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企業法務コラム

定年廃止が企業にもたらすメリット・デメリット

投稿日:2021/05/07
更新日:2023/12/22
定年廃止が企業にもたらすメリット・デメリット

1. 現在の制度

平成25年に施行された高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(以下「改正高年齢者雇用安定法」)により、65歳未満の定年制を採用する会社は、

  • ①定年の引き上げ
  • ②定年制の廃止
  • ③定年後再雇用制度の導入

のいずれかの措置を講ずることが義務化されています。

2. 定年後再雇用制度が主流になっている理由

多くの会社では、正社員の定年を60歳としたうえで、③の雇用確保措置として65歳までの定年後再雇用制度を導入しています。

これは、①定年の引き上げを選択すると、定年が自動的に65歳まで延長されてしまうこと、②定年制の廃止を選択すると、定年がなくなり65歳以降も雇用関係が終了しないことにより、さらに会社の負担が大きいためです。

3. 定年後再雇用制度のポイント

定年後再雇用制度を設計する際の論点として、以下の点があります。

  • 勤務日・勤務時間・賃金等について、会社側から合理的な裁量の範囲で条件提示がなされているのであれば、従業員との間で最終的に合意に達しなかったとしても、会社の違反にはなりません。但し、従業員の生計に大きな支障が生じるような提案(例えば、週2日勤務・1日あたり3時間など)は、認められません。
  • 契約期間は、1年更新によることで問題ないとされています。
  • 最初の再雇用時には、原則として希望者全員を再雇用する必要があります。例外として、就業規則に定める解雇・退職事由に該当するケースのみ、再雇用を拒否できるとされています。
  • 1年ごとの更新時の基準は、最初の再雇用時と同一の条件にする必要はなく、能力等を考慮して更新しないことも可能とされています。
  • 職務内容は、会社の裁量が広く認められる傾向にあります。
  • 賃金等の給与面は、定年前に従事していた職種・業務内容からどの程度の相違が発生するかという点を考慮して決定します。一般的には、定年後再雇用者には、配置転換・転勤がなく、正社員と同等の職責を課さないことを条件として、定年前の70%程度の賃金水準にする例が見受けられます。なお、この点は、「同一労働・同一賃金」の論点も関係するため、特に手当の設計には別途の留意を要します。

4. 定年後再雇用制度の例外

例外として、高年齢者雇用安定法の施行日(平成25年3月31日)までに労使協定により継続雇用制度の対象者を限定する基準を定めていた会社には、経過措置として、老齢厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢以上の年齢の者について、継続雇用制度の対象者を限定する基準を定めることが認められています。具体的には、以下のとおりです。

  • 平成25年4月1日から平成28年3月31日まで:61歳
  • 平成28年4月1日から平成31年3月31日まで:62歳
  • 平成31年4月1日から令和4年3月31日まで:63歳
  • 令和4年4月1日から令和7年3月31日まで:64歳

また、このような労使協定を締結している会社では、継続雇用をする条件について、ある程度の柔軟な内容にすることが認められています。

但し、今からこのような労使協定を締結することはできず、平成25年3月31日までに労使協定を締結した会社に限定されますので、どの会社でも汎用できる制度ではありません。

5. 「70歳定年制」の改正

令和3年4月より、上記の制度がさらに改正され、以下のとおり変更されています。

  • 定年を70歳に引き上げ
  • 70歳まで継続雇用する制度の導入
  • 定年制の廃止
  • 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
  • 70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
    • -事業主が自ら実施する社会貢献事業
    • -事業主が委託、出資(資金提供)等をする団体が行う社会貢献事業

6. 「70歳定年制」で予想される影響

現時点では、今回の改正は、あくまでも会社に努力義務を求めるものであり、違反による罰則はありません。そのため、当面の間は、現在の制度に基づく運用が依然として主流になるものと考えられます。

監修者

弁護士法人グレイス企業法務部

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