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相談事例

【7】雇止めされた労働者による雇用継続と金銭の請求

2017/03/13
相談分野
労務問題
業種
その他の業務

1. 相談内容

本件は、労使紛争に関するご相談です。
当事務所は、基本的に企業側(使用者側)のご相談をいただくことが多いのですが、本件は、労働者側(被用者側)を代理した事件でした。
事件の内容は、定年退職後、1年間の有期雇用で嘱託職員となったクライアントが、雇用継続を希望するにもかかわらず、1年間の期間満了に伴い雇用契約の更新がされなかったという事案(いわゆる「雇い止め」)で、クライアントより、雇用継続の交渉をして欲しいとのご依頼でした。
ただし、相手方企業は、クライアントの就業態度や能力を非難することに終始し、雇用継続を拒否し、和解金の支払いによる解決も拒否した(実際には金額の提示はあったものの微小に過ぎ、到底受け容れられるものではなかった)ため、訴訟による解決を図った。
なお、訴えに際しては、クライアントの相手方従業員としての地位の確認と、雇い止め後の賃金及び遅延損害金の支払いを請求した。

2. 争点

旧高齢者雇用安定法9条2項に基づき、相手方企業が定めている雇用継続の要件(65歳まで雇用を継続するための要件)は、「定年前2年間、人事考課の結果が平均以上である」こと(以下、「本件規定」といいます。)でした。

したがって、クライアント相手方企業の人事考課上、定年前の2年間の成績が平均以上か否かという点がストレートに争点となります(争点1)。
また、訴え提起前の任意交渉を相手方企業と行っている際、相手方企業の管理体制に杜撰さが感じられたところ、もしかしたら、相手方企業内では客観的な「人事考課」制度が運用されていないのではないか、との疑念が浮かびました。クライアントが直接連絡のとれる知り合いの元鹿児島出張所長及び他の出張所の所長に確認したところ、見立て通り、相手方企業の出張所の出張所所長は皆「人事考課」という制度の存在自体を知らず、また、部下の勤務成績を付けて上司に報告する慣行も存在しないことが明らかとなりました。
そこで、争点1に加え、仮にクライアントの人事考課の結果が平均未満であったとしても、当該人事考課は客観的な基準に基づくものではなく、「本件規定」を理由とする雇い止め(更新拒絶の意思表示)は、権利濫用として無効とならないか、という争点(争点2)を設定することが可能となりました。

3. 解決内容

訴え提起前、人事考課制度の存在を調査している時点で、各出張所長による相手方企業に人事考課、すなわち、部下を評価する制度は存在しないとの供述は、すべて証拠化しておりました。
この証拠を訴え提起と同時に提出しているため、本件の裁判はこの時点で勝敗の形成は大半が決まっていましたが、相手方がこちらの提案を拒否したため、当事者尋問を経て、判決直前まで訴訟が進行しました。
最終的には、尋問終了後、判決直前の段階で、裁判所より相手方企業敗訴の心証が開示され、敗訴判決を避けることと引き換えに、当初こちらが希望していた金額(1年分の賃金相当金の解決金)の2倍を支払ってもらうことで和解しました。
判決を取らずに和解で解決した理由の一つとして、本件の雇い止め後、クライアントはハローワークから失業保険の受給を受けていましたが、判決で勝訴した場合、失業保険の受給金を即時返還しなければならなくなるとのデメリットがありました。

4. 弁護士の所感

本件のポイントは、初動対応の点にありました。
すなわち、本件訴訟のもっとも強力な証拠は、相手方企業の出張所長複数からの「相手方企業に人事考課制度などない」との供述を記録したメールなのですが、こうした証拠は、訴訟を起こした後では、相手方も警戒し獲得することが困難となります。
相手方企業やその営業所長が油断している時点で、キーになる証拠を獲得できた点が、本件を良い形で解決に導くことができたポイントだったと思います。

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