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企業法務コラム

変形労働時間制と残業代

2021/07/29
変形労働時間制と残業代

1. はじめに

はじめに

変形労働時間制を採用している会社は、意外に多く見かけることがあります。

他方で、変形労働時間制の内容を正確に理解している会社は少なく、変形労働時間制を採用することにより、残業代を支払わなくてもよいと誤解しているケースもあります。

変形労働時間制は、導入するにあたって、いくつかの手続を経る必要があります。

また、残業代の計算も、通常のケースよりも複雑になりますが、その点を正確に理解しておく必要があります。

変形労働時間制は、どの会社にも汎用できるものではなく、会社の業態からみて導入のメリットがあるかをまず検討すべきものです。

変形労働時間制にはいくつかのパターンがありますが、以下では、もっとも導入比率が高いと思われる「1年単位」の変形労働時間制を例として解説をします。

2. 変形労働時間制を導入するための手続

1年単位の変形労働時間制を導入する場合、労働基準法が定める条件を満たす必要があります。

第1に、労使協定で以下の点について定める必要があります。

  • ① 対象となる労働者の範囲
  • ② 対象期間
  • ③ 特定期間(対象期間のうち特に繁忙が予想される期間)
  • ④ 労働日
  • ⑤ 当該労働日毎の労働時間
  • ⑥ 有効期間

第2に、就業規則で以下の点について定める必要があります。

  • ① 変形労働時間制の内容
  • ② 始業・就業時間

第3に、1年単位の変形労働時間制は、労働者の生活設計に影響を与えるものですので、労働基準法上、幾つかの上限が定められています。

  • ① 連続労働日数:最大6日
  • ② 労働時間の上限:1日10時間、1週52時間
  • ③ 週48時間を超える週は連続3週間以内
  • ④ 週48時間を超える週は3ヶ月に3週以内
  • ⑤ 1年間の実労働日数上限:280日

3. 変形労働時間制のメリット

この制度は、1年単位で見たときに、繁閑の差異が季節的に生ずることが予定されている業種(例えば、デパートや私立学校)において、割増賃金の支払いを削減できるというメリットがあります。明確な繁忙期が存在する業態の会社は、1年単位の変形労働時間制を採用するメリットがあります。

そのような繁忙期については、あらかじめ、労働基準法が認める上限内(1日あたり10時間、1週あたり52時間)で、1週あたりの所定労働時間を長く(例えば50時間)しておけば、労働基準法が定める年間の総枠内に収まる限り、割増賃金を支払う必要はなくなります。

他方で、1年単位の変形労働時間制においては、1年間を平均して1週間あたりの労働時間が40時間以内に収まっている必要があり、超過した場合には、割増賃金を支払う必要があります。

つまり、繁忙期の所定労働時間を長くすることと引き換えに、閑散期の所定労働時間は、労働基準法の原則である1日8時間よりも短くすることにより、1年単位の変形労働時間制を実効的に活用することが可能になります。

4. よく見かけるケース

よく見かけるケース

よく見かけるケースとして、繁忙期とそれ以外の期間について、1週あたりの所定労働時間の長短を個別に設定する運用を行っておらず、むしろ、一律に1週あたりの所定労働時間を設定している会社がありますが、これでは、1年単位の変形労働時間制を採用するメリットはないといえます。

また、1年単位の変形労働時間制を採用するにあたり、勤務日・休日等を事前に固定する必要がありますので、勤務の柔軟性は損なわれます。実務上は、1年単位のカレンダーにより、勤務日・休日をあらかじめ定めることが多いですが、実際には、このカレンダーの内容がほぼ遵守されていないケースも見受けられます。これでは、1年単位の変形労働時間制が適法に運用されていないことになってしまいます。

繁忙期についても、節約することができる時間外手当は、現実的には、最大で1日あたり2時間分にとどまります。会社の繁忙期が、長くてもどの程度になるかを検証する必要がありますが、繁忙期の期間次第では、1年単位の変形労働時間制を継続することにより、人事関連のコストが大幅に削減できるという保証はないため、むしろ、1年単位の変形労働時間制を導入しない・廃止することも検討に値するでしょう。

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