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運送業・物流業界の2024年問題の対応方法を弁護士がわかりやすく解説

投稿日:
更新日:2024/09/18

運送業の2024年問題とは

 運送業の2024年問題を聞いたことのある方は多いのではないでしょうか?

 運送業の2024年問題とは、2024年4月1日以降、運送業界に対して時間外労働の上限規制が課されることによって生じる諸問題のことをいいます。

 長時間労働の是正や多様な働き方の実現を目指して2019年から「働き方改革関連法」が順次施行されており、「残業時間の上限規制」もこの「働き方改革関連法」の一内容として既に施行されています。

 運送業者としては、従業員の働き方を変えたり、労働時間を調整したりするなど、抜本的な改革が必要となります。以下では、運送業の2024年問題について解説した上で、この問題への対策についてご案内いたします。

2024年問題(働き方改革関連法)のポイントと運送業に与える影響

 時間外労働時間の上限が厳しく規制されることに、運送業の2024年問題のポイントがあります。

 2024年4月1日になるまでの間であれば、運送業者は、いわゆる36協定(さぶろく協定)を労働者代表と結ぶことで、ある程度いくらでも従業員に時間外労働をさせることが可能でした。これは、時間外労働(いわゆる残業)がある程度無制限に許されていたためです。2024年4月からは、時間外労働の時間について、原則として月45時間以内、年360時間以内との上限規制がなされます。なお、やむを得ない事情によって労働者と事業所が合意した場合、年960時間まで時間外労働時間をあげることができます。

 建設業界等の他の業界と比べると、時間外労働時間の規制は比較的緩やかではありますが、これまでの労働環境を維持することはできなくなることに変わりありません。やはり、建設業界等と同様に、時間外労働時間の上限規制によって従業員の所得低下、人手不足の深刻化、納期の遅滞……等々、種々の問題が生じることとなります。

 この規制に違反すると、6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。このため、これまでの労務管理・労働環境を維持して違法状態を継続するべきではありません。

 なお、2023年4月1日には、時間外労働割増賃金(いわゆる残業代)のうち、1か月の残業時間が60時間を超えた場合には割増率が25%から50%へ上げられました。この点も、運送業界全体へ大きな影響を及ぼしています。

運送業界の現状と課題

 しかしながら、以下のような問題により、運送業界においては、2024年問題に対応できないままの会社が多いです。これは、運送業界が抱える以下のような問題によります。

1.人手(ドライバー)不足

 そもそも最近は、運送業界全体で、ドライバーが不足しているといわれます。長時間労働など、労働環境が過酷であることが原因とも指摘されますが、まさにこの点についての働き方改革をするための人員が不足しているのです。

 このため、一人ひとりのドライバーの負担・業務量が増えてしまい、労働時間を短くしていては納期どおりの配達・配送ができなくなってしまいます。このため、ドライバーの労働時間の長期化を招いてしまっています。

2.ガソリン代等のコスト増

 また、ガソリン代等のコストが増えたことにより、運送業者が利益をあげにくくなっているという問題もあります。このため、運送業者としては、人件費という大きなコストを削減することを企業の利益向上のための第一次的指針としてしまいがちです。これでは本末転倒で、労働者の労働意欲が削がれてしまい、労働効率が落ち、より利益が下がってしまいます。

 追加の残業代を支払うことなく一人当たりの労働時間を伸ばすことで経費削減を行ってしまいますと、当然違法となります。しかしながら、これによって多くのコストを抑えることができてしまうため、2024年問題に対応した労務管理をする動機付けがなくなってしまいます。

3.労務管理が緩やかであった業態

 運送業界は、長期間労働が常態化しがちな業態であって、労務管理が緩い業界でありました。このような業界の慣例を踏まえて働き方改革関連法の適用が先送りにされてきたという背景があります。

 長距離ドライバーであれば、ある程度高額の給与が支払われることで長時間の労働に関する不満も出にくい環境であったといえます。しかしながら、一般の宅配ドライバーなどの間では既に労働環境に対する不満は噴出し始めており、たびたびその実態が報道されるなどしています。

 このような業界の慣例を克服して長時間労働の実態を解消していくためには、大変な労力を要してしまうというのが現状なのでしょう。

運送業の2024年問題の具体的な対策方法

 それでは、運送業の2024年問題には、どのような対策をとれば良いのでしょうか。この点についてもご説明いたします。

1.労務管理の徹底

 まずは、労務管理を徹底しなければなりません。労働時間管理のシステムを導入して労働時間を把握・管理し、会社として労働環境を理解するようにしましょう。デジタルタコグラフ(デジタコ)を利用して労働時間・休憩時間を分単位で把握していくこともできます。

 また、配送先と会社との移動時間や、朝礼等、法律上労働時間とみられる可能性の大きい時間は、法律上労働時間と見られますから、注意が必要です。残業代が問題となる労働審判・民事訴訟においては、これらの本来は労働時間とみられる時間について経営者の認識が甘いことから、多額の未払残業代が発生することもよくあります。

2.労働環境の改善

 加えて、労働環境を改善し、従業員のパフォーマンス・効率を上げていきましょう。従業員に時間外労働を長時間行わせることができない以上は、短時間で効率のよい業務をしてもらうことが重要となります。これによって、納期管理を適切に行うことができれば、結果として個々人に無理な労働をさせる必要がなくなります。

 個々の従業員の労働時間を短くするためには、シフト制の組み方を変えたり、休憩時間を適切に確保したりすることが肝要です。

 また、勤務間インターバル制度を導入することも、労働環境改善のためには役立ちます。勤務間インターバル制度とは、勤務終了時間から翌日の始業時間までの間に一定程度の時間を空ける制度です。これにより、どうしても長時間労働となりがちなドライバーの休息が確保され、労働効率をあげることも期待できます。

運送業の2024年問題に弁護士ができる法的対応

 運送業の2024年問題については、以上のとおりご説明いたしました。これらの対応策をとる際には、会社の実態に合わせて個別の検討が必要です。是非弁護士にご相談の上、適切な法的助言を受けてください。弁護士であれば、以下のようなご助言をすることができます。

1.具体的なアドバイスの提供

 運送業の2024年問題について、インターネットで調べても分かりにくい、専門用語ばかりで何が書いてあるか理解できないという方も多くいらっしゃるはずです。もしそのような点でお困りでしたら、弁護士にご相談をいただき、2024年問題全般についてレクチャーを受けていただきたいです。

 また、普段から運送業界からのご相談を受けている弁護士であれば、会社の個別具体的な特徴を踏まえながら、どのような対応をとることができるかアドバイスすることができます。ぜひ、お困りの際にはご相談ください。

2.労働時間管理についてのアドバイスの提供

 また、弁護士であれば、労働時間管理の方法についても、会社の実態に合うアドバイスもできます。例えば、ドライバーの労働時間管理が難しいのであれば、タコグラフの活用や、アプリによる労働時間管理を提案したりできます。また、忙しさに繁閑の差がある場合には、変形時間労働制の導入を提案して労働時間設定から改めて検討するなどのアドバイスがありえます。

3.労働紛争・労働者とのトラブルの解決

 但し、2024年問題は時間外労働に困る労働者を助ける趣旨の制度です。このため、最終的には未払残業代請求などの労働者とのトラブルに繋がることが想定されます。このようなトラブルが起きた場合には、ご自身のみの判断で対応せずに、早期に弁護士にご相談をしてください。

 弁護士であれば、法律に関する確かな知識・理解をもとに、労働者とのトラブルを解決に導くことが期待できます。また、労働者が労働基準監督署に通報した場合、労働基準監督署からの指導への対応策も、弁護士であれば熟知しています。

まとめ

 運送業の2024年問題に関して、現状における課題・対応策についてご説明しました。ぜひ、運送業者の方はお早めに弁護士にご相談をいただき、適切に、2024年問題への対応を取ることをお勧めいたします。また、普段から弁護士に相談をできるように、顧問弁護士を付けるべき時代といえます。

 2024年問題にお困りの場合には、ぜひ、当事務所までご相談ください。

【著者情報】

企業法務部 部長 福岡県弁護士会(弁護士登録番号:33334)

九州大学大学院法学研究科修士課程 修了

米国Vanderbilt Universityロースクール(LLMコース) 卒業

三菱商事株式会社、シティユーワ法律事務所を経て、現在弁護士法人グレイスにて勤務

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監修者

弁護士法人グレイス企業法務部

本店所在地
〒105-0012 東京都港区芝大門1丁目1-35 サンセルモ大門ビル4階
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