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企業法務コラム

フレックスタイム制により残業代を節減できるか

投稿日:2019/10/27
更新日:2023/12/22

フレックスタイム制により残業代を節減できるか

1. フレックスタイム制とは

フレックスタイム制とは

フレックスタイム制という言葉をお聞きになった方も多いと思われますが、その実態は、必ずしも正確に理解されていないことが多いように思われます。

フレックスタイム制とは、通常であれば、始業時刻と終業時刻が決められているところ、いつ出社・退社してもよい時間帯と必ず勤務しなければならない時間帯に分けて、労働時間の弾力化を図る制度のことです。前者をフレキシブルタイム、後者をコアタイムといいます。

いつ出社・退社してもよい時間帯は、従業員が自由に決めることができます。

コアタイムを導入するか否かは、会社が自由に決めることができます。コアタイムを導入しなければ、全てフレキシブルタイムとなり、出社・退社も、労働時間も、従業員が全て自由に決めることができますが、実際には、コアタイムを導入している会社が多いと思われます。

2. フレックスタイム制を導入するために必要な手続

フレックスタイム制を導入するためには、会社において、以下の手続を行う必要があります。

  • ① 就業規則にフレックスタイム制を定めること

  • ② 以下の内容を労使協定で定めること

    1. 対象となる従業員の範囲

      個人ごとで特定することも、部署ごとで特定することも可能です。

    2. フレックスタイムを導入する期間(注:1ヶ月以内に限られます)・開始日

      通常は、毎月1日から同月末日までの1ヶ月単位とすることが多いです。この期間は、「清算期間」と呼ばれます。

    3. フレックスタイムを導入する期間内の総労働時間

      1週間あたりの労働時間が40時間以内になるようにする必要があります。具体的には、以下の範囲内に収まる必要があります。

      • 歴日が31 日の場合 177.1 時間
      • 歴日が30 日の場合 171.4 時間
      • 歴日が29 日の場合 165.7 時間
      • 歴日が28 日の場合 160.0 時間

      例えば、下記D.の「1日の労働時間」を8時間と設定して、平日が20日としますと、160時間になります。

    4. 標準になる1日の労働時間

      7時間から8時間の範囲で設定することが多いと思われます。

    5. コアタイムの開始時刻・終了時刻

      開始時刻と終了時刻を明確に定める必要があります。

    6. フレキシブルタイムの開始時刻・終了時刻

      開始時刻と終了時刻を明確に定める必要があります。

これらの手続が、適切に行われていない会社が散見されますので、注意が必要です。なお、②の労使協定について、労基署に対する提出は必須ではありません。

3. フレックスタイム制と残業代

フレックスタイム制を導入すると、特定の日・特定の週において残業が発生した場合でも、会社は、日・週単位で残業代を支払う必要がなくなります。会社が残業代を支払う必要があるのは、清算期間(1ヶ月に設定されることがほとんどです)の総労働時間が、下記の1ヶ月間の法定総労働時間を超えた場合だけです。

  • 歴日が31 日の場合 177.1 時間
  • 歴日が30 日の場合 171.4 時間
  • 歴日が29 日の場合 165.7 時間
  • 歴日が28 日の場合 160.0 時間

このように、フレックスタイム制は、会社の業態によっては、残業代を節減することができる制度ですが、以下の点に注意する必要があります。

フレックスタイム制と残業代

第1に、休日労働・深夜労働を行った場合には、法律に従った割増分を支払う必要があります。

第2に、休憩は、原則として、コアタイム中に一斉に取得させる必要があります。

第3に、フレキシブルタイムの中であれば、いつ出社・退社しても自由ですが、その反面、従業員の時間感覚がどうしてもルーズになりがちです。特に、コアタイムは、必ず勤務しなければならない時間帯ですので、通常と同じく、遅刻・早退・欠勤という概念があります。従業員が、コアタイムにきちんと勤務をしているかを把握する必要があります。

第4に、上記ともかかわりますが、フレックスタイム制を採用する会社でも、労働時間の管理・把握が必要になります。フレックスタイム制を導入したからといって、労働時間の管理・把握が不要になるという誤解をしている会社もありますが、それは間違いです。

第5に、コアタイムが大半を占めており、フレキシブルタイムがほとんどないような制度は、フレックスタイム制の趣旨に反し、無効とされる可能性が高くなります。他方で、フレキシブルタイムが長すぎるのも、長時間労働の原因になり得るため、労基署から指摘を受ける可能性があります。

第6に、フレックスタイム制を称しながら、「1日8時間は必ず勤務すること」といった義務付けをすることはできません。

4. 2019年4月以降の法改正

2019年4月以降の法改正

最後に、フレックスタイム制は、2019年4月から法改正がなされますので、その点について簡単に説明します。

最も大きな改正点は、清算期間を3ヶ月まで延長することができるようになった点です。これにより、フレックスタイム制は、複数月ベースでの繁閑に対応できる制度となります。

他方で、注意点もあります。

第1に、労使協定を労基署に届け出る必要があります。

第2に、残業代の計算が複雑になります。従前の制度では、上記3のとおり、残業代の計算は、さほど複雑ではありませんでした。他方で、新しい制度では、1ヶ月単位での残業代と清算期間(3ヶ月に設定されることが多くなると思われます)単位での残業代の計算をする必要が生じます。1か月単位での残業代は、週平均50時間超になった部分に限られますが、現在の制度と比較して、管理の手間がかかることは事実です。

第3に、中途入社・途中退社の従業員に関しては、また別途の計算方法による必要がありますので、実務上、管理がさらに複雑化する可能性があります。

5. まとめ

フレックスタイム制は、会社の業態によっては、会社・従業員の双方にとって、メリットがある制度になり得ますが、手続・運用の方法が正確に理解されていないような状況も散見されます。2019年4月からの新制度も含めて、専門家である当事務所にご相談ください。

監修者

弁護士法人グレイス企業法務部

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