企業法務コラム
工事代金の未払いに対する下請け業者の対応と注意点を弁護士が解説【建設業の悩み】
更新日:2026/01/16
目次
はじめに
建設業者の方々には、工事代金が未払いになってお悩みの方も多いのではないでしょうか。この記事では、工事代金の未払いが発生する理由から、未払い工事代金の回収方法まで、よくある疑問点にもお答えしながら解説していきます。
結論的には、早期に弁護士にご依頼をいただき、法的に適切な手段・方法を用いることで未払い工事代金の回収を進めるべきです。
この記事で分かること
- なぜ工事代金未払いが発生するのか
- 工事代金の回収はどのような順番で行うべきか
- 工事代金に関する消滅時効
- 工事代金の回収を弁護士に任せるメリット
工事代金未払いが発生する理由
工事代金が支払われず、債権回収にお悩みの下請業者は多いのではないでしょうか。元請業者と何らかのトラブルにあってしまって工事代金が支払われなかったり、何のトラブルも起きていないにもかかわらず元請業者と連絡が取れなくなったり、未払いに至る理由は様々です。
以下では、工事代金の未払いが発生した場合の対応と注意点についてご紹介します。
工事代金未払いに関するトラブル事例
ちなみに、工事代金の未払いに関するトラブル事例としては、以下のようなものがあります。
請負代金について明示的な合意がない場合
建設業では、契約書を明確に交わしていないという事例が頻繁にみられます。特に工事の追加や変更があった場合、その費用について曖昧なまま進められてしまい、後になってトラブルとなる傾向があります。
工事に瑕疵があると主張する場合
工事が完成したにもかかわらず、施主から工事内容が不適切であると争われるケースもあります。工事に瑕疵があるか否かを判断するためには、法的知識だけでなく、建築分野に関する専門知識も必要とされます。そのため、工事の瑕疵を巡るトラブルを解決するためには高い専門性が求められ、紛争が長期化しやすい傾向があります。
工事が完成していないと争われる場合
請負代金を請求するためには仕事を完成していることが必要です。しかし、前述したように建設業では契約書が存在しなかったり、合意内容が曖昧だったりするため、どこまで工事をすれば仕事が完成して、請負代金を請求できるかが不明確な場合があります。双方の認識に食い違いがある場合もあり、深刻なトラブルに発展するケースもあります。
このようなトラブルが発生している場合においては、早期に弁護士へのご依頼をいただいた方が良いです。当事者間でトラブルを解決しようとして更に紛争が激化しないよう、ご注意ください。
未払い工事代金を回収する方法
それでは、未払工事代金を回収する方法をご紹介します。弁護士が介入した場合には、以下のような未払工事代金回収方法をとります。
未払いの理由を把握する
まず、誰に対して請求をするかを確定する必要があります。原則として契約の当事者である元請業者に請求をすることになりますが、工事代金の支払いがなされていない理由によって、方法や戦略を検討する必要があります。
そこで、最初に未払いの理由を把握することとなります。例えば、相手方が、工事が未完成であると考えているのであれば、工事完成を証明する証拠を固めた上で、元請業者に工事引渡しの連絡とともに請負代金の請求を行ったりします。
内容証明郵便による催告
請求先が明確になり、かつ、ある程度未払いの理由が明らかになった段階で、相手方に対して内容証明郵便による工事代金支払の催告をします。
内容証明郵便の中では、支払期限を再度明示した上で支払いを求めるとともに、相手方と未払の理由次第では、工事の引渡しの連絡なども含めて記載します。また、支払がない場合には、民事訴訟などの法的措置に出ることも明示します。
相手方によっては、弁護士からの内容証明郵便による請求を受けて支払に応じてくる可能性もあります。また、これまでご本人からの連絡には返答をしてこなかった相手方が、弁護士からの連絡を機に回答してくるということもあります。
このように未払いという紛争に弁護士がメスを入れることによって、解決の糸口を探る第一歩が内容証明郵便による催告なのです。
支払督促による回収
相手方が任意で支払いをしない以上、法的措置を講ずる必要があります。
支払督促は裁判所を利用する手続ですが、簡易かつ迅速に進められることがメリットです。支払督促の申立てを行い、督促に相当すると判断されれば、裁判手続を経ることなく、裁判所から相手方に督促状が送付されます。
支払督促を相手方が受領後、2週間以内に異議の申し立てがなされなければ、強制執行の手続に進むことが可能となります。逆に言えば、異議の申立てがなされれば、通常の裁判手続に移行しますので、支払督促のメリットはなくなります。このため、相手方から異議が出されると想定される場合は、支払督促は選択しないこととなります。
訴訟による回収
任意での回収が実現できない場合で、支払督促を選択しない場合には、訴訟による回収を検討することになります。訴訟に発展するような事案としては①契約の存在自体に争いがある事案や②契約内容に争いがある事案が想定されます。契約の存否や内容については、事実認定の問題となり、高い専門性が求められる分野となりますので、是非専門家である弁護士にご相談いただきたい事案です。
弁護士にご相談をいただければ、裁判所に提出する各種書類の作成・戦術決定・訴訟での相手方や裁判所とのやり取りを全て任せることができます。
強制執行
さて、訴訟によって勝訴したとしても、相手方が工事代金を支払ってこない場合があります。このような場合には、強制執行を検討することとなります。
強制執行とは、相手方が保有する資産に対して、確定した判決などの「債務名義」と呼ばれる資料を用いて強制的な差押えなどを行うことを指します。
相手方の取引銀行が分かれば預貯金債権を差し押さえますし、相手方の上に更に元請業者がいる場合には、元請業者に対する請負工事代金請求権を差し押さえます。また、相手方が保有する重機などの車両に対しても、差押えをすることが想定されます。
相手方の取引銀行も分からないという場合には、判決の確定後に、相手方事業所の近くの銀行などを対象に、弁護士会を通じて預貯金債権の有無・残高の照会を行うこともできます(23条照会といいます。)。
このように、最終的には、これらの法的強制性を伴う執行によって、請負代金の回収をすることとなりますので、弁護士による援助は必須といえるでしょう。
なお、強制執行をせずに自力で相手方が保有する資産を持ち出したりした場合、窃盗罪などの犯罪が成立しますから、ご注意ください。
工事代金の支払いには時効がある
工事代金が支払われない場合には、早期に動き始めることが必要です。これは、工事代金の支払いに時効があるためです。
工事代金については、工事代金の支払期限から5年間で消滅時効が完成し、それ以降、工事代金の支払を受けることができなくなります(民法166条1項1号)。工事代金の請求をする場合には、この時効期間のうちに支払を受けるか、訴訟を提起する必要があります。複雑な工事であれば訴訟の準備にも時間を使いますので、5年間の期限はあっという間に過ぎてしまいます。このような期限切れとならないように、早急に動き出しましょう。
時効の進行を止める完成猶予と更新について
ちなみに、上記時効期間内に未払い工事代金の回収まで終えなければならないわけではありません。
例えば、内容証明郵便などで相手方に請求をすると、一度だけですが、時効が完成するのを6か月間止めることができます。また、時効期間経過前に実際に訴訟などの裁判手続を起こせば、裁判が終わるまでの間、時効が完成することを止めることができます(時効の完成猶予)。
また、相手方が未払い工事代金の存在を承認した場合には、時効期間がリセットされて、相手方の承認時点から再び時効期間をカウントすることとなります(時効の更新)。
このように、時効期間が迫っていた場合には、時効の進行を止めるための手段が複数ありますので、諦めることなく、お早めに弁護士にご相談されることをお勧めします。
未払い工事代金を回収する上で知っておくべき注意点
未払い工事代金を回収する上では、知っておくべき注意点もありますから、以下、ご説明します。
契約書が無くても工事代金を回収できる?
多くの工事の実務では、注文書・注文請書のやり取りや、電話・メール等のやり取りのみで工事依頼がなされることでしょう。このような場合に、「契約書を交わしていないから、支払を求めることはできないか……。」と諦めることはありません。
法律上、契約書がなくても、お互いの合意さえあれば、契約は成立します。このため、例えば注文書・注文請書のやり取りや、メール等の文章のやり取りが残っていれば、契約の成立を肯定される可能性があります。ぜひ、契約書がないからといって工事代金の回収を諦めることなく、弁護士にご相談されることをお勧めします。
但し、契約書がなければ、あとで工事内容・工事代金などの問題が起きた際に紛争が激化しますから、現在契約書を交わしていない方がいらっしゃいましたら、早急に契約書を作成なさるべきといえます。
元請業者が特定建設業者の場合、立替払いを受けられる(特定建設業者の立替払い制度)
また、上記の方法でも支払いを受けることのできない可能性が高い事案も多いことでしょう。元請業者に財産がない場合には、いくら勝訴判決を得ても、回収ができません。
そのようなとき、元請業者が特定建設業者である場合には、国土交通大臣又は都道府県知事が当該特定建設業者に対して、立替払いする等の措置を講ずることを勧告することが出来ます(建設業法41条3項)。
この勧告の対象には、工事代金の未払いの他、不法行為による損害賠償請求権も含まれると解され、また、複数の下請け業者が関与している場合には、それら全ての下請け業者が対象となります。あくまで「勧告することが出来る」と行政庁に裁量が委ねられておりますが、弁護士に相談しながら、事案によってはこのような方法も検討されると良いでしょう。
遅延損害金が回収できる
更に、未払いの工事代金には、支払期限日の翌日から実際に支払を受けることができる日までの間、遅延損害金が付加されていきます。この際の遅延損害金は、特に他の合意がない限り、民法404条に則って3%となります。
工事代金は多額にのぼることが多いですから、未払いの被害に遭ってしまった場合には、この遅延損害金まで回収するよう働きかけていきましょう。
未払い工事代金の回収を弁護士に依頼するメリット
さて、このような未払い工事代金の回収を弁護士に依頼することのメリットとしては、強制執行といった最後の手段まで含めて法的手続を検討した上で、戦略を立てながら交渉・訴訟を進めていく、そんなプロフェッショナルの助力を得られることにあるでしょう。
いかに経営者といえども、法律・訴訟についてどのような戦略を選択しながら進めていくかについては、弁護士に委ねるべきです。特に、ご自身で強行的な交渉をお考えの場合には、一度一息ついて冷静になっていただく必要があります。仮に相手方に未払いの原因があり、あなたに非がなかったとしても、回収手段を誤ると、あなたが強要罪・恐喝罪などで立件されるおそれがあります。
また、未払い工事代金についてのお悩みを一人で抱え続けてしまうことは、精神衛生上よくありませんし、経営判断のための決断力を鈍らせる要因にもなります。この点は、弁護士にアウトソーシングすることによってあなたの精神負担を減らすべきといえるでしょう。
ぜひ、未払い工事代金の回収にお悩みの場合には、弁護士にご相談ください。
工事代金未払いに関する解決事例
当事務所では、内容証明郵便による督促及び交渉によって1000万円を超える未払い工事代金全額を回収した解決事例もあります。この事例では、契約書の作成もなかったため、回収が困難と考えられましたが、当事務所の弁護士の尽力によって回収に成功することができました。
詳細は、以下のページをご覧ください。
【155】下請業者が工事依頼を受け、工事を行ったものの、請負代金の支払いを受けられなかったことから、弁護士が同代金を請求した結果、同代金全額の回収に成功した事例
工事代金未払いでよくあるご質問(Q&A)
また、工事代金未払いの事件相談を受ける際には、以下のようなご質問を受けることが多いので、ここで簡単に解説いたします。
Q. 少額の未払金でも弁護士に依頼できますか?
少額の未払金回収であっても、弁護士に依頼することは可能です。
但し、弁護士費用の方が高額になる場合もありますので、まずはご相談・見積もりの提示をご依頼いただければ、実施の裁判等をご依頼されるか、ご判断しやすいでしょう。
Q. 元請けが倒産した場合、施主に直接請求できますか?
元請け業者が倒産した場合、施主への直接請求はできません。
但し、元請け業者が倒産する前であれば、施主への工事代金請求権の債権譲渡を受けるなど、元請け業者との交渉の余地があります。いずれにせよ、元請け業者倒産前に急いで弁護士の助力を得るべきといえるでしょう。
Q. 追加工事分の代金が支払われません。どうすればいいですか?
追加工事分の代金が支払われない場合も、通常の未払い工事代金と同様に、相手方への請求等を行って回収を図るべきです。
この際に、追加工事についての合意があったことを示すLINE・メール等の文面があったり、本工事部分と追加工事部分を区別する写真・図面があったりすると、スムーズに請求しやすくなります。
Q. 工事に不備があるとクレームをつけられ、支払いを拒否されています。
未払工事代金を請求した場合、多くの事例で、工事に不備があるとの反論がなされます。この場合には、あなたの施工に問題がなかったことを示す必要があります。
依頼された工事が完了していることを示す写真等や、引渡し時の確認書など、普段の工事時からあなたの施工に問題がないことを示す証拠を確保しておくことが重要といえます。
まとめ
未払い工事代金の回収について、下請け業者の注意点も含めてご説明しました。未払い工事代金の回収についてお悩みの方は、一度、当事務所までご相談ください。
監修者
弁護士法人グレイス企業法務部
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