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企業法務コラム

どこからが労働時間になる?曖昧になりやすい”労働時間”について解説

2022/09/06
どこからが労働時間になる?曖昧になりやすい”労働時間”について解説

第1 労働時間とは

1「労働時間」という言葉自体は馴染みのあるものだと思います。そのため、どのような時間が「労働時間」にあたるかについて、一定のイメージをお持ちかもしれません。しかし、「労働時間」とは、必ずしも現実に活動している時間とは限られません。そのため、「労働時間」に該当するか判断に迷うケースも少なくありません。このような判断に迷うケースにおいて、「労働時間」に該当するかの判断を曖昧にしておくと、後に思いもよらない残業代請求を受けることがあります。そこで、本コラムでは「労働時間」とは何かについて解説いたします。

2「労働時間」とは、使用者の作業上の指揮監督下にある時間または使用者の明示ないし黙示の指示によりその業務に従事する時間をいいます。
そして、「労働時間」に該当するかの判断にあたっては、使用者の指揮監督下にあるかといった観点から判断します。その際、①業務の提供行為の有無、②労働契約上の義務付けの有無、③義務付けに伴う場所的・時間的拘束性の有無・程度等を考慮します。もっとも、指揮監督下にあるかは明示的である必要はなく、黙示の指揮命令下に一定の作業が行われている場合も含まれます。そのため、明示的に業務命令を行った場合に問題が生じることは少なく、明示的な業務命令がない場合に特に黙示の指揮命令下にあったのかということが問題となります。

第2 各種法令における”労働時間”の規制

1 労働基準法上の労働時間に関する規制について

労働基準法上には、労働時間に関する規制がいくつか存在します。例えば、同法第32条1項では「使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。」と定められ、同条2項は「使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。」と定めています。このように同法32条では、労働時間の上限について定めています。
また、具体的な解説は他のコラムに譲りますが、労働基準法では、変形労働時間制、フレックスタイム制及び事業場外みなし労働時間制といった様々な労働時間制度も定められています。

2 労働安全衛生法上の労働時間に関する規制について

労働安全衛生法においても労働時間に関する規制が存在します。例えば、同法では、事業者は労働時間の状況を把握しなければならないと定めています。これは、長時間労働者に対する医師による面接指導の実効性を担保し、ひいては労働者の健康管理の観点から定められています。
なお、労働時間の把握については、厚生労働省労働局長が「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(平29・1・20基発0120第3)を策定していますので、是非参考にしていただければと思います。

第3 労働時間の定義が曖昧な場合の企業のリスク

労働時間にあたるかは、様々な事情を考慮し、法的な評価を伴うものであり、一義的に明確ではないことはご理解いただけたかと思います。
従業員が使用者に対し残業代を請求する場合等、賃金の支給不支給をめぐって「請求している賃金に対応する時間が、そもそも労働時間に該当するのか」という問題が先鋭化します。そのため、労働時間該当性の判断を曖昧にしておくと、会社としては労働時間に該当しないと判断していたとしても、従業員から労働時間に該当し、当該時間については賃金が支払われていないということで残業代請求を受けるリスクがあります。

第4 労働時間の計算方法

労働時間は、勤務時間(始業時刻から終業時刻までの時間)から休憩時間を控除して計算します。

もっとも、この勤務時間及び休憩時間を適正に把握できるかが問題となります。多くの残業代請求事案においては、そもそも、始業時刻、就業時刻及び休憩時間を正確に会社が管理していないことも珍しくありません。また、タイムカードを利用していたとしても、その打刻のルールが曖昧であることから、実際の勤務時間よりもタイムカード上の勤務時間が長くなっているということもあります。そのほか、会社内で業務が完結すれば勤務時間の把握は比較的容易ですが、営業職の場合の勤務時間の管理はどうすべきかといった問題も生じ得ます。

このように労働時間を計算すると一概にいっても、注意すべき点があることがわかるかと思います。

第5 パターン別|これって労働時間にあたる?判断のポイント

前述のように、労働時間にあたるかは一義的に明確ではありません。そのため、労働時間に該当するか判断に迷うケースも存在します。そこで、以下に労働時間該当性が問題となるいくつかの典型例をご紹介したいと思います。

(1) 実作業前の準備行為や実作業後の後始末の時間

業務を行うにあたって制服を着用する場合、その着用時間が生じます。このような実作業に入る前の準備をしている時間は、労働時間に含まれるのでしょうか。この場合、労働者が使用者の指揮命令下に置かれているかが問題となりますが、問題となる準備行為が使用者から指示されていたか又はこれを余儀なくされていたという場合には、特段の事情のない限り、労働時間に該当すると考えられます。
実作業後の後始末の時間も同様の観点から判断することになります。

(2) 一時の休息や仮眠時間、待機時間等

一時の休息や仮眠時間、待機時間等は一見すると、業務を行なっていないことから労働時間には当たらないと考える方もいらっしゃるかもしれません。
労働状況によっては、業務に従事している間に、一時の休息や仮眠をとることのできる時間、あるいは現に実作業にあたっている訳でない待機時間等が存在する場合がありますが、これらが労働時間にあたるかが問題となります。
労働時間か否かを判断する場合には、実作業を行っているか否かではなく、使用者の指揮監督下にあるのか否かという点が非常に重要です。すなわち、労働からの解放が保障されていない限り、労働時間と判断されます。一時休息、仮眠、待機時間等であったとしても、いつでも使用者が指揮命令できる状況にあり、指揮命令があれば即座に対応しなければならない状況下に労働者が置かれている場合には、それらの時間は労働時間と判断されます。
例えば、トラック運転手が貨物の積み込みを待っている時間などが問題となります。

(3) 研修等の時間

使用者の業務命令により参加した研修等の時間だけでなく、参加が義務的で会社業務としての性格が強ければ労働時間にあたります
裁判例の中には、業務時間終了後にパソコンを使う1~2時間程度のウェブ学習につき、労働時間と認めたものがあります。

(4) 通勤時間や出張に要する時間

労働時間とは、客観的にみて使用者の指揮命令のもとにある時間をいいますので、直ちに、通勤時間や出張に要する時間が労働時間にあたるものではありません。もっとも、通勤時間であっても、使用者の指揮命令が及んでいる場合、例えば携帯電話を持たされており、電話を通じていつでも指揮命令に応えなければならないことが義務付けられていたり、通勤・出張といった移動時間において移動とは別の業務にあたることが予定されているような場合には、これらの時間も労働時間にあたる可能性があります。

(5) 使用者が業務指示をしていない時間

使用者が具体的に業務指示をしていない場合であっても、労働時間にあたる場合があります。例えば、本来の業務に付随する業務を行う必要があるため早出や就業時間後に残業を行うケースが考えられます。これらのケースで多いのは、使用者側が早出や就業時間後の残業を行っている事実を知っており、あるいは知り得る状態にあるのに、それを黙認しているようなケースです。このような事情がある場合には、たとえ使用者側が明示的に早出や残業をするよう指示を出していなかったとしても、労働時間にあたります。

第6 労働時間を明確にするために企業がすべきこと

ア 労働時間の把握方法の決定及び検証

まず、労働時間の把握については、厚生労働省労働局長が「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(平29・1・20基発0120第3)を策定しており、参考となります。同ガイドラインでは、①使用者が、自ら現認することにより確認すること、②タイムカード、ICカード等の客観的な記録を基礎として確認すること」を原則的な方法として挙げています。もちろん、他の方法で適切に労働時間を把握する方法であれば差し支えありません。
また、現時点での労働時間の把握方法について、抜け漏れがないかなどの検証も必要です。特に休憩時間であるのにもかかわらず、業務を行なっているかのような取り扱いがなされていないかといった観点が重要です。

イ 問題となる時間の洗い出し

次に、始業時刻、終業時刻、休憩時間及び実労働をしていないと思われる時間を把握し、その上で、労働時間とすべきか休憩時間とすべきか判断に迷う時間について洗い出しを行うことも重要です。その上で、同時間について、労働時間として扱うかを判断することになります。同判断に迷う場合には、弁護士に相談することも検討していただければと思います。

第7 弁護士法人グレイスでできるサポート内容

1 労働時間に関するご相談

これまでご紹介したように労働時間にあたるかは、一義的に明確とはいえません。そのため、労働時間に該当するかについて、具体的に事情を踏まえてアドバイスいたします。
また、労働時間の管理は、残業代請求を未然に防ぐためにも重要です。そこで、従業員がなし崩し的に残業をすることを防ぐために、残業承認制度を導入するなど残業時間の管理体制の整備についてもご相談いただければと思います。

2 残業代請求への対応

労働者から残業代請求を受けた場合、代理人として交渉いたします。労働者の主張の精査し、反論を行い、少しでも会社に有利な合意を目指します。また、訴訟又は労働審判を申し立てられることなく、話し合いによる解決を目指します。このような解決により、紛争が長期化することを回避し、かつ、費用の節約も期待できます、

3 労働審判・訴訟対応

労働者から残業代請求に関する訴訟又は労働審判を申し立てられた場合にも、代理人としてご対応いたします。労働者の主張の精査し、反論を行い、少しでも会社に有利な結論を目指します。

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