雇止めについて弁護士が解説

1. 有期労働契約の更新拒絶に関する規制

多くの企業では、契約期間に期限が定められた労働契約を締結した従業員(いわゆる非正規労働者や契約社員と呼ばれる従業員、以下「有期労働者」といいます)が存在します。
通常の契約であれば、契約期間が満了すれば、その契約は終了するのが原則です。
しかし、安易に雇止めを認めることは有期労働者の地位を不安定にしてしまいますので、労働契約法では、使用者による契約更新の拒絶を一定の場合に制限しています。
2. 有期労働契約締結から雇止めまでの各手続について
2-1. 有期雇用契約締結時の手続について
使用者は、有期労働契約を締結する際は、契約の更新の有無、契約の更新がある場合には契約の更新をする場合又はしない場合の基準を明示しなければなりません。
2-2. 雇止めの予告について
雇止めを行う場合に、以下のいずれかに該当する場合に雇止めについて事前告知が必要となります。
- 有期労働契約が3回以上更新されている場合
- 1年以下の契約期間の労働契約が更新され、 最初に労働契約を締結してから継続して通算1年を超える場合
- 1年を超える契約期間の労働契約を締結している場合
2-3. 雇止めの理由の提示について
使用者は、従業員から請求があったときには、「更新しないこととする理由」を記載した雇止め理由証明書や「更新しなかった理由」を記載した雇止め理由証明書を交付しなければなりません。
3. 雇止めが認められない場合とは
3-1. 労働契約法上の制限
以上のような手続を踏んでいたとしても、一定の場合には、雇止めそれ自体が禁止されます。雇止めが認められない場合、使用者が労働者からの契約更新の申込みを承諾したものとみなされ、従前と同一の労働契約が成立してしまいます。
特に注意が必要なのは、以下のいずれかに該当する場合です。
- 雇止めが無期労働契約の労働者を解雇すると社会通念上同視できる場合
- 契約更新に合理的な期待がある場合
3-2. 雇止めが無期労働契約の労働者を解雇すると社会通念上同視できる場合とは

雇用の臨時性・常用性、更新の回数、雇用の通算期間、契約期間の管理状況、雇用継続の期待を持たせる言動・制度の有無などを総合考慮して判断します。
無期契約と同視できると判断されたものは、業務内容も無期契約を締結している者と同一で、有期契約の更新が相当期間繰り返されていることに加えて、契約更新手続が形骸化していた事案です。
逆に、約30年にわたって雇用契約が更新されていたものの、契約満了の都度雇用契約を締結しなおすことにより雇用契約を更新してきた事案では、無期契約との同視性が否定されています。
そのため、まずは、業務の差別化と契約更新の手続きを形骸化させないことが雇止めを有効とするためには重要となってきます。
3-3. 契約更新に合理的な期待がある場合とは

同様に、雇用の臨時性・常用性、更新の回数、雇用の通算期間、契約期間管理状況、雇用継続の期待を持たせる言動・制度の有無などを総合考慮して判断されます。
裁判例では、契約の更新回数も多く、その手続きも形骸化しているような事例や契約更新を期待されるような事情が存在する場合に、該当すると判断されることが多いといえます。そのため、契約期間中の言動や契約の更新時の対応が重要となってきます。
なお、更新が1度もなされたことがないような事例では、契約の更新への合理的期待が否定されるのが通常と考えられています。
4. 無期転換について
最後に、会社が雇止めをしなくても、自動的に有期労働契約が無期労働契約に転換してしまう場合があります。
具体的には、有期労働者については、平成25年4月1日以降に開始した有期労働契約の通算契約期間が5年を超えた場合、その契約期間の初日から末日までの間に、契約期間に定めのない労働契約への転換の申込みをすることができます。
例えば、1年間の有期雇用契約を締結し、同契約を5回更新すると、同契約の通算契約が5年を超えるため、当該有期労働者は、5回目の更新後の契約期間中に(すなわち6年目の途中に)、会社に対して無期転換の申込みすることができ、自動的に、無期労働契約が成立します。
そのため、雇止めに対する対策を怠り、雇止めが制限されてしまうと、最終的には、会社が望まない従業員と無期労働契約が成立してしまうことになります。
5. まとめ
以上のように、雇止めにも一定の制限が存在し、雇止めを有効とするためには、労働者の雇入れの段階から更新手続きまで適切な対応が必要となります。また、有期労働契約の更新が積み重なり、その手続も形骸化しているような場合には、雇止めが制限され、最終的に有期労働者から無期転換権を行使される可能性があります。
そのため、有期労働者の管理については、その分野に強い弁護士に相談することが重要となります。
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