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動産譲渡担保契約書について

投稿日:2019/10/20
更新日:2023/12/21
動産譲渡担保契約書について

1. 譲渡担保契約とは

譲渡担保契約とは

典型的な担保の場合、債務者がその目的物の所有権を失うことなく使用できるものの、いざ債務の不履行が生じた場合に、債権者が担保権を実行することにより、債務者はその所有権を失うという形態を想像されるでしょう。

不動産に設定される抵当権はその最たる例です。ところが、抵当権はそれを設定できるものが限定されております。例えば、高価な動産を持っているため、これを担保にして資金調達を図りたい場合、抵当権を利用することができません。

似たような担保権に質権があります。ところが、債権者のために質権を設定すると、その目的物の所有権こそ失わないものの、その目的物を債権者に引き渡すことになるため、担保として提供している間、債務者はそれを使用することができません

譲渡担保契約とは、債務者が使用を継続することができる状態で、その所有権を債権者に譲渡することによって担保の目的を達成させようとする契約で、企業が有する動産を目的物とする場合に特に有用です。

そこで、以下では動産譲渡担保契約書において特に重要な点について解説します。

2. どの債務を担保するものなのか(被担保債権)を明確にする条項

動産譲渡担保契約は担保の設定を目的とする契約です。どのような担保設定契約にも共通することですが、その担保がどの債権を担保するものなのか(被担保債権)を明示することが重要です。

例えば、「本件譲渡担保は、甲乙間の●年●月●日付金銭消費貸借契約に基づく貸金返還債務を担保する」などと明示します。被担保債権の特定は、契約名だけでなく、その契約日、その契約の概要等を明示することにより、他の債権と識別できる程度に行うことが重要です。

3. 譲渡担保であることを明確にする条項

(1)譲渡担保は所有権を移転する契約でありますが、あくまで担保目的で所有権を移転するものです。抵当権等と異なり、法律上の定めのある契約類型でありませんので、そのことを明確にすることが必要です。

例えば
  • 1 乙は、甲に対し、本件債務の担保とするために本件動産を譲渡担保として差し入れる。
  • 2 乙は、甲に対し、前項に基づき、本日、本件動産の所有権を譲渡し、甲はこれを譲り受けた。
という条項の設定が考えられます。

(2)また、動産の所有権はその目的物の引渡しがなければ、第三者に対して、自らが所有権者であることを主張できません。

すなわち、その目的物の占有を移すことによって確定的に所有権を主張することが可能となります。そこで、債権者(譲渡担保権者)は債務者から担保目的物の引渡しを受け、確定的に所有権を主張することができるようにしなければなりません。

もっとも、譲渡担保は、担保設定しても債務者による使用を継続させることに大きな特徴があるにもかかわらず、現実に担保目的物を債権者に引渡しては、譲渡担保の目的を達成できません。そこで法律上の引渡しとして認められる方法に「占有改定」というものがあります。

これは、客観的には目的物の物理的移動を伴わないものの、債務者(譲渡人)が以後債権者(譲受人)のために占有するものとする旨を合意すれば、引渡しがあったものと認められるものです。譲渡担保契約においてはこの方法が有用となります。

具体的には、契約書において、「債務者は、債権者に対し、本日、本件動産を占有改定の方法により引き渡し、債務者は以後債権者のために債権者に代わって本件動産を占有する」という規定を置くことが考えられます。

なお、占有改定は債権者と債務者との間で約定されたとしても、客観的な占有状態に変化がないことから、これが第三者にも明らかとなるようラベルを貼ったり札を立てたりすることによる表示を施すことが必要です。これにより、債務者がその目的物を使用継続していても、その所有権は債権者にあることが明確となります。

具体的には、「債務者は、本件動産が債権者の所有にかかる物件であることを第三者に対して明示するため、本件動産にラベルを貼付する等適切な公示をしなければならない」という規定が考えられます。

4. 譲渡担保の目的物の所有権が債務者に回復される条件・方法を定める条項

(1)譲渡担保は担保目的で目的物の所有権を移転させる契約です。

裏を返せば、被担保債権が全て弁済された場合、すなわち担保の目的が達せられた場合には、債務者にその所有権が回復されることを予定した契約です。そこで、「債務者が本件債務を遅滞なく弁済したときは、本件動産の所有権はその弁済が完了したのと同時に債務者に移転する」といった規定を盛り込みます。

(2)また、占有改定によって債権者のもとにある占有を債務者に変更する必要があります。

前記のとおり、占有改定は客観的には目的物の物理的移動を伴わないものの、債務者が債権者に代わって占有するものですから、その状態を解く必要があります。

そこで、契約書には「本件債務の弁済が完了したときは、所有権移転の時をもって、本件動産の占有も債権者から債務者に移転したものとみなす。」との規定を置くことが考えられます。

5. 担保目的物の処分についての条項

譲渡担保契約も担保の一種である以上、債務者が債務を履行しなかった場合には、債権者が担保目的物を処分することにより、債権の回収を図ることになります。

そこで、契約書には、債務者に債務不履行があれば、債権者は本件動産を売却処分することができるという規定をおくか(これを「処分清算型」といいます)、債権者が本件動産の所有権を確定的に取得するというという規定をおきます(これを「帰属清算型」といいます)。

また、債権者が処分清算型か帰属清算型のいずれかを選択できるという規定も可能です。債権者はこれらの方法により譲渡担保権を実行し、債権の回収を図ることになります。

6. 最後に

譲渡担保契約は実務上の必要性から認められるようになった担保権の1つですので、その契約内容も他の担保権よりも当事者間で柔軟に定めることができます。。

もっとも、かなり技術的な担保権であるが故に、その契約内容の確認や契約書の作成におきましては、専門家たる弁護士にご相談いただくことが最も安全です。

監修者

弁護士法人グレイス企業法務部

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