企業法務コラム
保育園・幼稚園でカスハラが起こった時の対応と事前にできる対策
更新日:2025/05/16
保育園/幼稚園でカスハラが発生した時の対応
保育園や幼稚園といった乳幼児を取り扱う企業体では、意外に多くのカスハラ被害が発生しています、これらの法人でカスハラが発生した場合には、どのような対応を取れば良いでしょうか。
特にモンスターペアレントと呼ばれるような悪質なクレーマーからのカスハラが発生した場合には、不当な要求に屈することなく、以下のような対応を取るべきです。
事実を把握し証拠を押さえる
まずは、カスハラ行為・カスハラ加害者について、事実を正確に把握するとともに、証拠(特に録音録画等の客観的証拠)を押さえることに注意が必要です。
カスハラ被害に遭った場合には、会社として(又は被害を受けた従業員個人として)、損害賠償請求・刑事告訴等の法的手続を取る可能性があります。しかしながら、これらの手続は、証拠がなければ行えません。何をするにも、まずは証拠(特に客観的な証拠)が重要なのです。
カスハラ被害に遭った場合に、証拠を収集できるような体制を組んでおくことが重要といえるでしょう。
職員を守る
次に重要なのが、職員・従業員を守ることです。
最近や保育士・幼稚園教諭の人手不足が叫ばれていますから、カスハラ被害によって重要な人的資源を失うことのないように注意しましょう。カスハラ被害があった場合には、職員に過度な負担がかかったり、過剰に負担が集中したりしないように、経営者が対応に回る・カスハラ加害者の対応担当を適宜変更するなどの工夫が必要でしょう。
また、カスハラによってストレスを抱えた職員の精神面のフォローも必要です。ストレスチェックや健康診断に加え、フォロー体制を充実することも有益でしょう。
冷静に毅然とした対応
カスハラ行為には、冷静に毅然とした対応を取ることも重要です。
カスハラ加害者は、不当なクレーム・不当な要求をしてくることが一般的です。この不当な要求を受けた際に、譲歩する(かもしれない)姿勢を示してしまうと、カスハラ加害者は態度を大きくしてしまいます。丁寧過ぎる姿勢がむしろカスハラを助長しかねないのです。
他方で、慌ただしく攻撃的に対応してしまうと、カスハラ加害者はかえって保育園・幼稚園の対応が不適切だと指摘してきます。場合によっては、恫喝された・強要されたと主張して警察に通報されることもあるほどです。
このように、不必要に紛争を拡大してカスハラ被害を大きくしないように、冷静かつ毅然とした態度でカスハラ加害者と向き合いましょう。
弁護士に相談
カスハラ被害に遭ったら、できるだけ早急に弁護士にご相談ください。弁護士の助言を受けながら、①どのような証拠を集めるべきか、②被害を受けた従業員に対してどのようなフォローをするべきか、③カスハラ加害者に対してどのような対応を取るべきか、④今後のカスハラ行為にどのような対策を取るべきかなどといった点について助言を得るべきです。
弁護士は法律の専門家であるとともに、紛争防止・予防のプロでもあります。カスハラ被害に遭った場合の対応に加え、カスハラ加害を予防したり被害を最小限に抑えたりするためにも、弁護士は有用です。いたずらに被害を拡大してしまう前に、ぜひ弁護士にご相談なさってください。
保育園/幼稚園ができるカスハラ対策
ちなみに、保育園・幼稚園としては、どのようなカスハラ対策を取ることができるでしょうか。代表的な対策は以下のようなものとなります。
保護者へのルール共有
まずは、保護者へのルール共有を徹底することで、保護者がモンスターペアレントになることを事前に防ぐことが考えられます。
保護者に対して保育園・幼稚園のルールや、カスハラを禁止していることなどを共有しておくことができれば、保護者のカスハラ行為を防ぐことが期待できるでしょう。特に、カスハラについて具体的に示しておけば、一般的な保護者はそれらの示された行為はしないはずです。
クレーム対応は園長や主任が同席
次に、クレーム対応を園長や主任が同席の上で行うことも重要な対策となります。
クレーム対応がカスハラになってしまうのは、クレーム対応における初期対応・初動にまずい部分があったからであることも多々あります。このようなことのないように、誰がクレーム対応をしても同じような対応をとることができるように、クレーム対応に園長や主任が同席して画一的な対応を見せることが重要となります。
また、クレーム対応に関する研修を園長が開くなどすることでも、クレーム対応の画一化は図れますので、お勧めです。
カスハラ対策マニュアルの作成
同様の観点から、カスハラ対策マニュアルを定めておくこともカスハラ対策として機能します。こうすることで、カスハラがあった場合に画一的な対応を取ることができるでしょう。
加えて、従業員のカスハラに対するストレスも軽減できます。従業員のストレスは、どのように対応したら良いか分からないという悩み・苦悩によって大きく蓄積します。これを事前に防ぐことで、従業員の思考負担を軽減すると、意外にカスハラの影響を小さくすることができるのです。
顧問弁護士との連携
最後に、顧問弁護士との連携もお勧めいたします。
顧問弁護士であれば、平時からあなたの保育園・幼稚園のことを熟知した上でアドバイスをしてくれます。また、カスハラ被害に遭う前に研修講師を務めてもらったり、カスハラ対策マニュアル作成をしてもらったりなど、事前の予防法務活動もしてもらえます。
カスハラ被害に遭う前に、その被害を最小限に食い止めるため、顧問弁護士との連携を取るようにしていきましょう。
保育園/幼稚園がカスハラ対策をしなかった場合のリスク
ちなみに、保育園・幼稚園がカスハラ対策をしなかった場合には、以下のリスクを抱えることになります。
職員の離職
第一に、職員の離職のリスクがあります。
職員がカスハラ被害を受けて多大なストレスを抱えてしまうと、職員の離職を招きます。上述のとおり、保育士・幼稚園教諭の人手不足が徐々に深刻化してきていますから、人材を失うことは法人にとって非常に大きな痛手となりかねません。
この人的資源を失うリスクが、最大のリスクといえるかもしれません。
保育の質の低下
第二に、保育の質の低下が招かれるリスクがあります。
上記のとおり、カスハラによって職員の離職が相次ぐと、それだけで人員不足になり、保育の質を維持することができなくなります。更に、個々の職員が辞めなかったとしても、カスハラによって少なくないストレスを抱えることになると、子どもに当たってしまう職員が出てくるおそれもあります。
行政指導
第三に、行政指導を受けるリスクがあります。
上記のとおり、職員が離職してしまうと、法令によって要求される職員数に欠員が出るおそれがあります。このように欠員が出た状態で運営を続けていると、行政指導は遅かれ早かれ避けられない事態となるでしょう。こうなってしまうと、補助金が出なくなったり、社会的信用を喪失したり、法人の維持・運営維持ができなくなってしまいかねません。
保育園/幼稚園でカスハラが起こる理由
保育園・幼稚園ではカスハラによるリスクが大きいのに、カスハラが起きやすい環境があるといわれます。以下のような環境要因がカスハラを増やしてしまいがちです。
子どもに関わることで感情的になりやすい
まず、子どもに関わる事業になりますので、職員も保護者も感情的になりやすいという問題があります。これは保育園・幼稚園の構造的問題になりますので、なかなか解消しがたい部分があります。
保護者側の仕事によるストレス
また、保護者側の仕事によるストレスの問題もあります。保育園・幼稚園を利用する保護者は、仕事をしているからこそ保育園・幼稚園を利用しているといえます。この仕事によるストレスも、カスハラを起こす要因となります。
園と保護者のコミュニケーションの行き違い
更に、保育園・幼稚園と保護者とのコミュニケーションの行き違いが起きてしまうこともあり得ます。どうしても保育園・幼稚園と保護者とのコミュニケーションの時間は、子どもの受渡しの短い時間や連絡帳等に依存してしまいがちです。
そうすると、コミュニケーションの行き違いも起きやすくなってしまいます。
保育園/幼稚園におけるカスハラの具体例
ちなみに、保育園・幼稚園でのカスハラの具体例は、以下のようなものとなります。
暴言・威圧的な態度
まず、暴言や威圧的な態度を取ることが挙げられます。純粋に職員のストレスを増加させるカスハラ行為です。
不当なクレーム
次に、不当なクレームが挙げられます。こういったクレームは長時間の電話によってなされることもあり、職員の時間を奪うカスハラ行為になりがちです。
他の保護者・園児への迷惑行為
更には、他の保護者・園児への迷惑行為も挙げられます。直接園を対象としない行為であっても、園の営業を妨害する行為ですから、カスハラ行為といえます。
まとめ
以上のとおり、保育園でカスハラが起こった際の対応等についてご説明しました。当事務所ではカスハラ対策を行っております。お悩みの際には、ぜひ当事務所にご相談ください。弁護士一同、あなたの保育園・幼稚園をモンスターペアレントから守る活動をさせていただきます。
監修者
弁護士法人グレイス企業法務部
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