顧問先数以上の信頼と実績

お気軽にお電話ください!0120-77-9014
トップページ > 企業法務コラム > 労働問題・労働法コラム > 就業規則その他各種社内規程の整備 > 就業規則の作成意義について弁護士が解説

企業法務コラム

就業規則の作成意義について弁護士が解説

投稿日:2022/04/06
更新日:2023/12/20

就業規則の作成意義について弁護士が解説

1. 就業規則とは

就業規則とは

就業規則とは、労働基準法や労働契約法上に明確な定義は定められていませんが、労働条件や労働者が就業上遵守すべき事項を具体的に定めた規則類の総称をいいます。そのため、「就業規則」という名称でなくとも、例えば「賃金規定」といった労働条件について定めてある規則も、就業規則の一部といえます。就業規則の内容は多岐にわたりますが、採用に関すること、賃金に関すること、労働時間等に関する規定や業務を遂行するにあたって遵守すべき事項及び懲戒処分に関する事項も定められるのが一般的です。

また、就業規則は、労働者と個別に交わす労働契約書とは異なり、事業所の複数の労働者に対して統一的に適用されるのも大きな特徴です。なお、個別の労働契約と就業規則の内容が異なる場合には、労働者に有利なものが優先され、労働者の利益が優先されていることがわかります。

2. 就業規則と法律上の規律

労働基準法では、同法89条において「常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。」と定められています。そのため、常時10人以上の労働者を使用する企業では、就業規則の作成は法律上の義務となっています

また、労働基準法89条では、就業規則に記載すべき事項を列挙しており、必ず記載しなければならない「絶対的記載事項」と制度を設ける場合には記載をしなければならない「相対的記載事項」とがあります。このように、労働基準法では、一定の事項の記載することを義務付けています。

さらに、労働基準法90条では、就業規則の作成手続が定められています。具体的には、就業規則の作成又は変更については、①当該事業場に、労働者の過半数が組織する労働組合がある場合にはその労働組合、②労働者の過半数で組織する労働組合がない場合には、労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならないとされています。この際、②の労働者の過半数を代表する者の選任方法についても問題となることがあります。同選任については、使用者が一方的に決定することはできず、労働基準法施行規則6条の2第1項に定められた方法によることが必要です。

加えて、作成又は変更した就業規則については、労働者に周知しなければなりません(労働基準法106条1項)。労働契約法7条においても、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、「その就業規則で定める労働条件によるものとする」と規定されています(労契法7条本文)。裏を返せば、就業規則を周知しない場合、そもそも、労働者の労働契約の内容となっていないと判断されることになり、後述のように、懲戒処分や人権権を行使する際にも障害となることがあります。労働事件においては、この周知義務が履行されていないと労働者から主張されることが少なくありません。そして、その主張が認められてしまうと、懲戒処分が有効であると主張しても懲戒権を行使する権限がないと判断され、企業の主張が認められないということになります。

そのほかにも、労働基準法13条において、「この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。」と定められており、就業規則の内容よりも労働基準法の内容が優先するとされています。そのため、企業が労働基準法の内容を企業により有利に定めることはできなくなっています。

以上のとおり、労働基準法は就業規則の根本にかかわる定めをいくつもおいています。そのため、就業規則の作成において労働基準法の規制に細心の注意を払う必要があります。

3. 就業規則の作成は必須か

就業規則の作成は必須か

(1)就業規則の作成は、前述のとおり、常時10以上の労働者を雇用している場合には法的な義務です。そして、これに違反した場合には、30万円以下の罰金が科されるおそれがあります。

(2)それでは、常時10人以上の労働者を使用する企業については、就業規則の作成が義務付けられていましたが、常時使用する労働者が10名未満の場合に、就業規則を作成しなくても良いのでしょうか。

この疑問に対する回答は、ノーと考えます。その大きな理由の一つとして、裁判例等において、会社が人事権や懲戒権を行使する前提として、就業規則にこれらの権限に関する規定が存在するかを考慮しているからです。例えば、懲戒処分については、就業規則の定めるところに従わなければ行うことができないと考えられています。そうだとすると、企業として、問題社員が存在するとしても、当該問題社員に対して対抗するための大きな武器を失うことになります。そのため、企業として、就業規則を定めることは、労働者との労働条件の明確化や人事権行使を適法に行うといった意味だけでなく、問題社員対策にも重要であることがわかります。

4. 就業規則の作成の流れについて

就業規則作成の必要性については、ご理解いただけたと思います。それでは、どのような流れで就業規則を作成すれば良いのでしょうか。場合によっては、インターネット上でダウンロードできるものをそのまま使用している企業もあるかと思います。しかし、就業規則は、企業と労働者の労働契約を規律する基本的な決まりです。そのため、企業の事業内容等に応じて、それぞれ内容が異なって然るべきものです。よって、インターネットで簡単に取得できるものをそのまま使用するべきではありません。

もっとも、一から就業規則を作成するということも容易ではありません。そこで、就業規則を作成するにあたっては、厚生労働省が公開しているモデル就業規則を参考にその内容を企業の実情に合わせてカスタマイズしていくことが考えられます。また、この段階で労働者側の意見を考慮しておくことも、その後の労働者の過半数代表者の意見聴取もスムーズに進めるために有益といえます。

次に、会社の事業内容や実情を踏まえて就業規則を作成した後には、労働者からの意見聴取を行う必要があります(労働基準法90条1項)。そして、その意見を書面化したものを完成した就業規則とともに、労働基準監督署に届け出ることになります(労働基準法89条)。

さらに、完成した就業規則を労働者に周知することです。この周知を行わない場合、罰金を科されるおそれもあります。しかし、最も重要なのは、前述のとおり、就業規則を周知しないと労働者との関係で就業規則が有効とならないことです。

もっとも、ここでいう周知には、労働者に個別に懇切丁寧に説明することまでは求められていないと考えられています。労働基準法106条等で定める方法で周知をすればよく、具体的には、労働者の大半が就業規則の内容を知っている又は知りうる状態に置けば足ります。

5. 最後に

以上のとおり、就業規則を作成する重要性はご理解いただけたと思います。また、その後の手続きについても同様に重要となります。就業規則の作成をお考えの企業様、また、就業規則はあるものの、その内容が企業の実態に沿ったものであるかについて疑問をお持ちの企業様もあるかと思います。その際は、一度弊所にご相談いただければ幸いです。弊所で労働者との紛争防止や問題社員対策も踏まえた就業規則のご提案ができればと思います。

監修者

弁護士法人グレイス企業法務部

本店所在地
〒105-0012 東京都港区芝大門1丁目1-35 サンセルモ大門ビル4階
連絡先
[代表電話] 03-6432-9783
[相談予約受付] 0120-100-129
WEBサイト
https://www.kotegawa-law.com/

「就業規則その他各種社内規程の整備」の関連記事はこちら

ご相談のご予約はこちらから

全国対応可能・メールでのお問い合わせは24時間受付