企業法務コラム
偽装請負

1. 偽装請負とは

契約上は「請負契約」を締結したものの、実態は「労働者派遣」であるものをいいます。
請負契約は、民法632条において、「請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。」と定められており、仕事の完成を債務とする契約です。請負契約の場合、発注者と受託者(の労働者)との間に、指揮命令関係が生じません。
一方、労働者派遣は、「派遣元事業主が自己の雇用する労働者を、派遣先の指揮命令を受けて、この派遣先のために労働に従事させること」をいいます。この場合、労働者派遣法の適用を受けます。
偽装請負は、受託者の労働者を指揮命令下において実態は労働者として雇用しているような状況にあるのに、形式上は「請負契約」を利用している状態です。
2. 偽装請負となる判断基準について
形式上、請負契約としているものが、実態は労働者派遣であるとの実質判断は容易ではありません。そこで、判断の基準として、「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(昭和61年4月17日労働省告示第37号)が定められています。判断基準として、以下のものがあげられています。
- (1)業務の遂行に関する指示その他の管理を自ら行うものであること
- (2)労働時間等に関する指示その他の管理を自ら行うものであること
- (3)企業における秩序の維持、確保等のための指示その他の管理を自ら行うものであること
- (4)請負契約により請け負った業務を自己の業務として当該契約の相手方から独立して処理するものであること
- (5)単に肉体的な労働力を提供するものでないこと
3. 偽装請負が法令違反となる場合について
偽装請負は、労働者派遣法及び職業安定法に違反する可能性があります。
労働者派遣法上で問題になるものとして、いくつか考えられます。たとえば、派遣禁止業務への労働者派遣(4条1項、59条1号)、労働者派遣事業の無許可派遣(5条、59条2号)があげられます。
また、職業安定法では、厚生労働大臣の許可を得ずに労働者供給事業を行い、またはその労働者供給事業を行う者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させることが禁止されています(44条、64条第9号)。
4. まとめ

偽装請負か否かは、実質判断となるため、ポイントをしっかり押さえておく必要があります。偽装請負を理由に処分や指導を受けた事例もありますので、早めの対策が必要です。偽装請負と疑いをもった又はもたれた場合には、速やかに弁護士に相談していただければと思います。
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