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企業法務コラム

どのような時間が労働時間にあたるのか

投稿日:
更新日:2024/07/16

東京・神戸・福岡・熊本・長崎・鹿児島に拠点がある弁護士法人グレイスの労働法コラムです。

今回のテーマは、労働時間についてです。

相談者
相談者

時間外労働に対する賃金の請求は、労使間の問題でよく耳にしますが、なぜ問題になるのでしょうか。

播磨先生
弁護士

それは所定労働時間を超えた場合に、どのような時間が労働時間にあたるのかが問題になるからです。「サービス残業」という言葉を聞くと思いますが、これも現実には本当に賃金請求できる労働時間なのか否かがまず問題になります。

相談者
相談者

そうすると、「労働時間」とはそもそもどのような時間を指すのかということが問題だということでしょうか。

播磨先生
弁護士

まさにそのとおりです。「労働時間」とは、使用者の作業上の指揮命令監督下にある時間または使用者の明示ないし黙示の指示によりその業務に従事する時間をいいます。この定義が基準にはなりますが、この基準にあてはまるか否かの判断が難しい場合も多いです。

相談者
相談者

例えばどのような場合があるのでしょうか。

播磨先生
弁護士

始業時刻前の準備行為に要する時間はいい例です。

相談者
相談者

業務のための準備行為であれば、労働時間にあたるようにも思えますが、業務の前提なので労働時間にはあたらないとも考えられそうです。

播磨先生
弁護士

そうですね。簡単に区別できるものではないですね。例えば、始業時刻前に行う朝礼やミーティングの時間はどうか、着用を義務付けられた作業着の更衣に要する時間はどうかといった問題があります。

相談者
相談者

始業時刻前に行う朝礼やミーティングの時間は労働時間になるのでしょうか。

播磨先生
弁護士

形式的には始業時刻前であったとしても、朝礼やミーティングは客観的に見て実作業と一体的なものであれば、原則として労働時間にあたります。また、仮に朝礼やミーティングが任意参加であるとされていたとしても、本当に任意性が担保されているのか、大多数の従業員が出席する慣習になっており、実質的に強制参加になっていないか等の検証も必要になるでしょうね。強制の性質が強くなればなるほど労働時間にあたる可能性も高くなります。

相談者
相談者

それでは、着用を義務付けられた作業着の更衣に要する時間はどうでしょうか。

播磨先生
弁護士

作業着を着用することが義務付けられているのであればその更衣に要する時間は労働時間となります。これが実際に争われた裁判例も存在しており、労働時間性が肯定されています。

相談者
相談者

就労時間中に一時の休息や仮眠をとることのできる時間が存在する場合には、その時間は労働時間にあたるのでしょうか。

播磨先生
弁護士

労働時間か否かを判断する場合、実作業を行っているか否かではなく、使用者の指揮命令監督下にあるのか否かという観点が非常に重要になります。簡単に言えば、使用者が指揮命令をいつでも出せる状況にあり従業員がこれに従わなければならない場合には、労働時間であるといえます。労働からの解放が保障されていない限り、労働時間であると判断されると言ってもいいでしょう。

相談者
相談者

そうすると、一時の休息や仮眠をとることのできる時間だからといって、労働時間性が必ず否定される訳ではないということでしょうか。

播磨先生
弁護士

そうです。使用者から指揮命令があれば即座に対応しなければならない状況下に労働者が置かれている場合には、それらの時間は労働時間と判断されます。仮眠していても出動命令が出されればすぐに動かなければならない警備員等が分かりやすい例です。

相談者
相談者

それでは、通勤時間や出張に要する時間は労働時間でしょうか。

播磨先生
弁護士

客観的にみて使用者の指揮命令のもとにある時間が労働時間ですので、通勤時間や出張に要する時間は直ちに労働時間にあたるものではありません。もっとも、例えば携帯電話を持たされており、電話を通じていつでも指揮命令に応えなければならないことが義務付けられていたり、通勤・出張といった移動時間において移動とは別の業務にあたることが予定されているような場合には、労働時間にあたる可能性があります。

相談者
相談者

最後に、使用者が特に指示をしていないにもかかわらず、早出や就業時間後の残業を行う場合に労働時間となることはあるのでしょうか。

播磨先生
弁護士

そのような場合でも労働時間となることがあります。具体的には、使用者側が早出や就業時間後の残業を行っている事実を知っており、あるいは知り得る状態にあるのに、それを黙認をしているような場合です。この場合には、たとえ使用者側が明示的に早出や残業をする指示を出していなかったとしても労働時間になります。

相談者
相談者

使用者としては、従業員の労働実態をしっかり把握、認識しておくことが重要なのですね。よく分かりました。

【著者情報】

企業法務部 部長 福岡県弁護士会(弁護士登録番号:33334)

九州大学大学院法学研究科修士課程 修了

米国Vanderbilt Universityロースクール(LLMコース) 卒業

三菱商事株式会社、シティユーワ法律事務所を経て、現在弁護士法人グレイスにて勤務

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監修者

弁護士法人グレイス企業法務部

本店所在地
〒105-0012 東京都港区芝大門1丁目1-35 サンセルモ大門ビル4階
連絡先
[代表電話] 03-6432-9783
[相談予約受付] 0120-100-129
WEBサイト
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