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企業法務コラム

従業員から秘密保持誓約書を取り付けるべきか

投稿日:
更新日:2021/09/27
従業員から秘密保持誓約書を取得することを検討する

会社として、従業員から秘密保持誓約書を取得することを検討することは、よくあることです。これは、どのような会社であっても、社外に流出すると困る情報があるためです。対象は、顧客情報、技術情報、営業ノウハウ等の多岐にわたるものですが、どのような会社であっても、退職した従業員がこのような情報を社外に持ち出して、競合する事業を開始することは好ましくなく、回避したいと考えるはずです。

秘密保持誓約書を取得するタイミングは、入社時・在職中・退職前に大別されますが、実務上は、退職前に取得することが容易ではないケースが多いといえます。

特に、上記のような意図を持って退職することを考えている従業員が、退職前に秘密保持誓約書を提出することはまずないといえます。

そうすると、予防策としては、入社時・在職時に提出させる運用に努めることになります。

会社によっては、秘密保持誓約書の取得によらず、就業規則に同様の規定を設けることで対応するケースもありますが、就業規則の周知が適切に行われていない場合には、就業規則の秘密保持規程の有効性が否定されてしまいます。現実的なところでは、就業規則を適切に従業員に周知している会社は多くなく、その観点から有用性は劣ります。

最後に、よく誤解されている点ですが、入社時・在職時に従業員から秘密保持誓約書を提出させておけば、退職した従業員が会社の秘密情報を流用したことが判明した場合に、誓約書の内容通りの対応をすることができるかといいますと、必ずしもそうではありません。

退職後の従業員に秘密保持義務を課する場合には、その義務の対象になる情報が、不正競争防止法に定める「営業秘密」に該当することを要すると解されていますが、そのハードルが非常に高いという点が理由です。

より具体的には、①非公知性②管理性③有用性の3要件をクリアしていない情報は、法的な保護の対象とはならず、秘密保持契約という合意の形式であっても、結論は同様と解されているためです。

この中でも、②管理性が認められるためのハードルが非常に高いという点がネックになっています。

このような点はあるものの、従業員に対する事実上の抑制策としては有用な部分もありますので、御社の運用を見直してみてはいかがでしょうか。

【著者情報】

企業法務部 部長 福岡県弁護士会(弁護士登録番号:33334)

九州大学大学院法学研究科修士課程 修了

米国Vanderbilt Universityロースクール(LLMコース) 卒業

三菱商事株式会社、シティユーワ法律事務所を経て、現在弁護士法人グレイスにて勤務

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監修者

弁護士法人グレイス企業法務部

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