企業法務コラム
契約書のリーガルチェックは重要?ポイントや流れ・費用について弁護士が解説
更新日:2024/10/15
契約書のリーガルチェックとは?
皆さまは、普段、取引先などと契約書を締結する時、法的リスクをどのように回避されていますでしょうか?
多くの経営者や個人事業主の方は、ご自身で契約書を流し読みして金額部分や工期・納期などの期限に問題がなければ、そのまま契約書への署名押印を済ませてしまっているのではないでしょうか。場合によっては、契約書を読まずに、「口頭ではこう言っていたから大丈夫だろう。」とそのまま署名押印してしまう方もいらっしゃいます。
契約書を確認して、その法的リスクを弁護士が正しく評価・指摘する作業を、契約書のリーガルチェック(Legal Check)といいます。法的リスクは、交通事故のリスク同様に、リスクが顕在化した際の影響は大きいものの、注意すればその大半を回避することが可能ですから、ぜひ弁護士による契約書のリーガルチェックの導入をご検討ください。
・リーガルチェックが重要な理由
それでは、なぜリーガルチェックが必要なのでしょうか。リーガルチェックを行わないと、契約書に隠れている法的リスクを見落としてしまい、例えば以下のようなトラブルが起きる原因となり得ます。
- ① 契約書に記載された事項が法律に違反することを知らないまま、記載どおりの対応をしてしまった
- ② 暴力団等の反社会的勢力を排除する条項(いわゆる暴排条項)が契約書にないことで、反社会的勢力を含む企業と契約してしまってコンプライアンス上の問題が生じた
- ③ 自社にとって著しく不利な条項となっていることに気付かないままに契約書を取り交わしてしまった
- ④ 契約書の内容が法的には曖昧だったようで、トラブルになった時に適切に機能しなかった
このようなトラブルを未然に防ぐためにこそ、リーガルチェックが重要なのです。弁護士によるリーガルチェックがなされれば、契約書に隠れている法的リスクはほとんど回避可能となります。
契約書のリーガルチェックで見落としがちな問題点
さて、それでは契約書のリーガルチェックにおいて見落としがちな問題点についてもご説明いたします。
契約書を確認する際には、そこに書いてあることには注意が向きますし、書いてある内容に問題がありそうであれば相手方にその修正を求めることはよくあるでしょう。しかしながら、書いていない事項にまで目が向くことはほとんどありません。
この点が、弁護士と一般の方との差異であり、一般の方がリーガルチェックをする上で見落としがちな問題点となります。通常、契約書に記載がない場合は、民法等の法律の規定が適用されますから、法律的に充分な知識がないと、契約書に記載のない事項が起きた場合の問題点に気付くことすらできません。また、法律上に記載がなされていたとしても、判例・裁判例によってその適用対象が限定されていたり、適用のあり方に変化があったりすることもあります。更には、上述した暴排条項のように、契約書に記載がないこと自体でコンプライアンス上の問題が起きたり、各種の法令に違反したりする場合もあります。
このように、契約書に記載がないことにこそ、リーガルチェックにおいて重要な点があるのです。リーガルチェックにおいては、法律の深い理解が必須となります。
法務リスクを回避するために押さえておきたいポイント
それでは、上記のような契約書確認時の法務リスクを回避するためにはどうすれば良いのでしょうか?
契約書確認時に弁護士に依頼をすることが、最も法務リスクを回避する方法として適しています。可能であれば、弁護士と顧問契約を締結して継続的な関係を築くなどしておいた方が、より会社の状況に精通した状態の弁護士への確認依頼を出せることとなりますから、お勧めです。特に会社が締結している他の契約書をも視野にいれながら契約書をチェックすることができれば、法務リスクの回避は万全でしょう。
仮に弁護士に依頼をする選択を取らないとすれば、せめて複数人の目を通すことが必要でしょう。契約書をできるだけ多角的な視点で確認することで、法務リスクを回避することを期待することができます。
契約書のリーガルチェックの流れ
ここで、契約書のリーガルチェックとして想定される一般的な流れについても概観しますので、ご参考にしてみてください。
社内で実施する場合
社内で契約書のリーガルチェックを行う場合には、以下の流れを辿ることが多いです。
- ① 社長又は営業担当者など、取引先と直接やり取りをしている者に契約書の案が届く
- ② 社長又は営業担当者から契約書確認を担当する者(総務部や法務部)へ契約書の案が送付される
- ③ 社長又は営業担当者と、契約書確認担当者間でやり取りをしながら、契約書の修文を行う
- ④ 契約書確認担当者から社長又は営業担当者に契約書が送付される
- ⑤ 社長又は営業担当者と取引先との間で、契約書修文についての交渉がなされる
- ⑥ 取引先の態度次第では、上記②~⑤を複数回繰り返す
会社の規模感によっては、社長又は営業担当者がそのまま契約書のリーガルチェックを行う場合もありますが、大まかな流れに変化はないはずです。
このような流れを辿ることとなりますし、会社に契約書チェックのみを行う部署があるほど大きな会社は少数ですから、契約書を社内でチェックすることの煩雑さがお分かりいただけたかと思います。契約書のリーガルチェックには、契約書の確認をする者の人的コストを大きく要するのです。
弁護士に依頼する場合
これに比べて弁護士に契約書のリーガルチェックを依頼した場合には、以下の流れを辿ることとなるでしょう。
- ① 社長又は営業担当者が、取引先から契約書の案を受領する
- ② 社長又は営業担当者から弁護士へ、契約書の案を送付する
- ③ 社長又は営業担当者と弁護士間でやり取りをしながら、契約書の修文を行う
- ④ 弁護士から社長又は営業担当者に契約書が送付される
- ⑤ 社長又は営業担当者と取引先との間で、契約書修文についての交渉がなされる
- ⑥ 取引先の態度次第では、上記②~④を繰り返す
基本的な流れは同じですが、契約書確認に要する人的コストを弁護士という外部者にアウトソーシングできていることがお分かりいただけるかと思います。
また、弁護士に修文を依頼した場合、取引先にも弁護士からの求めによる修文であると主張しやすくなりますから、取引先が契約書の修正に応じる可能性が大きくなります。もちろん、弁護士が担当しますから、社長・営業担当者とのやり取りも必要最小限のものに留まるでしょう。
このように、弁護士に依頼する場合には、会社内の人的コストを大幅にカットできます。弁護士に依頼するメリットは、法的リスク・法務リスクの減少だけではないのです。
AIツールを活用した契約書チェックの最新動向
AIによるリーガルチェックの問題点
ちなみに、昨今、AIツールを活用した契約書チェックが流行してきています。AIによるリーガルチェックは、費用を抑えることができ、かつ、契約書チェックにかかる時間も短いので、人気のようです。
しかしながら、AIによるリーガルチェックには、未だに以下の問題があります(そしてこの問題は、AIの特性上、なかなか克服が困難です。)。
⑴ 契約書の内容についてのやり取りができない
AIの契約書確認ツールは、契約書の修文のみを目的としていることが多いです。このため、契約書の内容について、例えば特殊な注意を要するような条項があったとしても、その点について修正を要しないことを伝えた上での契約書チェックはできません。
契約書の確認を人間が行うか否かで変わってきてしまう大きな要素といえるでしょう。
⑵ 一般的・抽象的なリーガルチェックが主となってしまう
また、AIは個別具体的な検討を得意としていないため、契約書について一般的・抽象的なリーガルチェックをすることが主となってしまいます。これでは、具体的な法的リスクを充分に回避できるとまではいえないでしょう。
⑶ 他の契約書との兼ね合いなどのチェックが苦手
同様に、過去に締結した他の契約書や会社の現状を踏まえたリーガルチェックは、AIの苦手分野となります。AIは、検討のために提示されたもののみをもってその適否を判断しますから、確認を要する契約書のみを提示しただけでは、他の関連事項をも視野にいれながら契約書を確認することはできないのです。
これもまた人間との相違点といえるでしょう。
このように、AIツールには、未だに人間との違いから人間を乗り越えることができないことに起因する問題点が残っています。費用などの点と相談をされた上でのご判断にはなるでしょうが、やはり依然として弁護士による契約書のリーガルチェックの優位性・重要性は失われていないということはお分かりいただけたことと思います。
契約書チェックを弁護士に依頼するメリットと費用
それでは、契約書のリーガルチェックを弁護士に依頼した場合のメリットを再度確認します。
- ⑴ 法務リスク・法務リスクの減少
- ⑵ 会社内での契約書チェックにかける人的コストの抑制
- ⑶ 予防法務の実現
加えて弁護士に契約書チェックを依頼した場合の費用感をお知らせいたします。東京都内で企業法務に特化した事務所ですと、契約書チェックに要する費用は、5万円から10万円程度が相場と思われます。もし契約書のチェック数が多いのであれば、弁護士との顧問契約を締結することがお勧めです。顧問契約を締結すると、月額固定の費用を支払うことで、サブスクリプション的に弁護士に契約書チェックを依頼できます。
当事務所の顧問契約料金表も、ぜひご参照ください。
まとめ
以上のとおり、契約書のリーガルチェックについてご説明いたしました。契約書チェックを自社において行うことは、金銭的コストこそかからないものの、見えない法務リスク・人的コストを生じる行為であるとご理解いただけたものと思います。
契約書チェックにお悩みの方がいらっしゃいましたら、ぜひ、当事務所にご相談ください。初回相談は無料となっておりますので、ご遠慮なくお電話いただけることをお待ちしております。
監修者
弁護士法人グレイス企業法務部
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