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企業法務コラム

発信者情報開示請求の手続について解説

投稿日:2022/08/10
更新日:2023/10/31
発信者情報開示請求の手続について解説

1. 投稿者特定までの流れ

発信者情報開示請求手続の流れ

1-1 コンテンツプロバイダへの請求

SNSやまとめサイトなど、記事が投稿されたサイトの管理者は投稿者の住所や氏名等の情報を保有していないのが一般的です。これはこれらのサイトが無料で使用出来ることが大半であることに起因します。

そのため、投稿者を特定するためには、まず、投稿に使用されたIPアドレスやタイムスタンプというものの開示をサイト管理者から受ける必要があります。この管理者は、コンテンツプロバイダとも呼ばれています。発信者情報請求は、「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(いわゆるプロバイダ責任制限法)が根拠となっています。

1-2 接続プロバイダへの請求

コンテンツプロバイダからIPアドレス等の開示を受けることができた場合には、次に、インターネット接続プロバイダに対して、このIPアドレスやタイムスタンプを基に、当該時間、当該サイトに接続した契約者の氏名及び住所の開示を求めることになります。インターネット接続プロバイダは、大半が定額のサービス利用料を利用者に請求していることから、利用者の住所や氏名等の個人情報を保有しています。この請求方法としては、①発信者情報請求書という書面を用いて開示請求を行うこともありますが、契約者の同意が必要であることから、実効性が乏しいといえます。そのため、通常は、②訴訟手続によって、インターネット接続プロバイダへ契約者の氏名及び住所の開示を求めることになります。

1-3 発信者情報開示命令の申立てについて

前述のように通常であれば、裁判上の手続きを2つ経なければ投稿者の情報を得ることはできませんでした。しかし、プロバイダ責任制限法の改正により新たな手続が創設されました。これによりこれまで2つの裁判上の手続きが必要であったものが、1つの手続きで投稿者の特定をすることができるようになりました。なお、既存の手続も行うことが可能です。

以下、各手続きについて順番に説明をいたします。

2. コンテンツプロバイダへの請求手続について

2-1 初めに

まず、投稿者を特定するための第1歩は、IPアドレス等の開示を受けることです。そこで、IPアドレス等の開示に必要な手続きについて説明いたします。

2-2 交渉による方法

ア IPアドレス等の開示請求については、メールやオンラインフォームを使用する方法があります。これはサイトにこのようなフォームが用意されている場合になります。

イ また、他の方法として、発信者情報開示請求書による開示請求があります。同請求書は、プロバイダ責任制限法ガイドライン等検討協議会が策定したものです。この書式に必要事項を記載の上、サイト管理者へIPアドレス等の開示求めることになります。

2-3 仮処分に対する方法

IPアドレス等をコンテンツプロバイダに対して開示を求める場合、コンテンツプロバイダの所在地を管轄する裁判所へ発信者情報開示仮処分を申し立てます。相手方が海外法人の場合には、東京地方裁判所に申立てを行うことになります。

仮処分の申立てをした後は、申立人と裁判官の面接(債権者面接)を経て、申立人とコンテンツプロバイダの双方が裁判官と面接(双方審尋)を行います。両手続を経て、請求が認められれば、担保金を支払い、IPアドレス等が開示されます。

申立てからIPアドレス等が開示されるまでの期間は、相手方の反論の状況にもよりますが、1ヶ月から3ヶ月程度かかります。そのため、後述のとおり、ログの保管期間を踏まえると、非常に時間的にタイトです。

2-4 注意点

IPアドレス等の開示請求についてまず注意が必要なのは、ログの保存期間です。このログの保管期間については特に法律上の決まりもないことから、コンテンツプロバイダごとにそれぞれ保管期間が異なります。仮に、この保管期間を経過してしまうと投稿者を突き止めることができなくなります。そのため、この保管期間を過ぎるまでにIPアドレス等の開示を受ける必要があります。

3. インターネットプロバイダへ請求について

3-1 手続の内容

IPアドレス等の開示を受けた場合、次に、インターネット接続プロバイダに対して、このIPアドレス等を特定の日時に使用した契約者の氏名及び住所を開示するよう通常の訴訟を提起するのが一般的です。そのうえで、請求が認められればやっと投稿者を特定できることになります。

3-2 注意点

前述のとおり、インターネット接続プロバイダが保存しているアクセスログを削除する危険性があります。そのため、IPアドレス等の開示を受けた時点で、インターネット接続プロバイダに対して、ログを削除しないよう訴訟提起の前に通知しておくことが必要です。インターネット接続プロバイダがこの要求に応じない場合には、削除禁止の仮処分も必要となります。

4. 発信者情報開示命令申立て(2022年10月新設)について

4-1 手続の内容

同制度は、改正プロバイダ責任制限法により、2022年10月1日から利用できる新しい制度です。これまでは多くの場合、まずコンテンツプロバイダに発信者情報開示の仮処分の申立てを行い、その後にインターネット接続プロバイダに対して発信者情報開示請求訴訟を提起する必要がありました。しかし、この新しい制度では、これらの手続を1つの手続内で行えるようになっています。手続きの流れは以下のとおりです。

①コンテンツプロバイダに対する発信者情報開示請求の申立て

まず、コンテンツプロバイダに対して、I
Pアドレス等の発信者情報開示命令の申立てを行います。そして、併せて、コンテンツプロバイダに対して、インターネット接続プロバイダに関する情報の提供命令の申立ても行います。そして、同申立てが認められると、インターネット接続プロバイダの名前と住所が開示されます。

②接続プロバイダに対する発信者情報開示請求の申立て

そして、コンテンツプロバイダから開示を受けたインターネット接続プロバイダに対して、①と同じ手続の中で、投稿者の住所及び氏名を開示することを求める発信者情報開示命令の申立てを行います。インターネットプロバイダに発信者情報開示命令の申立てをしたとコンテンツプロバイダに通知すると、コンテンツプロバイダからインターネット接続プロバイダに対してI
Pアドレス等の情報が提供されます。

③接続プロバイダに対するログ削除禁止命令の申立て

なお、インターネット接続プロバイダに対しては、①と同じ手続の中で、ログ削除禁止命令の申立ても必要に応じて行う必要があります。
その後、インターネット接続プロバイダは、投稿者に対して開示の可否について意見聴取をし、その意見を踏まえて審理に対応します。裁判所がインターネット接続プロバイダに対して開示決定をすると投稿者の住所氏名等が開示されることになります。

4-2 新設された手続の趣旨とその活用

新設された手続は、開示要件の判断困難性や当事者対立性の高くない事案があることを踏まえ、こうした事案に係る裁判の審理を簡易迅速に行うことができるようにするために創設されたものです。そのため、判断が容易でない場合や当事者に争いがある場合には、これまでどおりの手続を行うことを検討しなければなりません。

5. 最後に

以上のとおり、発信者情報開示請求といっても、コンテンツプロバイダへの仮処分、そして、その後のインターネット接続プロバイダへの訴訟提起など行うべき手続が複数存在します。また、コンテンツプロバイダからI
Pアドレス等の開示を受けるまでの時間にも実質的な制限があります。そのため、投稿者が特定できないといったことを防ぐためにも、早期に手続を行う必要があります。また、新たに発信者情報開示命令の申立てが創設されるなど手続の選択肢も増えており、どの手続を使用するかについても判断が必要となります。弊所では、発信者情報開示請求のご相談をお受けしていますので、是非気兼ねなくご相談いただければと思います。

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監修者

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