企業法務コラム
見落とされがちな「36協定違反に罰則が適用される」リスク
更新日:2023/12/21
1. 36協定とは何か
36協定という言葉は、法律上の用語ではありませんが、会社の労務管理上では、非常に重要なものです。
法律では、労働時間について、1日8時間・1週間40時間を原則としています。
この原則を超える場合には、会社は、労使協定を締結して、労働基準監督署に届け出る必要があります。この労使協定のことを、36協定と呼んでいます。36の根拠ですが、労働基準法の36条に定められているため、そのように通称されています。
労使協定は、会社と従業員の代表との間で締結するものですが、会社の労務管理に関わる重要な点について、必要となります。中でも、36協定は、最も重要な労使協定の一つといえます。
36協定を締結するとしても、無制限に残業等をさせることができるわけではなく、限度が定められています。しかし、従前は、この限度に違反した場合でも罰則がなかった等の制度的な欠陥があり、問題視されていました。
2. 現在の36協定の内容
そこで、法律が改正され、36協定の内容を改正するともに、違反した場合の罰則を定めることにより、実効性を持たせることになりました。
その大要は、以下のとおりです。
[時間外労働をさせることができる範囲]
月45時間以内
年360時間以内
[臨時的に上限を超えて労働させる必要がある場合の例外(特別条項)]
年720時間以内
[その他の規制]
時間外労働+休日労働の合計で月100時間未満
時間外労働+休日労働の2ヶ月・3ヶ月・4ヶ月・5ヶ月・6ヶ月の平均値が月80時間未満
時間外労働が月45時間超になるのは年6回まで
[罰則]
6か月以下の懲役or30万円以下の罰金
36協定違反の罰則とは、長時間労働のリスクを制度的に抑制すると言い換えることができます。長時間労働のリスクは、労働時間の管理以外に、休日の確実な取得という点も必要になります。そのため、上記の[その他の規制]のとおり、休日労働の時間についても、規制の対象となっています。なお、上記の「休日労働」とは、法律上の義務である週1日の休日に労働した日をいいます。簡単にいいますと、週休2日の会社であれば、うち1日のみが算定対象となります。
3. 「特別条項」とは何か
会社としては、「時間外労働をさせることができる範囲を拡張できる例外」となる「臨時的に特別の事情」とは何かという点が関心のあるところと思われます。
上記のとおり、この例外(「特別条項」と呼ばれます)を利用できるのは年6回までですので、恒常的に多忙であるということは、理由になりません。そのような事象は、従業員を増やす等により解決すべき問題であり、この例外を利用することの正当な理由にならないということです。
例外的な事由になりうるものとして、「業務の都合により必要になる場合」といった概括的な記載は認められず、具体的には、以下のようなものが想定されます。
- ・予算/決算業務
- ・ボーナス商戦等の繁忙期
- ・納期の逼迫
- ・大規模なクレーム対応
- ・機械のトラブル対応
4. その他のポイント
36協定を作成する際には、上記の点を踏まえて記載をする必要がありますが、細かい事項として、以下の点があります。
36協定では、時間外労働をさせる理由を記載する必要がありますが、1日・1ヶ月・1年のそれぞれについて、時間外労働の時間数・休日労働の日数を記載する必要があります。
36協定の有効期間は、1年間に設定することが一般的です。
36協定では、健康福祉促進措置の内容を記載する必要があります。
具体的には、以下のようなものが想定されます。
- ・医師による面接指導
- ・健康診断
- ・産業医等による指導/助言等
法律の改正は、既に施行されております。
従前では、36協定は「とりあえず提出しておけばよい」という程度のイメージを持っていた会社も多いかと思いますが、今後は、上記の改正を踏まえて、正確な対応が必要になります。
監修者
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