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企業法務コラム

弁護士が解説!賃金未払いの罰則について

2021/10/05
弁護士が解説!賃金未払いの罰則について

厚生労働省労働基準局発表の平成27年労働基準監督年報によると、労働基準監督官が司法処分として検察庁に送検した件数は966件もあります。そのうち約40%が労基法違反を理由とするものです。このようなデータがあるにもかかわらず、労基法違反が刑事責任にも問われ得るものと認識している経営者は意外と少ないのではないでしょうか。

以下では賃金未払いに焦点をあて、それに伴う罰則について解説します。

1. 賃金未払いの類型

賃金未払いの類型

典型的なパターンは時間外労働に対する残業代を支払っていないというものです。

労基法32条は、法定労働時間を「1日8時間、週40時間」と定めています。これを超えて働かせた場合、当該労働時間に応じた時間給に加えて、通常の1.25倍から1.5倍の割増賃金を支払わなければなりません。

この割増賃金は、深夜労働や休日労働の場合も発生します。

そもそも残業代を支払っていない、割増分を支払っていない。このような場合、労基法違反となります。

その他にみられるケースとして、労働者が職務上会社に損害を与えた場合、当該損害を給与から天引きしてしまっているというものがあります。労基法は給与の全額払いを原則としており、会社側が労働者に対して債権を有している場合に、会社が対等額で一方的に相殺をして賃金の支払いを免れることを規制しています。裁判例は労働者が自由な意思に基づいて相殺に同意した場合は許されるとしていますが、当該同意が労働者の自由な意思に基づくものであるかは厳格に審査される傾向がありますので注意が必要です。

2. 賃金未払いと刑事責任

残業代未払いについては、労基法119条が「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」という罰則を定めています。罰則の対象者は代表者に限られません。条文は「法律に違反した者」と規定しておりますので、部下に違法な残業を命じている管理職も刑事責任を問われ得ることになります。また、労基法121条により会社そのものも刑事責任を問われ得る立場となります。刑事罰が会社に科せられる場合、懲役刑は存在せず、罰金刑が科せられることになります。罰金そのものの金額は低いですが、会社の社会的信用が棄損されて、結果として会社経営に深刻な影響が生じるおそれがあります。

3. その他会社が負う責任

その他会社が負う責任

賃金未払いに伴い、会社が負う責任は刑事責任に限られません。民事責任も問われることになります。未払い分の賃金を支払う義務を負うことはもちろんですが、その他にも遅延損害金や付加金の支払義務が発生し得ます。

遅延損害金は、退職前においては法定利率である年3%(令和2年3月31日までに期限の到来する賃金債務の場合は年5%)とされますが、退職後においては賃金の支払の確保等に関する法律によって年14.6%という非常に高利率の利息が発生します。

付加金とは、未払賃金の支払いをめぐって訴訟となった場合に、裁判所が裁量により支払いを命じるものです。もっとも、付加金の対象となる未払賃金は以下のものに限られます。

  1. 解雇予告手当(労働基準法20条1項)
  2. 休業手当(労働基準法26条)
  3. 時間外・休日労働等に対する割増賃金(労働基準法37条)
  4. 年次有給休暇中の賃金(労働基準法39条9項)

付加金は悪質な未払いに対する制裁的な側面があり、最大で当該未払賃金と同額の支払いが命じられます。

賃金未払いの事例が必ず刑事責任まで発展するとは限りません。しかし、刑事責任を問われる可能性がある以上、会社としてそのリスクを無視することはできません。また、刑事責任を負わずに済んだとしても、民事責任を問われることは大いにあります。リスク防止の観点からも会社の体制や労働者への対応について専門家である弁護士に相談することをお勧めいたします。

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