企業法務コラム
団体交渉における注意点について
更新日:2023/12/20
1. 団体交渉は拒否できる?
労働組合から団体交渉の申入れがあった場合、会社は正当な理由なくこれを拒否することはできず、誠実に交渉する義務があります(労働組合法7条2号)。したがって、拒否できるのは後述のとおり、極めて例外的な場合に限られます。
ただし、誠実に交渉する義務には、譲歩し妥結しなければいけない義務まではありません。
2. 労働組合からの団体交渉を拒否したときの罰則は?
団体交渉を拒否した場合、組合から労働委員会に対して救済の申立(労働組合法27条)がなされる可能性があります。この申立に理由があると判断された場合には、労働委員会から会社の不当労働行為を是正するよう、救済命令が出されることになります(労働組合法27条の12)。
救済命令が確定したのにもかかわらず、これに応じなかった場合には、50万円以下の過料が科される恐れがあります(労働組合法32条)。
また、救済命令の取消訴訟を経たうえで、救済命令が確定したにもかかわらず、これに応じなかった場合には、1年以下の禁錮若しくは100万円以下の罰金と規定されています(労働組合法28条)。
なお、罰則とは異なりますが、団体交渉の不当な拒否は不法行為として損害賠償義務が認められる場合もあります。
3. 団体交渉の申入れを拒否できる理由とは?
(1)交渉が決裂したとき
団体交渉に応じ、誠実に交渉を続けていたとしても、妥協点を見いだせないケースもあります。そのような場合には、それ以上話し合いを続ける意味はありませんので、打ち切ることは可能です。ただし、交渉の決裂を会社が判断するに際しては、十分な話し合いの機会を持ち、交渉を続けた経緯を必要とします。はじめから、話し合いの余地を示さなかったような場合であれば、後から不当労働行為と言われかねないことには注意が必要です。
(2)団体交渉事項にあたらないとき
原則として団体交渉事項に制限はありませんが、純粋に経営に関する事項については、団体交渉事項にあたらない場合があります。
ただし、会社の経営に関する事項が労働者の労働条件に関わってくる場合には、団体交渉事項になることには留意する必要があります。
(3)暴力、暴言など違法行為があるとき
労働組合側から、暴力行為や暴言、恫喝等の違法性を帯びる言動があり、今後もこれが継続する恐れがある場合には、暴力を行使しない旨等の保証のない限り、団体交渉を拒否することは可能です。
以上のとおり、団体交渉の申入れがあった場合には、原則としてこれに誠実に応じなければなりません。
しかし、会社が十分な準備を経ないまま、団体交渉を進めることは非常に危険です。団体交渉事項に対して、何を、どのように対応すべきか、検討を行ったうえで、適切に進めていく必要があります。
弁護士法人グレイスでは、労働組合との団体交渉への同席、準備のサポート等を行っておりますので、是非ご相談ください。
監修者
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