企業法務コラム
退職勧奨は会社都合?企業側のメリット・デメリットと合わせて弁護士が解説
更新日:2026/01/20
従業員に対して退職勧奨を検討する際、離職理由の扱いに迷う経営者様は少なくありません。 以下のような不安を抱えてはいないでしょうか。
- ・退職勧奨を行えば必ず会社都合になるのか
- ・会社都合になることのデメリットはないか
- ・自己都合で処理をしても法的に問題ないか
結論からいうと、退職勧奨による退職は原則として会社都合の扱いです。 会社側の働きかけがきっかけとなるため、実態に即した処理が求められるからです。
もし無理に従業員へ自己都合を強いると、パワハラや不当な退職強要と訴えられるリスクが高まります。 企業の将来を守るためには、会社都合のメリットとデメリットを正しく理解し、適切な手続きを踏むことが重要です。
この記事では顧問先企業数750社以上の実績と経験を元に、現場で迷うことのないよう、経営判断に役立つ情報を網羅して、具体的な進め方のポイントを整理しながら解説いたします。
- この記事でわかること
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- 退職勧奨の定義と「合意退職」の仕組み
- 会社都合における企業側のメリット・デメリット
- 退職勧奨を無理に「自己都合」で進めることの重大なリスク
- 法的な紛争を回避するための具体的な面談の手順
退職勧奨による退職は、原則として会社都合扱いとなります。企業側には助成金の受給制限というデメリットがあるものの、早期に紛争リスクを回避し、組織を健全化できる大きなメリットがあります。無理に自己都合での退職を強いる行為は、パワハラや不当解雇と訴えられるリスクを招くため避けるべきです。適切な退職合意書の作成や面談手順を踏むことが、円満な解決を実現する鍵となります。法的なトラブルを防ぎ、経営判断を最適化するため、弁護士法人グレイスへお気軽にご相談ください。初回相談は無料です。
目次
退職勧奨とは?会社都合・自己都合との基本的な関係
企業が従業員に対して「辞めてほしい」と働きかけ、従業員の同意を得て退職してもらうことを退職勧奨と呼びます。
これは解雇とは異なり、あくまで「合意」に基づく契約の解消です。
退職勧奨の定義と「合意退職」の仕組み
退職勧奨は、法律用語では「退職の申し入れに対する誘引」や「解約合意の申し込み」と位置づけられます。
会社側からの働きかけにより、従業員が「退職届」を提出するか、または双方が「退職合意書」に署名することで成立します。
このプロセスにおいて、従業員の自由な意思が尊重されていることが重要です。
もし強制的な手段を用いると、それは退職勧奨ではなく「不当な退職強要」とみなされる可能性があります。
なぜ退職勧奨による退職は原則として「会社都合」になるのか
実務上、退職勧奨に応じた従業員の離職理由は「会社都合」として扱われます。
これは、退職のきっかけを作ったのが会社側にあるからです。
雇用保険法上の「特定受給資格者」としての扱い
ハローワークでは、退職勧奨によって辞めた人を「特定受給資格者」として分類します。
これは、倒産や解雇など、自分の意思とは関係なく職を失った人と同じ扱いです。
雇用保険法に基づき、一般の離職者よりも早く、かつ長く失業保険(基本手当)を受給できる仕組みになっています。
従業員にとって「会社都合」は、再就職までの経済的な不安を軽減する大きなメリットです。
解雇(一方的な通告)と退職勧奨(合意の形成)の決定的な違い
「解雇」は、会社が一方的に雇用契約を終了させる行為です。
これには「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が必要であり、非常に高いハードルがあります。
一方、退職勧奨は「話し合い」による解決です。
双方が条件に納得して合意すれば、解雇に伴う法的リスクを大幅に下げることができます。
企業が「会社都合」で退職勧奨を進めるメリット・デメリット
会社側が「会社都合」として手続きを進めることには、一見すると不利に思える点もあります。
しかし、大局的な視点でもつべき判断軸があります。
【メリット】円満退社と紛争リスクの最小化
最大のメリットは、将来的な訴訟やトラブルの芽を摘めることです。
早期解決による人件費・管理コストの削減
問題のある社員を雇い続けることは、給与だけでなく、周囲の生産性低下という見えないコストを発生させます。
会社都合を認めることで早期の合意が得られれば、これらのコストを最短でカットできます。
また、何度も面談を繰り返す人事担当者の労力も削減できるでしょう。
労働審判や訴訟に発展するリスクの遮断
無理に「自己都合」を強いると、従業員は外部の労働組合(ユニオン)や弁護士に相談しがちです。
そうなれば、労働審判や訴訟に発展し、多額の解決金や弁護士費用が発生します。
最初から会社都合を提示して誠実に交渉することで、そうした紛争コストを回避できるのです。
【デメリット】助成金の受給制限と社会的評価への影響
一方で、会社側が最も恐れるのが金銭的なデメリットでしょう。
雇用関係の助成金(キャリアアップ助成金等)が受給できなくなるリスク
雇用保険法に基づく助成金の多くは、「解雇等(退職勧奨を含む)」の離職者を出さないことが受給の要件です。
たとえば、キャリアアップ助成金や雇用調整助成金などを受けている場合、会社都合の退職者を出すと一定期間、助成金の受給ができなくなります。
受給額が高額である場合、この影響は無視できません。
特定技能外国人の雇用維持(受け入れ制限)への影響
最近増えている特定技能外国人の雇用においても、会社都合の離職者はハードルになります。
過去1年間に会社都合の離職者を出している企業は、特定技能外国人の受け入れが制限されることがあるからです。
事業計画に外国人の活用が含まれている場合は、慎重な判断が求められます。
退職勧奨を無理に「自己都合」で進めることの重大なリスク
助成金を守るために、従業員に「自己都合での退職届」を強要するケースが見られます。
しかし、これは会社にとって極めて危険な行為です。
従業員から「不当な退職強要」と訴えられる危険性
強引な進め方は、法的に大きな瑕疵(かし)となります。
退職届が無効になるケース(脅迫・錯誤・公序良俗違反)
「自己都合で辞めないと、懲戒解雇にするぞ」と脅して書かせた退職届は、後から取り消される可能性が高いです。
また、従業員が「自己都合と会社都合の違い」を正しく理解していない状態で書かせた場合も、錯誤(勘違い)として無効を主張されることがあります。
一度出した退職届が無効になれば、その間の賃金(バックペイ)を支払わなければなりません。
慰謝料請求や損害賠償に発展する「パワハラ」認定のリスク
個室で長時間にわたり、複数人で囲んで辞めるよう迫る行為は、典型的なパワーハラスメントです。
精神的に追い詰められた従業員がうつ病などを発症した場合、多額の損害賠償を請求される恐れがあります。
企業のブランドイメージも失墜し、SNS等で拡散されるリスクも伴います。
離職理由の齟齬によるハローワークからの調査
会社が「自己都合」と届け出ても、従業員がハローワークで「本当は退職勧奨だった」と主張すれば調査が入ります。
会社側と従業員側の主張が食い違った場合の認定プロセス
ハローワークは、会社側に事情聴取を行ったり、面談の記録などの提出を求めたりします。客観的な証拠から退職勧奨であったと判断された場合、離職理由は「会社都合」に書き換えられます。
法的トラブルを防ぐための「正しい退職勧奨」の実務ステップ
トラブルを回避し、円満な合意を得るためには、正しい手順を踏むことが不可欠です。
1. 事前準備:客観的な資料の収集と証拠の確保
「なぜ退職を求めているのか」を説明するための客観的な証拠を揃えてください。
成績不良であれば査定書、勤怠不良であればタイムカードや指導記録などです。
これらの資料は、万が一裁判になった際の「退職勧奨の正当性」を証明する重要な武器になります。
何も準備せずに「とにかく辞めてくれ」というのは、無謀な攻め方です。
2. 面談の実施:場所・時間・回数・言動の注意点
面談は、落ち着いて話せる会議室などで行います。
1回の面談時間は30分から1時間程度にとどめ、執拗な繰り返しは避けましょう。
パワハラと言われないための「NGワード」と具体的な話し方
以下のような言葉は、パワハラ認定されるリスクが極めて高いです。
- 「明日から来なくていい」
- 「どこへ行っても通用しないぞ」
- 「辞めないならクビにする」
代わりに、「会社としては、あなたの今後の活躍の場は他にあると考えている」「新しい一歩を支援したい」といった、前向きかつ丁寧な言葉選びを心がけてください。
3. 退職合意書の作成:紛争の蒸し返しを防止する必須条項
口頭での合意は、後で「言った言わない」のトラブルになります。
必ず、以下の内容を盛り込んだ「退職合意書」を作成してください。
清算条項と口外禁止条項、誹謗中傷禁止条項の重要性
- ・退職日と退職理由(会社都合か自己都合か)
- ・退職金や解決金の金額と支払日
- ・清算条項(今後、お互いに金銭請求などを一切行わないという約束)
- ・口外禁止(退職の経緯や条件を他人に話さない)
- ・誹謗中傷の禁止(SNS等への書き込み禁止)
特に清算条項は、将来の訴訟リスクを封じ込めるために最も重要な条文です。
4. 離職票の適切な記載と行政手続きの注意点
合意書の内容に沿って、離職票を作成します。
「重責解雇」など事実と異なる厳しい理由を書くと、従業員が反発してトラブルが再燃します。「事業主からの働きかけによる離職」など、実態に即した項目を選択しましょう。
【よくあるご質問】企業担当者が知っておくべきQ&A
現場でよく聞かれる質問に、弁護士の視点でお答えします。
従業員から「会社都合にしてほしい」と条件交渉されたらどうすべき?
基本的には、会社都合を認める方向で検討すべきでしょう。
それだけで従業員が納得してスムーズに辞めてくれるのであれば、会社にとって最も低コストな解決策になることが多いからです。ただし、助成金への影響がある場合は、前述のように解決金とのバーター(引き換え)交渉を行うのが実務的な落とし所です。
試用期間中の社員に対する退職勧奨でも会社都合になる?
はい、試用期間中であっても会社から退職を勧めた場合は、原則として会社都合になります。
「試用期間だから簡単に辞めさせられる」という勘違いは禁物です。本採用を拒否(解雇)するよりも、話し合いによる退職勧奨のほうがリスクは低いですが、手続きの丁寧さは正規社員と変わりません。
会社都合退職にすると、転職先への調査で不利になると説明してもよい?
おすすめしません。
「会社都合だと再就職に不利だよ」という説明は、ハローワークから「従業員を騙して自己都合に誘導した」と判断されるリスクがあります。不正確な情報を与えて誘導することは、後々の火種になるだけです。
退職勧奨に応じない場合、そのまま解雇に踏み切っても問題ない?
非常に高いリスクを伴います。
退職勧奨に応じないからといって、すぐに解雇ができるわけではありません。解雇が有効と認められるには、退職勧奨よりもはるかに厳しい条件が必要です。まずは弁護士に相談し、解雇が認められる見込みがあるのか、あるいは条件を上積みして再度交渉すべきなのかを判断してください。
まとめ:リスクのない組織運営のために弁護士へ相談を
退職勧奨は、企業の新陳代謝を図り、健全な組織を維持するために必要な手段です。
しかし、その進め方を一歩間違えると、会社に多大な損害を与える「毒」にもなりかねません。
会社都合と自己都合のどちらを選ぶべきか、どのように話し合いを進めるべきかは、個別の事案ごとに正解が異なります。
弁護士法人グレイスは、750社を超える企業様と顧問契約締結を行い、企業法務のプロフェッショナルとして、多くの経営者様の悩みを解決してきました。
私たちは、単なる法律の知識を提供するだけでなく、現場で使える「交渉の技術」をもっています。
これまでの膨大な事例から、貴社の状況において最もリスクが低く、かつコストを抑えられる解決策を提示できます。
労働問題はスピードが命です。
「この社員にどう切り出せばいいのか」「助成金が止まると困るのだが」といった初期の不安こそ、専門家に預けてください。
初回相談は無料です。
まずは、現在の状況をお聞かせいただき、最適な退職勧奨のロードマップを一緒に描いていきましょう。
監修者
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