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企業法務コラム

退職勧奨

投稿日:2021/11/17
更新日:2023/12/21
退職勧奨

1. 退職勧奨とは

退職勧奨とは、使用者が労働者に対して自発的な退職意思の形成を促すことをいいます。退職勧奨は、その目的が合理性を有し、対象者の選定が公平であり、手段・方法が社会通念上相当と認められる範囲を逸脱しない限り、使用者による正当な業務行為としてこれを広く行うことができます。反対に、退職勧奨の目的に合理性がなかったり、対象者の選定が公平に行われていない場合や、退職勧奨の手段・方法が社会通念上相当と認められる範囲を逸脱し、対象者の自由な退職意思の形成を妨げるような不当な心理的圧力を加えるものである場合には、退職勧奨そのものが不法行為を構成する可能性もあります。

2. 適切な退職勧奨とするために

(1) 退職勧奨を実施する者

適切な退職勧奨とするために

退職勧奨を実施する者は、退職勧奨の理由やその条件等を的確に説明できる者とすることが重要です。退職勧奨にはその目的の合理性が求められることから、これを的確に説明できる者が退職勧奨にあたることが適法な退職勧奨とする前提となります。

また、退職勧奨は自発的な退職意思の形成を促すものですので、対象者の自由な意思形成を阻害しない程度に退職勧奨を実施する者を限定することも肝要です。面接等を行うにあたり、面接官が多数に及べば対象者は萎縮し、自由な意思表明を阻害することを想像すれば分かりやすいでしょう。従って、退職勧奨を実施する者は数名程度にとどめることが望ましいといえます。

他方で、単独で退職勧奨を実施することも避けた方が無難です。退職勧奨は退職の時期や退職条件等、雇用契約を終了させるという重要な効果を伴うものであることから、対象者に対し不正確な内容を伝達したり、誤解を生ぜしめたりすることにより、当事者間における法的紛争に発展するリスクを伴います。そのため、複数人で退職勧奨に臨み、対象者への伝達内容をより正確にすること、「言った、言わない」という無用なトラブルを回避するためにも、単独で行うことは控えるべきです。

(2) 退職勧奨を行う時間及び場所

退職勧奨は雇用契約の終了に向かうための活動であり、その内容が非常にセンシティブなものですので、他の労働者に知られることのないよう、退職勧奨を行う時間や場所に対する配慮が必要です。

まず、時間については、1回につき30分以内に抑えることが重要です。退職勧奨が対象者の意思に反し、執拗に行われることにより、対象者の自由な意思形成を阻害することになるためです。たとえ1回にあてられる時間が短時間であっても、多数回に及べば同じ問題となります。従って、退職勧奨の回数については、数回にとどめることが望ましいです。ただし、対象者との間での協議内容が細部にわたる条件のすり合わせである等、対象者の意思に反するものでないことが明白である場合には、この限りではありません。

他方、場所については、他の従業員が往来する場所やその内容が聴き取られる場所は避け、可能な限り会議室等を使用するべきです。しかしながら、退職勧奨が例えばその日の始業時間後直ちになされると、対象者のその日の就労に影響を与えるだけでなく、広く他の従業員に知られてしまう可能性もあります。そのため、退職勧奨を行う「時間帯」にも一定の配慮が必要です。

これらの配慮はあくまで対象者の自由な意思形成を阻害する退職勧奨となっていないか、対象者の名誉を毀損するものでないかという観点から要請されるものです。イレギュラーな退職勧奨となる場合には、これらの観点からチェックすることが有用です。

(3) 退職勧奨の内容

退職勧奨は条件面だけでなく、どのように対象者に対して説得するのかも非常に重要な問題です。

退職勧奨にあたっては、対象者の人格を否定する言動であったり、感情的な表現を用いることを厳に慎まなければならないのは当然ですが、それ以外にも不適切な条件提示等も避けなければなりません。例えば、「退職していただかなければ懲戒せざるを得ない」というように、「退職勧奨に応じない場合に対象者にとって不利益な選択肢しか残されていない」という条件提示を伴う退職勧奨は、懲戒事由が明確に存在しない限りは、行うべきではありません。なぜなら、対象者の自由な意思決定をもって退職を選択したと評価できないためです。

3. まとめ

問題社員を解雇するための注意点

退職勧奨はそれが適切になされなければ事実上の解雇であると評価される可能性がある点に注意を要します。つまり、仮に使用者による解雇の意思表示がなかったとしても、使用者の言動や退職勧奨の在り方によっては解雇の意思表示があったとされる可能性がある点に留意する必要があります。そして、退職勧奨が事実上の懲戒解雇である場合には、退職勧奨が違法となるだけでなく、解雇事由が認められない無効な解雇とされ、多額にわたる遡及賃金の支払いも余儀なくされる可能性があります。

退職勧奨を検討される場合には、事前に必ず弁護士に相談されることをお勧めします。

監修者

弁護士法人グレイス企業法務部

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