企業法務コラム
休業手当とは何か?
更新日:2024/12/24
東京・神戸・福岡・熊本・長崎・鹿児島に拠点がある弁護士法人グレイスの労働法コラムです。
今回のテーマは、休業手当についてです。
労働者が休む際に、「休業」といったり「休日」といったりするのを耳にしますが、そこに違いはあるのでしょうか。
いい点に注目しましたね。もちろん「休業」と「休日」は異なって用いられます。「休業」とは、労働契約上労働義務のある時間において労働をなし得なくなることをいいます。一方、「休日」とは労働義務から解放されているものをいいます。つまり、労働者に労働義務が課せられているか否かによって両者は区別されます。
それでは、「休業手当」というのはどのようなものでしょうか。
休業手当については労働基準法第26条が定めています。同条は「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。」と定めています。
これに反する取扱いは認められないのでしょうか。
そのとおりです。弁護士に寄せられる相談の中で、「労使間で休業手当を支給しないと合意しているからいいのではないか」というものがありますが、労働基準法第26条は強行法規ですので、これに反する内容を労使間で合意してもその合意は無効となります。
休業手当は労働者が労働していなくても支払わなければならないということですか。
使用者が休業手当の支払義務を負うのは、労働者が労働に従事していないことが「使用者の責に帰すべき事由による」場合に限られます。
「使用者の責に帰すべき事由」とは具体的にはどのような場合を指すのでしょうか。
例えば、資金難・材料不足等による経営障害が発生した場合や、一部の労働者のストライキを理由に残りの労働者の就業を拒否した場合は「使用者の責に帰すべき事由」にあたると考えられており、「使用者の責に帰すべき事由」にあたらないのは天変地異等の不可抗力の場合等、限定的に考えられています。
つまり、使用者が休業手当を支給しなければならない場合が多いということですね。
休業手当は労働者の最低生活を保障する趣旨なので、休業手当の支払請求権は広く認められています。 ですから、安易に休業手当の不支給を決定する前に弁護士等の専門家に相談することが重要です。
休業期間中は休業手当を支払えば、使用者側としては賃金の支払義務は果たしたと考えていいのでしょうか。
労基法26条は「百分の六十以上」と定めているに過ぎず、仮にこの規定の最低限の額にあたる平均賃金の6割相当額を払った場合であっても、なお賃金支払義務を負っている場合はあり得ます。それは、民法536条2項の規定により、労働者に帰責性がない場合においては労働者は賃金の支払を受ける権利を失わないため、平均賃金と休業手当支給分との差額を更に請求することができます。もっとも、労使間により民法536条2項の適用を排除することができ、この場合には休業手当のみで賃金の支払義務を果たすことになります。
ところで、「休業補償」という言葉を聞いたこともありますが、これは「休業手当」とは違うものなのでしょうか。
全く違います。「休業補償」については、労働基準法第76条に規定されています。同条は、「労働者が(業務上負傷し、又は疾病にかかった場合における)療養のため、労働することができないために賃金を受けない場合においては、使用者は、労働者の療養中平均賃金の百分の六十の休業補償を行わなければならない」と定めています。
労働災害等の際に支給される手当ということでしょうか。
そうですね。休業手当は不景気や生産調整といった会社都合の休業を想定しているのに対し、休業補償は業務上の災害を想定している点が違いますね。また、休業手当はあくまで賃金として扱われるのに対し、休業補償は補償ですので賃金とは異なる点にも注意が必要ですね。
一言で「休業」といっても、その意味するところが何なのかを正確に把握しておかなければ労働法上のトラブルにも発展しそうですね。
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