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企業法務コラム

建設業における契約書作成上の注意点

投稿日:
更新日:2024/12/02

建設業

1.書面の交付義務の存在

建設工事に関する請負契約とは、建設業者が、建設工事を完成させることを約束し、注文者がその工事結果に対して工事代金を支払うことを内容とする契約です。

これは、民法でいう請負契約にあたる契約です。そのため、原則として、口頭でも同契約は成立します。しかし、建設業法第19条1項には下記の規定が存在します。

前述したように、契約の成立に契約書の存在は必須ではなく、一部の例外を除き、口頭でも契約は成立します。もっとも、建設業法は、上記のとおり、契約に際して特定の事項を記載した書面を作成することを求めています。

そのため、建設工事にあたっては、同条に定められた事項が記載してある書面の交付が同法上義務化されているということになります。

このように、法律上書面の交付が求められているのは、請負契約の内容を明確かつ正確にすることを担保し、事前に紛争を予防するためです。なお、一定の要件を満たせば、電子による書面の交付も認められています。

契約書を作成する場合は、次に示す注意点に気を付け、必要な事項を記載する必要があります。

2.建設業で契約書を作成する上での注意点

1.必要的な記載事項を確実に満たすこと

建設業法第19条で定められた必須の記載事項を漏れなく記載する。

2.文言を明確にする

曖昧な表現や不明確な文言は誤解の原因となるため、専門家による作成・観衆を経て客観的に解釈できる内容にする。

3.実務に即した内容にする

現場の状況や取引先の要求に応じた現実的な契約内容は、個別の項目を設定することで確実に盛り込む。例えば、工期延長や設計変更があった場合の対応策などについても記載する。

4.支払条件を明確にする

工事代金の支払金額だけでなく、支払の条件・時期は、特に重要な項目であるため、曖昧さを排除して具体的に記載する。

5.工期に関する取り決めを明記する

工事の着手日・完成日を明確に記載する。遅延が発生した場合のペナルティや対応策も盛り込む。

6.第三者への影響や責任分担を明記する

工事に起因して第三者への損害を生じさせた場合に関する賠償責任を具体的に取り決める。

7.紛争解決方法を明記する

紛争が発生した場合の解決手段(調停・仲裁・裁判等)を契約書に記載する。特に、建設業界では建設工事紛争審査会による紛争解決手続があるため、裁判とどちらによるかを明記する必要がある。

9.自社の契約書ひな形書式の見直しと更新を行う

取引先や法改正に応じて、定期的に自社の契約書ひな形書式の内容を見直す。古い契約書をそのまま使うことによる「間違い」リスクを回避する。

10.弁護士や専門家へ相談する

自社で判断が難しい場合には、契約によるトラブルを防止のために弁護士や法務の専門家に相談して内容を精査する。特に、金額が大きい案件については、発注側・受注側のいずれにも影響が大きいので、その必要性が高い。

3.建設業の契約書に記載すべき内容

建設工事に関する請負契約に際して交付する書面に記載すべき内容は、建設業法19条1項に規定されています。

具体的には下記の事項が明記されています。

以上のとおり、同法第19条1項は、書面に記載すべき事項について詳細に定めています。また、その内容も工事内容と請負代金の額といった請負契約の本質的な事項も含まれています。そして、そのほかにも建設工事を行うにあたって基本的な事項を書面に記載することが求められています。これは、前述のとおり、同条の趣旨が請負契約の内容の明確等にあることから当然の帰結といえます。

なお、4号の「工事を施工しない日又は時間帯の定めをするときは、その内容」は今回の改正により新たに追加されたものです。これは、実際に建設工事を行う者の休日の確保のために追加されたものです。つまり、工事を施工しない日等を明確にすることにより、注文者からの要求により休日を確保できなくなることを防ぎ、建設業に就業する方々が十分に休日を取れるようになるということです。

4.建設業で契約書を作成しない場合のデメリット

(1)行政処分

まず、同法第19条に定められた事項を記載した書面を交付しない又は内容が同条を満たさない書面を交付した場合、これらは同条に違反するということになります。もっとも、建設業法第19条に違反した場合の罰則はありません。また、同条に違反したからといって請負契約そのものが無効となるわけではありません。

しかしながら、同条に違反した場合、行政庁からの指示や勧告を受ける可能性はあります。そして、このような指示等を受けることは会社の評判にも関わり、会社経営への悪影響も十分予想されるところです。そのため、罰則がないとしても、これを遵守しなければいけません。

(2)当事者間での紛争リスク

前述したように、建設工事に関する契約書を交わしていない場合、そもそも工事代金がいくらであるかをめぐって紛争が生じることは珍しくありません。また、工事内容についても、客観的に書面で確認していないことから、当事者間の認識に齟齬が生じ、工事の完了について紛争が生じる可能性もあります。このように契約書という客観的なものを作成しない場合、本来であれば防げたはずの紛争が生じるおそれがあるのです。

そして、一度紛争が生じてしまうとそれを解決するために費用も時間も必要となります。また、工事代金の支払いを受けられないことにより資金繰りが悪化し、経営にも大きな悪影響を及ぼすことになりかねません。そのため、建設業法の義務の有無にかかわらず、契約書の作成は必須といえます。

5.最後に

以上のとおり、建設工事を請け負うにあたって作成すべき契約書について説明いたしました。しかし、現在使用している契約書が上記の内容を満たしているのかを知りたい、そもそも契約書から作成しなければならないという場合、自分でこれらの問題を解決するのは一苦労です。そこで、契約書の作成について法律の専門家である弁護士に相談することをお勧めします。

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【著者情報】

企業法務部 部長 福岡県弁護士会(弁護士登録番号:33334)

九州大学大学院法学研究科修士課程 修了

米国Vanderbilt Universityロースクール(LLMコース) 卒業

三菱商事株式会社、シティユーワ法律事務所を経て、現在弁護士法人グレイスにて勤務

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監修者

弁護士法人グレイス企業法務部

本店所在地
〒105-0012 東京都港区芝大門1丁目1-35 サンセルモ大門ビル4階
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