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企業法務コラム

従業員によるインターネット上の誹謗中傷への対応と法的責任の追求

投稿日:
更新日:2026/01/15

1. インターネット上の誹謗中傷

今回は、横領から離れて、従業員によるインターネット上の誹謗中傷についてお話をしたいと思います。

最近は、多くの方が、InstagramやXなどのSNSを利用していると思われます。そして、従業員の中には、これらのSNS上に、自分が勤めている会社や上司の悪口などを書いてしまう人がいます。これらの場合の多くは、静観していても問題がないかもしれません。ところが、何度もしつこく誹謗中傷的な書込みがされていたり、その書込みが元となって「あの会社は最悪だ」などと炎上していたり、書き込まれている内容が社内秘に当たるような場合など、ただ放置しておくわけにはいかないような事態に陥ることもあります。

では、そのような場合、会社として、どのような手を打つことができるでしょうか。

2. 書込みを削除したい

まず考えられることは、問題となっている書込みを削除することです。

もっとも、「削除」と一言でいっても、これがなかなか容易ではありません。

たとえば、従業員が、本名で作っているアカウントを利用して堂々と誹謗中傷的な書込みをしている場合であれば、従業員を説得して、そのような書込みを削除させればよいでしょう。

ところが、誹謗中傷的な書込みの多くは、匿名でされています。また、多くのSNSでは、書き込むことは自由でも、書き込んだ後は、書き込んだ本人であっても書込みを削除できず、サイト管理者等に削除を依頼しなければならない仕組みになっています。

このような場合には、サイト管理者等に対し、書込みを削除してもらう必要があります。

その方法としては、①削除依頼フォームなどから依頼する方法や、②削除仮処分命令の申立てをする方法などがあります。

①の方法は、サイト管理者に対し、サイト内の削除依頼フォームを利用して、特定の書込みの削除を依頼するものです。したがって、一般の方でも簡単に利用することができます。ただ、書込みを削除してもらうためには、その書込みが名誉権などの権利を侵害していると考える根拠などを、法的観点から適切に説明していく必要があります。この説明が不十分だと、削除してもらえないこともあるでしょう。

他方、②の削除仮処分命令の申立ては、裁判所に対する手続きです。すなわち、「サイト管理者(あるいはサーバー管理者)に対し、その記事を削除せよという命令を仮に出してください。」ということを裁判所に申し立てます。そのため、適切に法的主張を組み立てていく必要があることはもちろん、削除せよという命令を受けることとなるサイト管理者やサーバー管理者が誰かということを、明確に特定する必要があります。ところが、この相手方を明確にすることが意外と難しく、インターネットに関する専門的な知識が必要になることもあります。

さらに、①②のいずれの方法であっても、複数のSNS上に誹謗中傷的な書込みがされている場合には、それぞれに対し、同じように削除を求めていく必要があります。

3. その書込みをしたのは誰ですか

会社に対する誹謗中傷的な書込みがされた場合、その内容や言回しの癖などから、その会社関係者からすれば、「書き込んだ犯人はあいつで間違いない!」と確信できる場合もあるでしょう。

しかし、書込みをした人物に対し、法的な責任を追及するためには、そのような「確信」だけでは足りません。確信を裏付ける強い証拠がある場合はいいのですが、そのような証拠がない場合には、いわゆるログと言われる通信記録から、その書込みをした人物の名前と住所までたどり着くことが必要です。

では、このようなログは、どのようにすれば入手できるのでしょうか。

まずは、削除請求と同様、サイト管理者等に対し、IPアドレスの開示を求めていくことになります。IPアドレスについてはよく、「インターネット上の住所」などとも言われています。つまり、その誹謗中傷的な書込みが、インターネットという世界のどこからされたのかを示すものです。

もっとも、IPアドレスから分かるのは、書込みがされたときに使われたプロバイダ(インターネット接続会社)までです。そこから更に進んで、書込みをした人物の住所や氏名までたどり着くためには、そのプロバイダに対し、情報の開示を求めていくことになります。詳細は専門的な話になるため、ここでは省きますが、このプロバイダに対する請求は、要は、「あなたとインターネット接続契約を結んでいる顧客の住所と氏名を開示せよ。」ということを求めるものです。

このような個人情報があっさりと開示されてしまうとなると、それはそれで問題です。そのため、これらの開示請求の手続きは、裁判所を介して慎重に進めていきます。専門用語では、「発信者情報開示請求」と呼ばれる手続きです。

そして、この一連の発信者情報開示請求が認められるとようやく、その書込みをした人が誰かを特定することができるのです。

4. どのような責任を追及しますか

誹謗中傷的な書込みをした人物を特定できたとして、その人には、どのような責任を追及していくことができるでしょうか。

金銭的な解決という点では、民事訴訟を提起し、損害賠償(慰謝料)を請求することが考えられます。この民事訴訟の中では、「誹謗中傷的な書込みにより、名誉が傷つけられた。」とか、「プライバシーが侵害された。」などといった主張をしていくことになります。

そのほかにも、「謝罪広告を出してほしい。」「誹謗中傷的な書込みで売上げが低下したから、その分を賠償してほしい。」「二度と同じような書込みをしないと誓約してほしい。」などの要望を持たれる方もいらっしゃいます。そのような要望を実現することができるか、どのような方法で実現していくかという点は、事案によっても様々です。

また、あまりにも悪質な事案では、警察に告訴をして、最終的には刑罰を受けさせたいと思うこともあるかもしれません。この場合は、警察に告訴状や被害届を提出して、捜査を促すことになります。

5. まとめ

今回は、かなり要点を絞ってお話をしましたが、「誹謗中傷的な書込みへの対応」と一言でいっても、複雑な手続きをこなし、適切に法的な主張をしていくことが必要となります。また、方法も、削除や損害賠償などこの記事で触れたもの以外にも、多くの方法が考えられます。そのため、このような書込みへの対応で悩まれている経営者の方には、ぜひ一度、弁護士に相談してもらいたいと思います。

なお、これらの対応の全部又は一部を、弁護士ではない個人や団体が行えるかのように謳っている広告などをときどき見かけます。しかしこれは、本来は弁護士しかできない業務について弁護士ではない人が行うという、非弁行為に当たる可能性があります。非弁行為は違法行為です。誹謗中傷的な書込みに対する対応についての相談は、まずは弁護士にされることをお勧めいたします。

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【著者情報】

企業・経営者向けの顧問サービスに強みを持ち、約750社の顧問先企業を有する(2025年9月時点)。また、「社外法務部」という名称で主に中小企業に法務のアウトソーシングサービスを提供している。

従業員の解雇や問題社員対応などの労働問題、契約書・債権回収・損害賠償請求などの取引をめぐる紛争、不動産の取引に関する紛争、横領・着服・背任等不正行為、法人破産、M&Aや事業承継など。

監修者

弁護士法人グレイス企業法務部

本店所在地
〒105-0012 東京都港区芝大門1丁目1-35 サンセルモ大門ビル4階
連絡先
[代表電話] 03-6432-9783
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WEBサイト
https://www.kotegawa-law.com/

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