企業法務コラム
令和4年4月に施行された育児・介護休業法について弁護士が解説します
更新日:2023/12/11
第1 改正育児・介護休業法により令和4年4月から課せられた使用者側の義務とは?
1 はじめに
育児介護休業法は、育児休業や介護休業に関する制度を確立することにより、子の養育や家族の介護を行う労働者の職業生活と家庭生活との両立をめざす法律です。ところが、直ちに育児休業や介護休業を取得しやすくするものではなく、その環境整備を行う必要性がありました。そこで、2021年6月9日に公布された育児介護休業法においては、使用者に種々の義務が課せられるに至りました。
本コラムでは、そのうち2022年4月に施行された内容のうち、使用者に課せられた義務をいくつか取り上げます。
2 育児休業を取得しやすい雇用環境整備の義務化
改正法22条1項は次のような規定になっています。
「 事業主は、育児休業申出等が円滑に行われるようにするため、次の各号のいずれかの措置を講じなければならない。
(1) その雇用する労働者に対する育児休業に係る研修の実施
(2) 育児休業に関する相談体制の整備
(3) その他厚生労働省令で定める育児休業に係る雇用環境の整備に関する措置 」
条文の規定から明らかなとおり、上記(1)ないし(3)のいずれかの措置を講じることが、努力義務ではなく厳に義務づけられている点に注意を要します。また、「いずれか」の措置を講じれば足りますが、複数の措置を講じることがより望ましいです。
このうち(2)の「相談体制の整備」とは、具体的には「実質的に対応することが可能な窓口を設けること」を指します。すなわち、ここにいう窓口は形式的に設置すればよいというものではなく、ハラスメント相談窓口と同様、労働者が相談しやすい窓口となるよう配所することが要請されます。
また、(3)については、厚生労働省令が「自社の育児休業取得の事例を提供する方法」か、「育児休業に関する制度と育児休業取得促進に関する事業主の方針を周知する方法」のいずれかにするよう定めています。
繰り返しになりますが、事業主には上記(1)ないし(3)のいずれかの方法を採ることが義務化されています。どれを採用するかは各事業主の事情による判断に委ねられます。
3 妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務化
改正法21条1項は次のような規定になっています。
「 事業主は、労働者が当該事業主に対し、当該労働者又はその配偶者が妊娠し、又は出産したことその他これに準ずるものとして厚生労働省令で定める事実を申し出たときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該労働者に対して、育児休業に関する制度その他の厚生労働省令で定める事項を知らせるとともに、育児休業申出等に係る当該労働者の意向を確認するための面談その他の厚生労働省令で定める措置を講じなければならない。
」
すなわち、この規定により使用者には「個別の周知義務」及び「意向確認義務」が課されております。
具体的には、使用者は労働者に対し、①育児休業等に関する制度について、②育児休業等の申出先について、③育児休業給付の内容について、④労働者が育児休業期間等において負担すべき社会保険料の取扱いについて、それぞれ周知しなければならず、そのうえで、妊娠・出産等を申し出た労働者に対して、休業取得の意向を確認する必要があります。
次に、個別周知と意向確認の方法ですが、①面談による方法(オンラインも可能)、②書面交付による方法を原則としつつ、労働者が希望した場合には、③ファックス、④電子メール等による方法によることが可能です。
第2 弁護士法人グレイスでできるサポート内容
弁護士法人グレイスでは、「育児休業を取得しやすい雇用環境整備の義務化」において求められている「研修」を弊所弁護士が行うことができます。これにより、迅速にこの義務化に伴う措置に対応することが可能となります。
また、相談窓口の設置に向けた対応や就業規則の変更手続、個別周知・意向確認の書面作成等を含めた具体的支援をさせていただいております。
監修者
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