
企業法務コラム
相続関連の法改正のご紹介
法改正
弁護士:桝井知子
昨今、相続に関連する法改正が多数行われておりますが、その中から、来年(2024年)に施行される2つの改正をご紹介します。
1相続登記申請の義務化
相続登記の義務化は、前号で柏木弁護士がご紹介しました「所有者不明土地の解消」を目的とした新たなルールの一つです。
所有者不明土地とは、①不動産登記簿により所有者が直ちに判明しない土地、②所有者が判明しても、その所在が不明で連絡がつかない土地のいずれかの状態にある土地のことをいいます。所有者不明土地については、土地の利活用の阻害要因となるなど、様々な問題が指摘されていますが、全国のうち、所有者不明土地が占める割合は九州本島の面積に匹敵するともいわれており、その解決が喫緊の課題とされております。
この問題の解決策の一つとして「相続登記の申請の義務化」が2024年4月1日にスタートし、相続によって不動産を取得した相続人は、その所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をすることが義務付けられます(なお、遺産分割が成立した場合は、遺産分割が成立した日から3年以内に登記申請することが必要とされます)。
正当な理由なく、この義務に違反した場合には、10万円以下の過料の対象になりますので、不動産を相続した場合には、相続登記をしないまま漫然と放置することのないように留意する必要があります。
2生前贈与加算の対象期間延長
「生前贈与加算」とは、相続税の計算にあたり、相続人が被相続人から生前贈与によって取得した財産の価額を課税価格に加算することをいいます。
現行法においては、生前贈与加算の対象となるのは相続開始前「3年」以内の贈与に限定されておりますが、2023年度税制改正大綱によって、2024年1月1日以降になされる贈与については、生前贈与加算の対象期間が、相続開始前「7年」にまで延長されることが発表されました。
この改正によって、生前贈与による相続税の節税効果が激減するなどと言われております。
相続税の節税の基本は「相続財産を減らすこと」であり、そのため、節税対策として生前贈与が広く利用されているわけですが、この税制改正によって、相続開始前7年以内になされた贈与(暦年課税による贈与)については、原則として、相続税の節税効果を生まないことになるためです。
税法分野の改正に関するトピックですが、社会的な影響が大きいと思われましたので、ご紹介いたしました。
このコラムの著者

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