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企業法務コラム

1. 特許権について【知的財産】

投稿日:2019/10/06
更新日:2023/11/16

(1)特許権とは

特許権とは、「発明」の保護及び利用を図ることによって、発明を奨励し、産業の発達に寄与することを目的として法整備された権利です(特許法1条)。

ここで「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度なものをいい(同法2条1項)、「物の発明」「方法の発明」「物を生産する方法の発明」の3つに分類されます。

分かりやすい例でご説明させていただくと、実際に特許権が認められるか否かはさておき、

・カーナビ装置そのものの発明は「物の発明」、

・カーナビ装置を用いたサービスの発明は「方法の発明」、

・カーナビ装置の作成方法は「物を生産する方法の発明」

に分類されます。

(2)特許権の性質

「物の発明」の場合、その物(プログラム等を含む)の生産、使用、譲渡等(譲渡又は貸渡しをいい、その物がプログラム等である場合には、電気通信回線を通じた提供を含む)、輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為を制限できる可能性があります。

「方法の発明」の場合、その方法を使用する行為を制限できる可能性があります。

「物を生産する方法の発明」の場合、その方法を使用した場合だけでなく、その方法によって生産した物の使用、譲渡等、輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為を制限できる可能性があります。

(3)特許権が認められるには

特許権が認められるためには特許庁にて設定登録を受けなければなりませんが、その際に「新規性」「進歩性」「産業上の利用可能性」等の要件を満たすかどうかについて審査がなされます。

「新規性」とは発明が出願時に世間に知れていないこと、「進歩性」とは出願時に通用していた技術からは容易に思いつかないこと、をいいます。「産業上の利用可能性」は広義に解釈されていて、医療行為や反復継続して利用することができない発明については「産業上の利用可能性が無い」として特許権の設定登録を受けることができません。

特許庁には、特許出願の際に、願書、明細書、特許請求の範囲、要約書、図面等を所定の方式に従って作成して提出します。

特許請求の範囲をどう設定し、どのように説明するかによって、後の特許権の保護範囲が変わってくるものですが、かといって広く設定すればいいというものでもないため、非常に重要な手続きとなります。ただし、この点については弁理士の先生の専門分野になりますので、ここでは割愛いたします。

(4)特許権を侵害されたとき/特許権を侵害したと主張されたとき

特許権を侵害されたときは、侵害者に対して侵害行為の差止請求と、侵害によって被った損害の賠償請求を求めることになります。

侵害行為の差止請求

侵害行為の差止請求は、具体的には①侵害行為そのものの停止の請求、②侵害の予防の請求、③侵害行為を組成した物(物を生産する方法の発明については侵害行為によって生産された物を含む)の廃棄、侵害行為に供した設備の除却、その他侵害の予防に必要な措置の請求を行うことができます(特許法100条)。

損害の賠償請求

一方、特許権侵害を理由として損害賠償請求する場合、ネックになる一つが損害額の立証です。
特許権侵害が発生した場合の特許権者の損害額は高額に上ることが多いですが、特許権侵害と相当因果関係のある損害額となると立証が困難で低額にとどまることがあります。

そのような事態を避けるために、特許権侵害によって特許権者に損害が発生した場合、特許権侵害と相当因果関係のある損害について、特許法102条各項にて推定規定を設けています。

平たく申し上げるならば、特許権者自ら特許製品を製造販売しているような場合には、以下の計算式で算出された金額を一般的に損害額として推定されています。

(計算式)損害額=侵害者の譲渡等数量×権利者の単位当たりの利益-権利者の実施能力を超えた部分に相当する金額

また、特許権者がライセンス契約を結んでいて自ら特許製品を製造販売していない場合には、以下の計算式で算出された金額を一般的に損害額として推定されています。

(計算式)損害額=使用料相当額(=侵害者の譲渡数量×権利者の単位当たりの実施料)

特許権の設定登録がされていない場合

一方、特許権の設定登録がされていない場合には、差止請求をすることができませんし、損害額の推定規程も適用されません。

ただし、当該技術的思想がノウハウや会社の営業上の秘密等に該当する場合には、不正競争防止法2条1項各号の要件に該当する場合には不正競争防止法に基づいて損害賠償請求や差し止め請求をすることができる場合があります。
また、不正競争防止法上の要件を満たさない場合でも、民法709条の要件を満たす場合には損害賠償請求をすることは可能です。

もっとも、特許法上の要件も不正競争防止法上の要件も満たさない場合に、民法に基づいて差し止め請求をすることはほぼ不可能ですし、不正競争防止法上の要件を満たすことは極限的な事例に限られますので、特許権の設定登録をすることができる場合には、直ちに特許権の設定登録をすべきです。

特許権の登録によるもう一つのメリット

なお、特許権を登録しておくメリットはもう一つあります。
それは、特許権の侵害行為があった場合には、当該侵害行為について過失が推定されるというものです。

これも損害額の推定規定同様、特許権者保護のために設けた推定規定であり、特許権の侵害行為を行った者に過大な立証責任を負わせるものでもないという理解から設けられた推定規定です。

大事な技術を特許権の設定登録を行って公開することに躊躇いがあるお気持ちは分かりますが、上述のメリットに鑑みると、大事な技術だからこそ特許権の設定登録を行って公開して、権利保護を図ったり権利の活用を図ったりすることも一案だと考えています。

(5)特許権の活用の仕方

特許権を活用するときは、特許権者はライセンス契約を締結することが一般的です。

このライセンス契約によって、特許権者は通常実施権や専用実施権を設定することができます。

通常実施権・専用実施権・独占的通常実施権とは

通常実施権とは当該特許を利用することができる権利、専用実施権は当該特許を排他的に利用することができる権利です。

その中間に独占的通常実施権というものがあるのですが、これは専用実施権と異なり排他性は有していないんだけれども、独占的通常実施権者と特許権者以外には特許権を利用させないことを特許権者と独占的通常実施権者とで約束する、というものです。

特許権の活用の仕方

単なる通常実施権を設定することが一般的かと思いますが、いずれの実施権にしても、特許権者は実施権者から一定のライセンス料を受け取ることができますので、特許権の活用事例の一つとして検討されることをおすすめします。

逆に、特許を利用したいとお考えになっている場合には、各種実施権の設定契約を締結されるとか、事業譲渡契約と合わせて特許権を譲り受けたり各種実施権の設定の合意を取り付けるべきでしょう。

このページをご覧になって特許についてもっと知りたいとお考えになった方は、一度当事務所にご相談にお越しください。当事務所では、各種実施権の設定契約や事業譲渡契約の実績がありますので、お気軽にご相談にお越しください。

監修者

弁護士法人グレイス企業法務部

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