従業員のことを考えると、やむを得ない選択になります。このように、会社を外部の方にお売りすることを、「M&A」と呼びます。日本語で言うと企業買収という呼称になりますが、響きが良くないため、英語の略称であるM&Aという呼び方が一般的になりました。
他方で、幸いにして身内に後継者がいる場合であっても問題点は少なくありません。
まず、承継する際に発生する税金が問題になります。承継の行い方については複数の方法がありますが、よくある方法の1つは相続です。しかし、相続税が高いため、結果として承継がうまくいかないという問題もあります。
また、後継者候補の子が数名いるような場合には、どの子を後継者にするか、後継者から外れた子をどのように処遇するかという問題もあります。さらに、経営者の方が会社の株式の全部を持っていない場合には、残りの株式をどのように集約するかという問題もあります。
会社の経営を次の世代に引き継ぐことは、長い会社の歴史の中で頻繁には起こりませんが、会社・経営者のいずれにとっても、非常に重要な事柄です。法律的にも、税務的にも、検討し解決しなければならない点が多数ございます(次回に続く)。
監修者
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