企業法務コラム
就業規則変更の手続きと有効性

1. 就業規則変更のために必要となる手続と書式

ご承知のとおり、常時10人以上の労働者を使用する事業所は、就業規則を作成し、労働基準監督署に届け出る必要があります(労働基準法第89条)。
就業規則を変更するためには、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければなりません(労働基準法第90条1項)。
また、変更後の就業規則を届け出る際には、労働組合又は労働者の過半数を代表する者の意見書を記した書面を添付する必要があります。
上記の変更届及び意見書は書式が東京労働局HP (https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/hourei_youshikishu/youshikishu_zenkoku.html )で公表されておりますので、参考にされてください。
2. 就業規則を変更する時に気を付けるポイント
新たな就業規則の変更によって、労働者から既に発生している権利を奪い、不利益な労働条件を一方的に課すること(いわゆる「不利益変更」)は原則として許されません。
就業規則の不利益変更が有効と判断されるためには①変更により生じる不利益の程度②労働条件の変更の必要性③変更後の就業規則の内容の相当性④労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであること、が必要となります(労働契約法第10条)。
このように就業規則の不利益変更が有効となるためには、様々な要素を総合考慮する必要があり、最終的には事案ごとの判断となりますが、1つ裁判例をご紹介致します。
野村不動産アーバンネット事件(東京地裁令和2年2月27日)では、期間の定めのない従業員に対し、従前支給されていた営業成績給を廃止することが就業規則の不利益変更として有効か、問題となりました。
裁判所は当該従業員に支給される賃金として10%以上の減給となることを指摘し、当該従業員に生じる不利益は小さくないとしながらも、従来複数の雇用形態が存在し、人事制度の統一の観点から新たな人事制度を導入する必要性を求め、また、人事制度の導入におり、今後の昇進等により、当該従業員により生じる不利益は減少ないし消滅するものである上、複数の担当者により人事評価を行うことで評価制度の恣意的運用を避ける配慮もされていること等を指摘し、当該就業規則の変更を有効と判断しました。
他の裁判例とも共通する要素としては、就業規則の変更にあたり①人事制度の統一など、変更に合理的な必要性が認められること②変更により生じる不利益が一時的であって、昇進等により、当該不利益が減少ないし消滅する可能性が残されていること③昇進等の人事評価が恣意的な運用とならないよう制度上の配慮がなされていること等が挙げられます。
3. まとめ
本稿では就業規則の変更に関する手続き及びその内容の有効性について、解説をしました。
就業規則の変更には労働基準法や労働契約法などの労働関連法令に関する網羅的かつ正確な知識が必要となる分野ですので、是非当事務所にご相談ください。
監修者
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