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企業法務コラム

偽装請負

投稿日:
更新日:2024/07/30

東京・神戸・福岡・熊本・長崎・鹿児島に拠点がある弁護士法人グレイスの労働法コラムです。

今回のテーマは、偽装請負です。

相談者
相談者

「偽装請負」は法律違反だと聞いたことがあるのですが、なぜダメなのでしょうか。そもそも、偽装請負が何なのかがよくわかっていないのですが…。用語のイメージがつかみにくく、何を偽装しているからダメなのか教えてください。

播磨先生
弁護士

「偽装請負」というのは、法律上の用語ではないのですが、確かに禁止されていますね。

相談者
相談者

「請負」を装って、実は違うことをしているのがダメなのでしょうか。

播磨先生
弁護士

たとえの話で説明しますね。どのような会社でも、自社で受注した案件で人手が足りないときは、別の会社に外注しますよね。

相談者
相談者

そうしないと、納期に間に合いません。人手が足りないことも多いですし…。

播磨先生
弁護士

外注すること自体は問題ではないのです。問題は、外注するときの「人の出し方」です。言い換えると、外注先から出してもらう「人」について、どのような形で業務をやっていただくかです。

相談者
相談者

どういうことですか。もう少し、具体的に教えてください。

ß

播磨先生
弁護士

法律が複雑になっているのですが、ごく簡単に説明すると、外注先から出してもらう「人」に対して、自社の従業員と同じような扱いをしたいのであれば、「請負」ではダメだということです。自社の従業員であれば、出勤時間からはじまって、1日の勤務時間も守らなければいけません。また、業務をする際にも、上司や同僚から色々と指示を受けますよね。この指示を、法律的な言い方では「個別の指揮命令」というのですが、そのような指示を受けるのは、従業員だから可能なのです。

相談者
相談者

なるほど。自社の従業員と同じような扱いをしたいときは、どうすればよいのですか。

播磨先生
弁護士

結論から言うと、派遣会社から派遣社員さんに来ていただく必要があります。もちろん、派遣業の許可を受けている派遣会社に限りますよ。

相談者
相談者

建築の現場などで、下請は普通にあると思うのですが、それも禁止なのですか。

播磨先生
弁護士

それもこの「偽装請負」の基準で決まります。細かい点はひとまず置くとして、大まかなイメージをつかんでいただくために説明をしますね。例えば、建築の現場では、元請業者は、下請の業者さんに全体の工程管理をするだけで、個々の業務の差配・進行は下請の業者さんに任せていることが多いと思います。そのような場面だと、自社の従業員と同じような状態にはないと発想するのです。逆に言うと、そうでなければ、偽装請負になってしまいます。

相談者
相談者

派遣会社から受入れをしたがらない理由は、なぜなのでしょうか。

播磨先生
弁護士

理由はいろいろとあるのですが、一つの理由として、派遣会社から受け入れるのは、手続・費用の点で面倒であったり、請負だとその「人」に関する社会保険の負担もしなくてよくなるので、「偽装請負」が頻繁にどの業界でも発生しているのです。

相談者
相談者

偽装請負の具体的な基準のようなものはあるのですか。チェックリストのような項目です。

播磨先生
弁護士

厚生労働省から、告示が出ていますね。労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(37号告示) というものです。インターネットでも見ることができますが、内容が複雑ですので、簡単ではありません。

相談者
相談者

請負という形で契約するから違反なのだとすると、別の契約名にすればよいのではないですか。「業務委託」とか「コンサルティング」とかいう契約を目にしたこともありますが…。

播磨先生
弁護士

契約書の名前・表題で決まることはありません。契約書の名前を変えるだけで偽装請負が回避できるのなら、簡単なことですが、法律は「実質で判断する」ものです。「偽装請負」も「偽装業務委託」も実質は同じ問題ですので、契約書の表題だけを変えても回避できません。

相談者
相談者

確かにそうですね。

播磨先生
弁護士

偽装請負は、法律違反ですので、罰則がありますし、労働基準監督署から指摘されて改善命令を受けることもあります。また、偽装請負では、発注側が「偽装請負」だと分かっていて人を受け入れるケースが大半ですが、受け入れている「人」からリクエストがあれば、発注側とその「人」の関係が「雇用」契約になってしまうというペナルティもあります。

相談者
相談者

偽装請負はよく聞くので、あまり問題にならないと思っていましたが、そうではないのですね。ありがとうございました。

【著者情報】

企業法務部 部長 福岡県弁護士会(弁護士登録番号:33334)

九州大学大学院法学研究科修士課程 修了

米国Vanderbilt Universityロースクール(LLMコース) 卒業

三菱商事株式会社、シティユーワ法律事務所を経て、現在弁護士法人グレイスにて勤務

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監修者

弁護士法人グレイス企業法務部

本店所在地
〒105-0012 東京都港区芝大門1丁目1-35 サンセルモ大門ビル4階
連絡先
[代表電話] 03-6432-9783
[相談予約受付] 0120-100-129
WEBサイト
https://www.kotegawa-law.com/

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