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建設業の2024年問題のポイントと対策方法を弁護士が解説

投稿日:
更新日:2024/08/19

建設業の2024年問題とは

 建設業の2024年問題を聞いたことのある方は多いのではないでしょうか?

 建設業の2024年問題とは、2024年4月1日以降、建設業界に適用される残業時間規制などが厳しくなる問題を指します。これによって、建設業界にも働き方改革の波が訪れることとなります。

 建設業者としては、従業員の働き方を変えたり、労働時間を調整したりするなど、抜本的な改革が必要となります。しかしながら、2024年4月1日以降も、特に対応をとらずに事業を継続している建設業者が多いのが実情でしょう。そのまま何らの対応もとらないと、従業員から多額の未払残業代を請求されたり、場合によっては刑事罰が科されたりすることとなり得ます。

 以下では、建設業の2024年問題について解説した上で、この問題への対策についてご案内します。

建設業の2024年問題(働き方改革関連法)のポイント

 建設業の2024年問題のポイントは、時間外労働の上限規制が厳しくなることにあります。

 2024年3月末までは、建設業者は、いわゆる36協定(さぶろく協定)を労働者代表と結んでいれば、時間外労働(いわゆる残業)の時間に制限が全くなかったため、ある程度いくらでも従業員を働かせることが可能でした。2024年4月1日からは、この点に時間外労働時間の上限規制がなされます。時間外労働時間の上限は、原則として月45時間以内、年360時間以内となります。

 この点については、やむを得ない事情で労働者と事業所が合意したときには、年720時間まで時間外労働が可能となりますが、月45時間を超えて労働させることができるのは年6回までとなります。また、この場合、休日に労働をさせる場合には、時間外労働と休日労働について、1か月当たりの時間外労働と休日労働の合計が80時間以内となる必要があるなど、更に異なる時間規制がなされる点にも注意が必要です。

 これらの規制に違反すると、6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金が科せられる可能性がありますので、これらの規制を守らずに安易にこれまでの労務管理・労働環境を維持することはお勧めできません。

 なお、2023年4月1日には、時間外労働割増賃金(いわゆる残業代)のうち、1か月の残業時間が60時間を超えた場合には割増率が25%から50%へ上げられました。この点も、中小企業を中心に、建設業界全体へ大きな影響を及ぼしています。

建設業界の現状と課題

 しかしながら、現状、なかなか働き方改革を実施して2024年問題に対応できていない建設業者が多いです。これは、建設業界が抱える以下のような問題によります。

1.現場作業員・職人不足

 そもそも近時は、建設業界全体で、現場作業員・職人が不足していると言われます。これは、建設業界に身を置く方であれば、肌で感じていらっしゃるのではないでしょうか。

 これは、若い職人のなり手が減少することや、職人を辞める方が増えたことによる影響で、建設業界の高齢化問題と呼ばれます。このような現状では、一人ひとりの職人の負担が増えてしまい、労働時間を短くしていては工期どおりに施工することができなくなってしまいます。工期を守ることができなければ、多大なコスト増となりますから、建設業者としても困ってしまうでしょう。

このため、働き方改革をしにくくなります。

2.原材料等のコスト増

 また、物価高などの影響により、原材料や交通費(ガソリン代など)が増えたことにより、建設業者の利益が得にくくなっている点も問題として挙げられます。最近は、元請業者がコストを下げるために、交通費を一部支払うだけであったり、場合によっては交通費を全部下請業者が負担することになったりすることも多いようですので、このページをお読みの方の中にも、同様の経験がある方がいらっしゃるのではないでしょうか。

 これにより、建設業者としてもできるだけコストを削ることを余儀なくされます。最も大きなコストは人件費ですから、追加の残業代を支払うことなく一人当たりの労働時間を伸ばすことで経費削減を行おうとする方も多いはずです。このため、働き方改革を導入する意欲が削られてしまいます。

3.労務管理が厳しくはなかった業界

 建設業界は、元々労働時間などの労務管理が緩い業界とも言われます。現場作業が多いことも理由ではありますが、例えば、タイムカードを導入して労働時間管理をしている建設業者はほとんどありません。また、現場と会社との移動時間を労働時間外として扱っている建設業者は多いですが、この時間は法的には労働時間と扱われる可能性があります。皆さんの会社においては、労働時間をどのように管理しているでしょうか。

 このような建設業界独自の特徴も、働き方改革を導入しにくくしている理由といえるでしょう。

建設業の2024年問題の具体的な対策方法

 それでは、建設業の2024年問題には、どのような対策をとれば良いのでしょうか。この点についてもご説明いたします。

1.労務管理の徹底

 まずは、労務管理、特に労働時間の管理を徹底することが必須です。タイムカードなど、労働時間管理のシステムを導入し、会社としても労働時間を把握・管理することが必要となります。

 また、現場と会社との移動時間や、朝礼等、法律上労働時間とみられる可能性の大きい時間は、労働時間であると割り切ることも必要でしょう。この点について甘い考えを持ったまま労働環境を維持していると、多額の未払残業代が発生し、のちに一括請求を受ける危険が生じます。

2.労働環境の改善

 更に、労働環境の改善を図り、従業員のパフォーマンス・効率を上げることも有用です。個々の従業員に長時間労働をさせることができなくなりますので、短時間で効率のよい働き方をできるようにすることで、工期管理・コスト削減に役立つことが期待できます。

 このためには、休憩時間を明確化して確保することや、福利厚生としてなにがしかの従業員向けサービスを提供すると良いでしょう。単純に、物価高対策として時給を上げてしまうこともあり得る選択といえます。

3.外国人労働者の活用

 既に外国人労働者を登用している建設業者は多いですが、やはり職人不足・人員不足を補う意味では、外国人労働者の活用は非常に役立ちます。外国人労働者は、適切に指導を行えば充分なパフォーマンスを発揮することが期待できますから、個々の従業員の労働時間の長期化を避けるためにも、活用すると良いでしょう。

建設業の2024年問題に弁護士ができる法的対応

  さて、以上のとおり、2024年問題へ対策をお示ししました。しかしながら、これらの対策をとることが難しかったり、そもそも間違った対応を取るのではないかと不安だったりすることもあるかもしれません。そのような場合には、是非弁護士にご相談をしてください。弁護士であれば、以下のような法的対応・ご助言をすることができます。

1.具体的なアドバイスの提供

 

 そもそも建設業の2024年問題について、いくら調べてもよく分からない、難しい言葉ばかりで困ってしまうという方も多いはずです。このような場合には、弁護士にご相談をいただき、一から建設業の2024年問題についてレクチャーを受けるべきといえます。

 顧問業に慣れた弁護士であれば、そのまま会社の実態を踏まえた上で、具体的にどのような対応をとるべきか、助言することができます。早期のご相談をお勧めいたします。

2.労働時間管理についてのアドバイスの提供

 

また、弁護士であれば、労働時間管理の方法についても、会社の実態に合うアドバイスもできます。例えば、職人が現場に直行してしまってタイムカード管理が難しい場合には、アプリによる労働時間管理を提案したり、ある程度忙しい時期と忙しくない時期がある業種であれば変形時間労働制の導入を提案して労働時間設定の仕方から提案したりするなど、様々なご助言があり得るでしょう。

3.労働紛争・労働者とのトラブルの解決

 

とはいえ、建設業の2024年問題は労働者の権利を強化して保護する制度改革ですから、残業代請求など、労働者とのトラブルを完全に避けることはできません。このようなトラブルが起きてしまった際には、不用意にご自身で対応することなく、すぐさま弁護士に相談するべきといえます。

弁護士であれば、法律に関する確かな知識・理解をもとに、労働者とのトラブルを解決に導くことが期待できます。また、労働者が労働基準監督署に通報した場合、労働基準監督署からの指導への対応策も、弁護士であれば熟知しています。

まとめ

 

建設業の2024年問題について、そのポイントと課題、そして対応策についてご説明しました。ぜひ、建設業者の方はお早めに弁護士にご相談をいただき、適切に、2024年問題への対応を取ることをお勧めいたします。また、平時から弁護士に相談をできるように、顧問弁護士を付けるべき時代といえます。

労働問題や2024年問題にお困り・お悩みの場合には、早期に弁護士にご相談ください。

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【著者情報】

企業法務部 部長 福岡県弁護士会(弁護士登録番号:33334)

九州大学大学院法学研究科修士課程 修了

米国Vanderbilt Universityロースクール(LLMコース) 卒業

三菱商事株式会社、シティユーワ法律事務所を経て、現在弁護士法人グレイスにて勤務

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監修者

弁護士法人グレイス企業法務部

本店所在地
〒105-0012 東京都港区芝大門1丁目1-35 サンセルモ大門ビル4階
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