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高年齢者継続雇用制度について弁護士が解説

投稿日:
更新日:2022/07/12
高年齢者継続雇用制度について弁護士が解説

現在、日本では少子高齢化が急速に進んでおり、これに伴い労働力人口も減少しています。また、平成29年3月28年に出された「働き方改革実行計画」では、「高齢者の就業促進」という項目が設けられ、政府としても高年齢者の雇用を促進するという意図があることは明らかです。

さらに、政府は、高齢者が希望すれば原則70歳まで働けるよう環境整備を始め、現在は原則65歳まで働けるよう企業に義務付けているものをさらに年齢引き上げの検討に入っているということです。

そのため、今後高年齢者の雇用が増加し、これにまつわる紛争も増加することが予想されます。そこで、高年齢者に関する規制をご紹介したいと思います。

1. 高齢者に関する規制

1-1. 定年に関する制限

定年に関する制限

まず、雇用契約について、定年を定める場合には60歳を下回ることができません

高齢者等の雇用の安定等に関する法律(以下「高年法」といいます。)8条に反し、60歳を下回る年齢を定年として定めた場合には、その規定は無効となります。

1-2. 65歳までの高年齢者雇用確保措置義務の存在

高年法では、高年齢者の65歳までの雇用を確保するため、

  • ① 定年の引上げ
  • ② 継続雇用制度
  • ③ 定年の定めの廃止

いずれかを採用することが義務づけられています。そして、継続雇用制度を採用する場合は、原則として、希望者全員を継続雇用しなければなりません。

厚労省の平成29年就労条件総合調査によれば、約7割の企業が継続雇用制度として一度雇用契約が終了し、その後希望者のみ定年後も雇用する再雇用制度を採用しています。

①定年の引上げを採用した場合、原則として新たな定年まで雇用を継続しなければならず、人件費が大幅に増大します。①定年の引上げ及び③定年の廃止は、解雇が容易ではないこと及び人件費の調整等の柔軟な経営施策が困難となるというデメリットが存在します。他方、②継続雇用制度は、①及び③と比較して人件費の調整の余地があるため、②継続雇用制度が多く採用されていると考えられます。

2. 継続雇用制度とは

2-1. 制度の目的及び種類

制度の目的及び種類

継続雇用制度は、年金支給開始年齢である65歳までの安定した雇用機会の確保を目的とされています。

継続雇用制度には、定年に達した者を退職させないまま雇用を継続する「勤務延長制度」といったん退職させたうえで再度雇用する「再雇用制度」が存在します。

両制度の違いは、後者の場合、勤務を延長一旦雇用契約が終了するため、退職金規定により退職金が支払われることになります。また、労働条件については、勤務延長制度は従前のままとなり、再雇用制度では変更されるのが一般的です。そのため、継続雇用制度として再雇用制度を採用している企業が多いというのが現状です。

2-2. 対象者の選別について

対象者の選別について

高年齢者の雇用確保が義務とされていることから、60歳に達した時点での選定基準を設けて継続雇用の対象者を限定する制度は、同法上認められません

ただし、心身の故障のため業務に堪えられないと認められること、勤務状況が著しく不良で引き続き従業員としての職務を果たし得ないこと等、就業規則に定める解雇事由又は退職事由に該当する場合で、かつ、継続雇用しないことについて、客観的に合理的理由があり、社会通念上相当である場合には、継続雇用を拒否できます

なお、平成25年3月31日までに継続雇用制度の対象者を限定する基準を労使協定により定めた場合には、経過措置により、老齢厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢以上の者のみを対象としてその適用が認められますが、多くの会社はこの制度を導入していないと思われますし、現時点からこの制度を新規に導入することもできません。

2-3. 労働条件について

労働条件について

労働条件については、労働時間、賃金及びその他の待遇などに関して、会社と労働者の間で決めることができます

しかし、高年法の高齢者の安定した雇用を確保するという趣旨を踏まえれば、労働条件は使用者の自由ではなく合理的な裁量の範囲である必要があります。

定年後の継続雇用としてどのような労働条件を提示するかについては、一定の裁量があるとしても、提示した労働条件が、無年金・無収入の期間の発生を防ぐという趣旨に照らして到底容認できないような低額の給与水準であったり、社会通念に照らして当該労働者にとって到底受け入れがたいような職務内容を提示するなど実質的に継続雇用の機会を与えたとは認められない条件の提示は許されないと判断された裁判例も存在します。

定年前と全く同じ就業形態・労働時間であるにもかかわらず、賃金のベースを大きく引き下げたり、手当のほとんどを廃止するような取り扱いは、認められないと考えられます。

また、契約期間を1年として契約を更新する形態にしたとしても、同法の趣旨から考えて、65歳までは原則として契約が更新されることが必要となると考えられます。そのため、再雇用後の毎年の更新基準については、年齢のみを理由とすることは許されないと考えられます。

3. まとめ

以上のように、定年後の再雇用については留意すべき点が多数存在します。そのため、定年後の再雇用について知識が豊富な弁護士に相談のうえ、進めていくことが重要となります。当事務所では、企業法務に強い弁護士が在籍していますので、まずは気軽にご相談いただければと思います。

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【著者情報】

企業法務部 部長 福岡県弁護士会(弁護士登録番号:33334)

九州大学大学院法学研究科修士課程 修了

米国Vanderbilt Universityロースクール(LLMコース) 卒業

三菱商事株式会社、シティユーワ法律事務所を経て、現在弁護士法人グレイスにて勤務

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監修者

弁護士法人グレイス企業法務部

本店所在地
〒105-0012 東京都港区芝大門1丁目1-35 サンセルモ大門ビル4階
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