企業法務コラム
企業による資格取得支援とその法的留意点
更新日:2025/01/28
東京・神戸・福岡・熊本・長崎・鹿児島に拠点がある弁護士法人グレイスの労働法コラムです。
今回のテーマは、企業による資格取得支援とその法的留意点についてです。
最近聞いたんですが、従業員のキャリアアップのために企業が資格取得費用を援助することってありますよね?
はい、その通りです。多くの企業が従業員のスキル向上を奨励しています。
でも、資格を取得した後に従業員がすぐ退職してしまうこともあるんですよね? そうなった場合、企業はどう対処すればいいんですか?
その点は重要です。労働基準法により、労働契約において違約金や損害賠償額を予定することは禁止されています。そのため、資格取得後にすぐ退職する場合に全額返還をしなければならないようは契約をすると、労働基準法に違反する可能性があります。
なるほど。労働基準法はなぜそのような規定をしているのでしょうか。
従来、労働者が契約期間中に逃亡したり、機械器具を壊した場合などに、本人や保証人などに一定額の違約金を支払わせるという慣行がみられ、労働者が身分的に拘束する原因となっていたことから、労働基準法はこのような拘束を防ぐため、違約金や損害賠償額の予定を禁止したのです。
じゃあ、企業はどのように対応すべきなんですか?
企業は、資格取得費用を貸与したとして金銭消費貸借契約を締結し、その特約として一定期間勤務すればその費用の免除を条件とすることができます。これは労働契約の不履行とは関係ないため、労働基準法の違反にはならないと考えられるためです。
金銭消費貸借契約を結ぶ際に注意すべき点はありますか?
注意点はいくつかあります。まず、資格が個人のスキル向上のためのもので、業務に直接関係しないことが重要です。また、資格取得は労働者の自発的な意志に基づくべきであり、返還すべき費用の範囲と勤続期間は合理的である必要があります。加えて、資格取得費用の支出に関しては、事前に労働者との間で適切な契約書を取り交わすことが重要です。これにより、将来的なトラブルを避けることができます。
理解しました。ありがとうございます! 何かあればまた相談に来ますね。
いつでもお待ちしています。適切な対策を講じれば、両者にとって良い結果になりますからね。
監修者
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