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企業法務コラム

弁護士からみる雇用契約書の必要性について解説

投稿日:2022/09/01
更新日:2023/12/11

雇用契約書の必要性

1. 雇用契約書の必要性

雇用契約書の必要性

法律により、会社が従業員を採用する際には、書面で明示する必要のある事項が定められています。

実務上で使用される書面は、大別して、「雇用契約書」と「労働条件通知書」があります。法律で定められている事項が網羅されているのであれば、いずれを使用しても問題はありません。

(1) 雇用契約書の定義

雇用契約書の定義として、法律で明確に定められているものはありません。

強いていいますと、契約書ですので、会社と従業員の双方が署名捺印又は記名押印を行い、双方が原本を1部ずつ作成する方式になります。

(2) 労働条件通知書との違い

これに対して、労働条件通知書は、契約書のような構成ではなく、会社から従業員に対して労働条件を記載した書面が一方的に交付されることになります。そのため、原本は1部のみ作成されることになり、その原本は従業員が保有することになります。

(3) 雇用契約書が望ましい理由

雇用契約書が望ましい理由は、労働条件通知書の構成と関わっています。

労働条件通知書は、厚生労働省のウェブサイトでひな形が公表されており、これが書式としてほぼそのまま使用されているケースが大半です。

言い換えますと、労働条件通知書に記載する必要がある事項は、法律で必要になる最低限の項目です。それ以外の項目を網羅するには、構成においてより柔軟性のある雇用契約書が適しています。

2. 雇用契約書が作成されていないことによる会社経営のリスク

(1) リスクその①(服務規律事項の重要性)

例えば、会社の服務規律に関する事項は、労働条件通知書の必要的な記載事項とはなっていません。しかし、服務規律に関する事項は、会社の運営の基本的なルールを構成するものですので、実務上では重要な事項です。

また、会社の業種によっては、入社時に、従業員に対して秘密保持等の義務を課することも検討に値します。

このような項目を網羅的に記載するためには、労働条件通知書ではなく、雇用契約書が適しています。

(2) リスクその②(入社後の条件変更)

労働条件通知書は、入社時に従業員に交付するだけですので、入社後に労働条件が変更になった場合のことを想定していません。

他方で、雇用契約書は、従業員の合意が取れれば、定期的に締結しなおすことも可能です。

実際には、入社後に労働条件が変更になっても、それを物理的に証明するものがなく、雇用の実態だけが続いていることはよくあります。雇用契約の内容を定期的に見直し、現状に即しているかを確認するためには、労働条件通知書よりも雇用契約書が適しています。

(3) リスクその③(雇用契約と就業規則の関係)

法律上は、就業規則が一律のルールを定めています。但し、雇用契約の条件が就業規則よりも「従業員に有利」になっている場合には、雇用契約の条件が優先します。したがって、雇用契約の内容と就業規則の内容が相違する場合には、従業員に有利な方が採用されることになります。

また、就業規則で具体的に定めていても、就業規則を従業員に適切に示していない会社も散見されます。就業規則が適切に従業員に周知されていない場合には、就業規則の効力が及ばないと判断されるリスクがあります。

そのようなケースに備えて、雇用契約の条件を正確に書面化しておくことは重要です。

3. 雇用契約書作成にあたり注意すべきポイント

(1) 従業員のパターン別での作成

雇用契約書は、従業員のパターンに応じて作成することが望ましいです。

従業員のパターンには、大別して以下があります。

・ 正社員(無期雇用契約)
・ 契約社員(有期雇用契約)
・ パート/アルバイト

それぞれについて、契約の内容は異なります。

(2) 各項目について個別に定める

雇用契約書には、以下の項目を個別に定めることになります。

[雇用期間]

・ 有期/無期の別(有期の場合には契約期間の満了日・再雇用の有無/基準)
・ 試用期間
・ 定年(再雇用の基準)

[労働時間]

・ 出勤日
・ 休日
・ 休暇
・ 始業時刻/終業時刻
・ 休憩時間
・ 残業の有無/内容

[給与]

・ 基本給
・ 各種の手当
・ 割増賃金の計算(どの手当が基準内賃金として割増賃金の算定にカウントされるか/固定残業代の有無)
・ 賃金から控除される費目
・ 給与の締日/支払日
・ 昇給/降給
・ 賞与
・ 退職金

[人事異動]

・ 就業場所が特定の場所/業務に固定されているか
・ 配置転換/転勤の有無

[退職]

・ 退職申出の期限
・ 退職時に返還すべき資料/データの返還方法

[その他]

・ 服務規律の内容として、就業規則に記載するような内容を改めて雇用契約書に記載することで、従業員にあらかじめ注意喚起を促す効果があります。

秘密保持・競業禁止は、在職中はもとより、退職後のことも想定して、入社時に明確化しておくほうが望ましいです。退職直前に秘密保持・競業禁止に関する誓約書を取り付けようとしても、従業員から拒否される可能性が高いためです。
雇用契約書を作成することにより、実際の労働条件とのミスマッチがなくなりますし、就業規則との整合性もチェックすることができるという効果も期待できます。

4. 雇用契約に関するご相談は弁護士法人グレイスへ

雇用契約は、従業員の属性等により個別性があり、様々な内容を規定することができることがお分かりいただけたと思います。これは雇用契約の柔軟性によるものですが、他方で、就業規則と並んで労働条件のルールとなりますので、実態に即した正確な内容で作成する必要があります。

雇用契約に関するご相談は、弁護士法人グレイスにご連絡ください。

監修者

弁護士法人グレイス企業法務部

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