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企業法務コラム

第9回「商標をめぐるライセンス契約」

投稿日:
更新日:2019/10/27

知的財産権

弁護士:森田博貴

商標をめぐるライセンス契約

1. ライセンス契約

前回までは、商標の類似という概念を扱いました。今回は、商標権をめぐるライセンス契約を取り上げたいと思います。

商標は、特許庁への出願・登録を受けることにより、その独占的使用権(商標権)を取得できます。この商標権者としては、この商標権に基づき自らが当該商標を独占的に使うこともできますが、他者から金銭の提供を受けるのと引き換えに当該商標の使用を認めるというビジネス形態をとることもできます(いわゆる「ライセンス契約」)。

このライセンス契約は、法律上の文言に直すと、「使用権」の設定契約といいます。そして、法律上、この「使用権」には、「専用使用権」(商標法30条)と「通常使用権」(商標法31条)の2種類が存在します。

2. 専用使用権

専用使用権」とは、文字通り、当該商標を専用(独占的使用)する権利です。すなわち、商標権者が第三者に対しこの専用使用権の設定を認めた場合、商標権者自身ですら当該商標を使用することができなくなります。設定範囲を無制限と定めた場合、その実質は、商標権の譲渡にかなり近づきます。もっとも、当該設定範囲は、当事者間の協議により任意に定めることができるので、たとえば地域的限定や時間的限定をかけることで当事者のニーズに応じた自由な設計が可能となります。

専用使用権者は、第三者が権限なく当該商標を使用した場合、当該第三者に対し、直接使用差止めや損害賠償の請求を行うことができます。他方、第三者に対して当該商標の使用を認める行為(後述する「通常使用権」の設定)は、商標権者の承諾がなければできません。

専用使用権は、特許庁の登録(専用使用権の登録)を経てはじめて認められます。

3. 通常使用権

通常使用権」とは、専用使用権のような独占性を有しないまま認められる当該商標の単純な使用権です。通常使用権は、専用使用権と異なり、特許庁の登録を経ることなく設定できますが、特許庁への登録(通常使用権の登録)を行うことで第三者への対抗力(商標権者が商標権を第三者に譲渡した場合でも、通常使用権の存在を当該第三者に主張できるという効力)を与えることができます。もっとも、実務の世界では通常使用権の登録が行われることはほとんどなく、ライセンス契約の約定の中に、「商標権者が第三者に当該権利を譲渡する際には当該通常使用権者の承諾がいる」旨の文言を含めることで処理されるのが一般的です。

なお、余談ですが、商標実務の世界には、「独占的通常使用権」なる用語が存在します。一見すると「専用使用権」との違いが分かりづらいのですが、「独占的通常使用権」でいうところの「独占」とは、当該通常使用権者以外の者には通常使用権の設定を行わない(通常使用権の設定契約の独占性)との意味にとどまり、対外的に当該商標を独占的に使用できることを意味しません。

したがって、独占的通常使用権者は、商標権者が他の者に当該商標の通常使用権を設定した場合、この商標権者に対して契約違反(債務不履行)を理由とする損害賠償を請求できますが、他方、第三者が権限なく当該商標を使用した場合でも、専用使用権者のように当該第三者に対して直接その使用差止めや損害賠償を請求することができないのです(ただし、一定の要件を満たした場合に限り、例外的に第三者への直接の損害賠償が認められると判示した裁判例が存在しております)。

【著者情報】

企業法務部 部長 福岡県弁護士会(弁護士登録番号:33334)

九州大学大学院法学研究科修士課程 修了

米国Vanderbilt Universityロースクール(LLMコース) 卒業

三菱商事株式会社、シティユーワ法律事務所を経て、現在弁護士法人グレイスにて勤務

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監修者

弁護士法人グレイス企業法務部

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