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企業法務コラム

建設業法改正に対応する工事請負契約書

投稿日:2021/06/29
更新日:2021/06/29

建設業

1. 請負工事に関する瑕疵に対して主張できる請求

2020年10月1日から改正建築業法が施行されました。本改正は、建設産業における世代交代に対応するためのものといえます。国土交通省によると、建設産業に従事する技能労働者のうち、25%以上を60歳以上の高齢者が占めています。そのため、10年後には技能労働者の大量離職が予想されますが、これに代わって産業を担う若手入職者の数は極めて乏しいのが現状です。

このような問題に対応するため行われた本改正の趣旨は、以下のように整理できます。

  • ①建設業の働き方改革の促進
  • ②建設現場の生産性向上
  • ③持続可能な事業環境の確保

本改正は25年ぶりの大改正ともいわれ、実務への影響も大きなものがあります。その中でも、契約書の修正が必須となる改正には特に注意が必要ですので、以下、解説いたします。

2. 建設業法19条と契約書

建設業法19条は、建設工事の請負契約の当事者に対し、契約書の作成を義務付けています。加えて、取り交わされる契約書に必ず記載すべき事項(法定記載事項)も定めています。

改正前の法定記載事項には、「工事内容」「請負代金額」「工事着手の時期・工事完成の時期」といった項目があり、全部で14の項目が存在しました。

契約書を作成しない、又は、作成した契約書が法定記載事項を充足したものになっていない場合、建設業法19条違反となります。もっとも、建設業法19条違反に関する罰則規定は存在しません。また、同条に違反しても、請負契約そのものは問題なく成立します。

しかしながら、同条違反を理由に、行政庁から指示や勧告を受けることはあり得ますし、会社に対する風評被害も懸念されます。加えて、工事代金や工事内容を契約書で明確に定めていなかった場合、後々になって当事者間で認識の齟齬が生じ、紛争となるリスクもあります。

建設業界においては、注文書と請書だけで工事を進めており、契約書は作成していないという事例は珍しくありませんが、以上のようなリスクを考慮すると、契約書の作成は必須といえます。

3. 建設業法改正と契約書

建設業法19条が改正された結果、建設工事の請負契約書について従来のものから変更する必要が生じました。特に以下の2点については、既存の契約書のひな形を見直す必要がありますのでご注意ください。

⑴ 工期を施工しない日又は時間帯の明記

上述した法的記載事項について、建設業法19条1項4号で「工事を施工しない日又は時間帯の定めをするときは、その内容」という項目が追加されました。

例えば、毎週土日は工事を行わない場合や平日の午後10時から午前6時までは工事を行わない場合には、その旨を契約書に明記しなければなりません。もっとも、週休2日とするが特定の曜日が休みとは限らない場合や予め受発注者間で工事を行わない日時を合意できない事情がある場合もあります。そのような場合は契約書に記載をする必要はありません。

⑵ 著しく短い工期の禁止

建設業法19条の5は、通常必要と認められる期間に比して短い期間による請負契約が締結されることが、長時間労働発生の原因となっている現状を改めるため、著しく短い工期を定めることを禁止しました。

発注者は、元請業者が下請業者との間で著しく短い工期で契約を締結していることが疑われる場合、当該元請業者の許可行政庁にその旨を通知しなければなりません。また、発注者との間で著しく短い工期で契約を締結した元請業者や、元請業者との間で著しく短い工期で契約を締結した下請業者から許可行政庁に対して違反の疑いを通報することも可能となっています。

許可行政庁は違反の疑いのある発注者に対しては是正勧告を、違反の疑いのある元請業者に対しては指示処分を行うことができます。発注者が勧告に従わない場合は、その旨の公表をされるため、企業イメージの低下・信用棄損という不利益を被ることになります。

なお、「著しく短い工期」に該当するか否かは、中央建設業審議会が公表した令和2年7月20日付「工期に関する基準」で示された事項が考慮されているかが重要になります。

4. その他改正で重要な事項

建設業法20条の2では、注文者に対し、工期に影響を及ぼす事項について契約締結時までに情報提供をする義務を課しています。地中の状況や周辺環境等、注文者があらかじめ知っている事項について情報提供を義務付けることにより、施工における手戻りを防止し、長時間労働が発生し得る事態を防止するための規定になります。

監修者

弁護士法人グレイス企業法務部

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