企業法務コラム
人材紹介・派遣事業のカスハラ対策|事例と弁護士が教える放置するリスクと対応方法
更新日:2025/09/08
人材紹介・派遣事業の現場で、派遣先や求職者からの「カスタマーハラスメント(カスハラ)」に頭を悩ませていませんか。多くの関係者が関わる事業だからこそ、ときに理不尽な要求やクレームの板挟みとなり、従業員が疲弊してしまうケースは少なくありません。
経営者や現場の管理者として、日々このようなお悩みを抱いてはいないでしょうか。
- ・派遣先担当者からの威圧的な言動や、契約外の要求が常態化している。
- ・求職者からの度を越したクレームに、どこまで対応すべきかわからない。
- ・担当者任せの対応になっており、会社としての明確な方針や対策がない。
- ・社員が疲弊し、メンタル不調や離職に繋がらないか不安だ。
- ・何から手をつければ良いのか、具体的な対応方法がわからない。
一つでも当てはまるなら、この記事が貴社の課題解決の指針となるはずです。
本記事では、人材業界の法律問題に精通した弁護士が、カスハラ問題の根本解決に必要な知識と具体的なアクションを網羅的に解説します。
- この記事でわかること
-
- 人材業界特有のカスハラ事例と、法的な判断基準
- カスハラを放置した場合の具体的な3つの経営リスク
- 企業がすぐに実践できる発生時の対応フローと予防策
- 弁護士に相談するメリットと、具体的なサポート内容
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人材紹介・派遣事業で深刻化するカスタマーハラスメント(カスハラ)とは
なぜ人材業界でカスハラが問題になりやすいのか
人材紹介・派遣事業は、「派遣先企業」「求職者・登録スタッフ」「自社の従業員」というように、多くの関係者が関わるビジネスモデルです。それぞれの立場や利害が複雑に絡み合うため、他の業界に比べてコミュニケーションの摩擦が生じやすい特徴をもちます。
顧客である派遣先や求職者との間で板挟みになりやすく、従業員が過度な要求や理不尽なクレームの矢面に立たされるケースが少なくありません。このような業界構造が、カスハラ問題が深刻化しやすい一因となっています。
厚生労働省が示すカスハラの定義と判断基準
厚生労働省は、カスタマーハラスメントを「顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの」と定義しています。
ポイントは、単なるクレームとカスハラを分ける判断基準です。以下の2つの観点から総合的に判断されます。
- 要求内容の妥当性: 商品やサービスにまったくない欠陥を指摘するなど、要求内容そのものに妥当性があるか。
- 手段・態様の相当性: 要求を伝えるための手段や態度が、社会的にみて許される範囲を越えていないか。(例:暴言、脅迫、長時間の拘束など)
正当なクレームであっても、その伝え方が不相当であればカスハラに該当する可能性があります。
【類型別】人材紹介・派遣事業で考えるカスハラ事例
人材紹介・派遣事業の現場では、日々さまざまな形のカスハラが発生しています。ここでは、実際に発生しうるカスハラの事例を類型別にみていきましょう。
派遣先企業・担当者からのカスハラ事例
暴言・威圧的な言動
派遣スタッフの些細なミスに対して、派遣先の担当者が「お前のところは教育がなってないんだよ!」「こんな簡単なこともできないのか!」など、自社の営業担当者を大声で長時間にわたり叱責するケースです。他の従業員がいる前で罵倒されることもあり、担当者に大きな精神的苦痛をあたえます。
契約外業務の強要・理不尽な要求
「急に欠員が出たから、契約にないけど明日からこの業務もやらせて」「休日だけどトラブル対応で今すぐ事務所に来い」といった、契約内容を逸脱した業務を一方的に強要する事例です。断ると「使えないな」「契約を考えるぞ」といった言葉で脅されることもあります。
担当者の人格を否定するような言動
業務上の指導や要求を越えて、「君みたいな若い担当者じゃ話にならない」「女性だから感情的になるんだ」など、担当者の年齢、性別、経験などを理由に人格を傷つける発言をするケースです。これは個人の尊厳を著しく侵害する行為といえます。
求職者・登録者からのカスハラ事例
選考結果に対する過度なクレーム
求職者が希望する企業の選考に落ちた際に、「あなたの推薦の仕方が悪いから落ちたんだ」「責任をとって次の仕事を見つけないと訴える」など、キャリアアドバイザーに責任を転嫁し、過度な要求を突きつけるケースです。
執拗な連絡やSNSでの誹謗中傷
面談時間外に何度も電話をかけたり、メールを大量に送りつけたりする行為です。要求が通らない腹いせに、SNSや口コミサイトで「この会社の〇〇という担当者は最悪だ」などと、事実無根の内容を書き込んで誹謗中傷をおこなう事例も増えています。
派遣スタッフに起因するトラブル事例
これは少し特殊なケースですが、派遣スタッフが派遣先でトラブルを起こした際、その対応をめぐって派遣元の担当者に過度な要求をするケースも存在します。また、派遣スタッフ自身が派遣先でハラスメント行為をおこない、その解決を派遣元に丸投げするといった複雑な問題に発展することもあります。
人材紹介・派遣事業でカスハラを放置する3つの経営リスクと企業の法的義務
「顧客からのクレームだから仕方ない」とカスハラを放置してしまうと、企業は計り知れないダメージを受ける可能性があります。

従業員の離職・メンタルヘルス不調の発生
カスハラの最も深刻なリスクは、従業員の心身の健康が損なわれることです。優秀な社員が疲弊して休職や離職に追い込まれれば、会社にとって大きな損失となります。採用や育成にかかったコストが無駄になるだけでなく、組織全体の士気低下にもつながりかねません。
企業イメージの低下と採用活動への悪影響
従業員を大切にしない企業という評判は、転職口コミサイトなどを通じて瞬く間に広がります。一度悪評が立つと、企業のブランドイメージは大きく傷つき、新たな人材を採用するうえで深刻な障害となるでしょう。
安全配慮義務違反として法的責任を問われる可能性
企業は、従業員が安全で健康に働けるように配慮する「安全配慮義務」を負っています(労働契約法第5条)。カスハラを認識しながら適切な対策を怠った場合、この義務に違反したとして、従業員から損害賠償請求をされる可能性があります。裁判になれば、多額の賠償金支払いを命じられるケースも少なくありません。
人材紹介・派遣事業の企業が今すぐ取り組むべきカスハラへの対応と予防策
では、カスハラから従業員と会社を守るために、具体的に何をすべきでしょうか。「発生時の対応」と「平時からの予防策」の2つの側面から解説します。
【発生時】担当者と組織を守る初期対応フロー
1. 冷静な傾聴と事実確認
まずは相手の言い分を冷静に聞くことが重要です。ただし、相手の要求をすべて受け入れるということではありません。何に怒っているのか、何を求めているのかという「事実」を正確に把握することに努めてください。
2. 証拠の確保(録音・メール・時系列メモ)
後の交渉や法的手続きで有利に進めるためには、客観的な証拠が不可欠です。相手の許可を得て会話を録音したり、関連するメールを保存したりしましょう。いつ、誰から、どのような言動を受けたのかを時系列でメモしておくことも有効な手段です。
3. 担当者を一人にさせない組織的対応
最も重要なのは、担当者一人で抱え込ませないことです。カスハラが発生したら、すぐに上司や管理部門に報告させ、複数名で対応を引き継ぐ体制をとりましょう。担当者を顧客から物理的に引き離すことも、心身の安全を守るために必要です。
【予防策】カスハラに強い組織を作るための体制づくり
1. 会社としての方針の明確化と社内外への周知
「当社は悪質なハラスメントには毅然と対応します」という方針を明確に定め、社内規程などに明記します。その方針を自社のウェブサイトや契約書にも記載し、社外にも示すことで、悪質なクレームに対する抑止力となります。
2. 対応マニュアルの作成と実践的な研修の実施
どのような行為がカスハラにあたるのか、発生した際に誰に報告し、どのような手順で対応するのかを定めたマニュアルを作成します。さらに、ロールプレイングなどを取り入れた実践的な研修を定期的におこない、全従業員の対応スキルを底上げすることが望ましいです。
3. 相談窓口の設置とエスカレーションルールの策定
従業員が安心してカスハラの事実を報告できる相談窓口を設置します。法務部や人事部、あるいは外部の弁護士事務所などを窓口とすることが考えられます。どこまでの事案は現場で対応し、どこからを管理部門や弁護士に引き継ぐかという「エスカレーションルール」を定めておくことで、対応の遅れや混乱を防ぎます。
根本解決には弁護士への相談が有効|専門家だからできること
社内での対策には限界があります。特に、相手の要求がエスカレートしている場合や、法的な対応を検討する段階では、早期に弁護士へ相談することが根本的な解決への近道です。
客観的な状況判断と法的な見通しの提示
「このケースは法的にみてカスハラといえるのか」「裁判になったら勝てるのか」といった疑問に対し、弁護士は法律と判例に基づいて客観的な見通しを示せます。感情的になりがちな状況でも、冷静な経営判断を下すための羅針盤となるでしょう。
企業に代わる毅然とした対外対応
弁護士が代理人として交渉の窓口になることで、従業員はこれ以上カスハラ行為者と直接やりとりする必要がなくなり、精神的な負担から解放されます。弁護士名で内容証明郵便を送付するだけでも、相手が態度を改めるケースは少なくありません。
再発防止策の構築と法改正への対応
弁護士は、個別のトラブル対応だけでなく、貴社の実情に合わせた効果的な再発防止策(マニュアル作成や研修)の構築もサポートできます。また、労働関連法の改正など、最新の法情報に基づいたアドバイスを提供し、継続的に貴社を守ります。
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弁護士法人グレイスが提供するカスハラ対策サポート
私たち弁護士法人グレイスは、人材紹介・派遣事業をはじめとする多くの企業の法務顧問として、数々のカスハラ問題を解決に導いてきました。
貴社の状況に合わせた4つの具体的支援
貴社の課題やご希望に応じて、以下のような多角的なサポートを提供しています。
対応方針のアドバイス
個別のカスハラ事案に対し「どこまで要求に応じるべきか」「どのタイミングで対応を打ち切るべきか」など、法的な観点から最適な対応方針を具体的に助言します。社内だけでは判断が難しい場面でも、弁護士が客観的な視点でリスクを提示することで、冷静かつ適切な経営判断をくだすことが可能になります。従業員を守りながら、事態を収束させるための道筋を明確に示します。
弁護士名での書面・通知文の作成
執拗なクレームや要求が続く場合、弁護士名で警告書面(内容証明郵便など)を作成・送付します。相手の行為が業務妨害罪などに抵触しうることを法的に示し、不当な行為を即時中止するよう強く警告します。弁護士が介入したという事実が相手への強力な牽制となり、企業様が直接対峙することなく問題を解決に導きます。クレームが止んだ実績も多数あります。
クレーム・カスハラ対応の外部窓口
カスハラ対応で最も疲弊する従業員を守るため、貴社に代わり弁護士がクレーム対応の一次窓口となります。従業員は顧客と直接やりとりする精神的負担から解放され、本来の業務に専念できます。法律の専門家が毅然と対応することで、相手の理不尽な要求を抑制し、問題のエスカレートを防止します。従業員の安全と安心を確保するための最も直接的なサポートです。
社内研修・対応マニュアルの作成支援
カスハラに組織全体で対応できる体制を構築するため、貴社の実情に合わせた対応マニュアルの作成や、実践的な従業員研修を支援します。初期対応の手順や報告ルールを明確にし、研修を通じて現場の対応力を高めます。事前に備えることで従業員の不安を軽減し、カスハラが発生しにくい毅然とした企業文化を醸成。将来のリスクを予防する強い組織づくりに貢献します。
弁護士への相談・依頼にかかる費用について
弁護士への相談は費用が心配、という方もご安心ください。弁護士法人グレイスでは、初回のご相談は無料で承っております。まずはお話をうかがった上で、最適な解決策と明確なお見積もりをご提示します。顧問契約をいただくことで、日々の些細なご相談にもチャットなどで迅速に対応し、月額費用内でより手厚いサポートをおこなうことも可能です。
弁護士法人グレイスが選ばれる理由
圧倒的な実績と専門性の高さ(顧問契約700社以上)
当事務所は、700社以上の企業様と顧問契約を締結しており、その実績は信頼の証です。人材業界特有の問題にも深く精通しており、豊富な経験に基づいた質の高いリーガルサービスを提供します。
また、カスハラ対応の専門家として経営者向けのセミナーを開催するなど、カスハラに関する企業様のお悩み解決に向けて積極的に取り組んでいます。
専門チームによる迅速かつ細やかな対応
カスハラ問題には、スピード感が求められます。当事務所では、企業法務を専門とする弁護士チームが組織的に対応にあたるため、迅速かつ多角的な検討が可能です。
初回相談無料による対応
「まずは話を聞いてみたい」「弁護士に相談すべき内容かわからない」という場合でも、気兼ねなくご利用いただけます。問題が深刻化する前に、ぜひ一度無料相談の機会をご活用ください。
オンライン相談とチャットでの手軽な依頼
当事務所では、GoogleMeetやZoomなどを活用したオンライン相談に全国から対応しています。遠方の企業様でも、移動時間やコストを気にすることなくご相談いただけます。顧問契約をいただいた企業様とは、チャットツールを用いて日々のコミュニケーションを円滑におこなうことも可能です。
相談の流れとサポート体制
カスハラ対応のご依頼の基本的な流れ
当事務所へのお問い合わせからサポート開始までは、非常にスムーズです。
- お問い合わせ(電話・メール・LINE)
まずはお気軽にご希望の連絡方法でご連絡ください。 - 初回無料相談(オンライン・来所)
弁護士が直接お話をうかがい、問題点を整理します。 - ご提案・お見積もり
最適な解決策と費用を分かりやすくご説明します。 - ご契約・サポート開始
ご納得いただけましたら契約を締結し、直ちにサポートを開始します。
カスハラ対策に関してよくあるご質問
Q. 人材紹介・派遣事業のカスハラ事例にはどのようなものがありますか?
A. 派遣先企業・担当者からのカスハラ事例として、以下のような事例が考えられます。
- ・暴言・威圧的な言動
- ・契約外業務の強要・理不尽な要求
- ・担当者の人格を否定するような言動
求職者・登録者からのカスハラ事例として、以下のような事例が考えられます。
- ・選考結果に対する過度なクレーム
- ・執拗な連絡やSNSでの誹謗中傷
- ・派遣スタッフに起因するトラブル事例
Q. どこからが「カスハラ」になりますか?
A. 要求内容の妥当性と、手段・態様の相当性から総合的に判断されます。明確な線引きが難しいケースも多いため、個別の事情をうかがった上で弁護士が判断します。迷ったときは、まずご相談ください。
Q. 地方の企業ですが、相談は可能ですか?
A. はい、可能です。当事務所はオンラインでのご相談に完全対応しており、全国の企業様からご依頼をいただいております。
Q. 顧問契約がなくても相談できますか?
A. もちろん可能です。まずは初回無料相談をご利用いただき、個別の案件としてご依頼いただくこともできます。貴社の状況に合わせて柔軟に対応しますので、ご安心ください。
まとめ|人材紹介・派遣事業の従業員をカスハラから守り、強い組織に
人材紹介・派遣事業におけるカスハラは、もはや担当者個人の問題ではなく、企業全体で取り組むべき経営課題です。対策を後回しにすると、大切な従業員を失い、企業の評判を落とすといった深刻な事態を招きかねません。
カスハラ対策を講じることは、単なるリスク管理ではありません。それは、従業員が安心して働ける環境を整え、顧客と健全な関係を築き、持続的に成長していける強い組織を作るための「未来への投資」です。
一人で、あるいは社内だけで抱え込まず、私たち法律の専門家を頼ってください。弁護士法人グレイスは、貴社がカスハラ問題に毅然と立ち向かうための、最も頼れるパートナーとなることをお約束します。
監修者
弁護士法人グレイス企業法務部
- 本店所在地
- 〒105-0012 東京都港区芝大門1丁目1-35 サンセルモ大門ビル4階
- 連絡先
- [代表電話] 03-6432-9783
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