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パワハラ問題について弁護士が解説

投稿日:
更新日:2022/07/12
パワハラ問題について弁護士が解説

1. ハラスメント問題への対応はなぜ必要か

ハラスメント問題への対応はなぜ必要か

ハラスメント問題については、昨今、様々な類型のハラスメントが定義され、ハラスメント対策の必要性についても社会の共通認識となりつつあると言えます。ハラスメントの中でも代表的なものはパワーハラスメント(以下「パワハラ」といいます。)です。

パワハラに関する法律としては、2020年6月1日に改正施行された労働政策総合推進法があります。労働政策総合推進法は、多様な働き方を推進するために整備された法律ですが、パワハラ防止についても規定されているため、一般に「パワハラ防止法」と呼称されます。パワハラ防止法では、大企業に対して職場におけるパワハラ防止措置の策定を義務付けています。中小企業の場合は猶予期間が設けられており、2022年4月以降からパワハラ防止措置の策定が義務付けられることになります。

また、パワハラ防止措置の策定は、法律による義務化のみから要請されるわけではありません。職場にパワハラが横行していた場合、その職場の雰囲気が悪くなる、従業員の心の健康を害する及び従業員が十分に能力を発揮できなくなる等の様々な弊害が発生します。

そのため、従業員がその職務遂行能力を十分発揮して企業の業績を向上するため、そして、人手不足の今優秀な人材を企業に定着させるためにパワハラ対策が必要になります。

パワハラ防止措置の策定は一朝一夕ではできません。今から準備をはじめることをお勧めいたします。以下では、パワハラ防止措置の策定にあたって理解すべき事項について解説いたします。

2. パワハラとは?

2-1. パワハラの定義について

2020年1月、パワハラ防止法に基づき、パワーハラスメントに関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(パワハラ指針)が策定されました。

パワハラ指針では、パワハラについて「職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの要素を全て満たすもの」と定義されました。

2-2. 定義のポイント

パワハラの定義のポイントは、まず、「①優越的な関係」について限定をしていない点があります。すなわち、一般に優越的な関係とは、上司から部下へのいじめ・嫌がらせといった職務上の地位における上下関係を指して使われる場合が多いですが、それ以外にも先輩・後輩間や同僚間、さらには部下から上司に対して行われるものや、人間関係や専門知識、経験などの様々な優位性が含まれることになります。

また、次に重要なのは「②業務上必要かつ相当な範囲」という文言です。この文言により、業務上必要な指示や注意・指導に不満を感じたりする場合であっても、それが客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導である場合は、職場におけるパワハラには該当しません。

3. パワハラはどのような種類に分類されるか

パワハラの行為については、次のような類型に分類できます。

  1. 身体的な攻撃(暴行・傷害)
  2. 精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言)
  3. 人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
  4. 過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害)
  5. 過小な要求(業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
  6. 個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)

4. パワハラはどのように判断されるのか

パワハラにあたるかどうかは、当該労働者と同種の業務に従事し遂行することを許容できる程度の心身の健康状態にある「平均的労働者」を基準に判断すると考えられています。

実際に裁判例では、一般に、人に疲労や心理的負荷等が過度に蓄積した場合には、心身の健康を損なう危険があると考えられるから、他人に心理的負荷を過度に蓄積させるような行為は、原則として違法であり、その判断は、原則として、これを受ける者について平均的な心理的体制を有する者を基準として客観的に判断されるべきとしたものがあります。

5. パワハラが発生した場合の責任について

5-1. 加害者の責任

加害者の責任

まず、実際にパワハラを行った者は、被害者に対して不法行為責任を負うため、損害賠償請求を受けることになります。

そしてこの場合の損害としては、治療費、休業損害、退職による逸失利益、自殺に至った場合の逸失利益、慰謝料及び弁護士費用等が考えられます。

5-2. 使用者の責任

使用者の責任

次に、パワハラが従業員によるものである場合には、使用者は使用者責任により、被害者に対して損害賠償責任を負うことになります。

また、使用者は、労働契約上の付随義務として安全配慮義務を負っています。さらに、労働契約法5条では、使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をする義務を負っています。

そのため、使用者が職場内でのパワハラを認識しながら何らの対応をしない場合には、使用者は、被害者に対して、これらの義務違反を理由に損害賠償責任を負うこともあります。

5-3. その他パワハラが生じた際の弊害

その他パワハラが生じた際の弊害

その他パワハラが生じた際の弊害

その他法律上の責任以外にも、パワハラの存在について報道等がなされた場合には、会社の評判が低下し、従業員の採用も困難になることが予想されます。特に、パワハラによって、従業員が自殺をしたとなればその影響は計り知れないものがあります。

そして、人手不足が問題となっている現代では、中小企業において、このような事態は企業の存亡に関わる問題といえます。

6. まとめ

企業においては、パワハラを予防することが重要であり、さらにパワハラが起きてしまった場合の対応も適切に行わなければなりません。当事務所では企業法務に特化した弁護士が在籍するため、是非パワハラについてご相談いただければと思います。

【著者情報】

企業法務部 部長 福岡県弁護士会(弁護士登録番号:33334)

九州大学大学院法学研究科修士課程 修了

米国Vanderbilt Universityロースクール(LLMコース) 卒業

三菱商事株式会社、シティユーワ法律事務所を経て、現在弁護士法人グレイスにて勤務

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監修者

弁護士法人グレイス企業法務部

本店所在地
〒105-0012 東京都港区芝大門1丁目1-35 サンセルモ大門ビル4階
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[代表電話] 03-6432-9783
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WEBサイト
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