企業法務コラム
職場のメンタルヘルス問題について弁護士が解説
更新日:2024/07/30
東京・神戸・福岡・熊本・長崎・鹿児島に拠点がある弁護士法人グレイスの労働法コラムです。
今回のテーマは、職場のメンタルヘルス問題についてです。
1. メンタルヘルスとその弊害
メンタルヘルスという言葉をよく聞きますが、メンタルヘルスとは何でしょうか。
メンタルヘルスとは体の健康ではなく、こころの健康状態を意味します。心が軽い、穏やかな気持ち、やる気が沸いてくるような気持ちの時は、健康な状態といえるでしょう。
メンタルヘルスの不調といっても、種類や症状にも色々ありますよね。
医師で無ければ判断がつきにくいうえ、個々の症状や受け止め方も違うため、慎重な判断が必要となります。一度メンタルヘルスが不調になると、回復に時間を要することも多く、業務効率も悪くなり、休職せざるを得なくなるといった弊害も生じます。
2. メンタルヘルスが不調の従業員への対応について
不調を理由に欠勤を繰り返す従業員には、どのような対応をしたらいいですか。
遅刻や欠勤を繰り返す従業員の対応に困る経営者も多いですが、まずは休職制度を利用することが考えられます。直ちに解雇を考える方もいますが、休職制度を設けている場合には、同制度を利用しないで解雇をすることには注意が必要です。
しかし、医師に診断してもらうことに、心理的な抵抗がある方も多いのではないですか。
そうですね。「大丈夫だ。」と言って、診断を受けない方もいますし、就業規則に、医師の診察を受けさせることができるという規定がある会社と、ない会社では、診察を促し方にも違いが出てきます。
本人が診察を受けないときには、どのような伝え方をしたらいいでしょうか。
客観的な出来事、周りへの影響、起きてしまった事件などを伝えて、本人だけの問題ではないと説得したほうが良いでしょう。
いきなり解雇を告げるのではなく、休職制度を設けている場合には、同制度を利用したほうがいいのでしょうか。
遅刻や欠勤を繰り返す従業員の対応に困る経営者も多いですが、まずは休職制度を利用することが考えられます。解雇を猶予する措置として、雇用契約を維持したまま、一定期間労務の提供を免除する同制度を利用することが望ましいです。
休職した後には、どうしたらいいでしょうか。
休職期間満了までに復職できるかを検討することになります。
3. 会社の義務について
不調が業務上の事由に起因する場合、例えばハラスメントの場合には、別に問題はありますか。
労働契約法では、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」と定められています。会社は、健康診断の結果に基づき、健康を保持するため必要な措置について医師等の意見を聴取する義務があります(労働安全衛生法66条の4)。医師等の意見を勘案して、必要があるときは、就業場所を変更したり、作業を転換したりする等、適切な措置を講じなければなりません(労働安全衛生法66条の5)。会社には、労働者の健康状態を把握して、労働者の健康を保持するための適切な措置をとる義務があります。
業務を続けることが辛いという従業員にはどうしたらいいですか。
悪化が懸念される場面では、従業員からの申し出後速やかに業務から離脱させて、休養させるか、他の業務に配転させるといった方法も、安全配慮義務の一環として考えられます。
不調を抱えた従業員への対応は、前提として、事前に就業規則で定めた休職制度を利用し、慎重に対応する必要があるのですね。
就業規則の改訂は容易ではありません。弊所では、これらの相談にいつでもご対応いたしますので、ぜひ一度ご相談いただければと思います。
監修者
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