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企業法務コラム

資格取得費用の返還について弁護士が解説

投稿日:2019/10/27
更新日:2023/12/22
資格取得費用の返還について弁護士が解説

近時、従業員のキャリアアップのために資格の取得を奨励し、資格取得費用の補助を行う企業様もいらっしゃると思います。

資格を取得した従業員がそのまま勤務を続けてくれるのであれば何もトラブルは起きないのでしょうが、中には、資格を取得後、短期間で会社を退職してしまい、会社が補助した資格取得費用の返還を求めたところ、退職者が返還を拒絶するといったケースが見受けられます。

本稿では、会社が資格取得費用を補助するにあたり、どのような点に気を付けなければいけないのかを解説していきます。

1. 問題の所在

問題の所在

労働基準法16条は「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。」と定めています。この規定は、戦前、契約期間の途中で労働者が退職してしまうのを足止めしたり、身分的従属を創出するために違約金を定めるような拘束的労働慣行が見受けられたことを受け、そのような契約を禁止しています。

本件では、労働者に資格取得費用の返還を求めることが、この規定に抵触しないのかが問題となりえます。例えば、「使用者が費用を負担後、一定期間内に退職してしまった場合にはその全額を会社に返還しなければならない」、といった定め方をした場合はどうでしょうか?

結論から申し上げますと、このような形で規定していた場合、労基法16条の禁止する損害賠償の予定と考えられやすい、と思われます。実際、研修・留学費用の返還義務が問題となった事案において、無効と判断された裁判例が複数あります。

このため、企業としては、資格取得費用を金銭消費貸借契約として労働者に貸し付け、資格取得後一定期間勤務することを貸付金免除の条件として取り扱うこととする方向で検討することになります。このような場合、労働契約の不履行とは無関係ですので、原則として労基法16条違反となることはないと考えられます。ただし、制度の設計にあたり留意すべき点がありますので、次項にて解説いたします。

2. 金銭消費貸借締結にあたっての実務上の留意点

金銭消費貸借締結にあたっての実務上の留意点

まず、対象となる資格の取得がもっぱら労働者個人の能力向上に資するためのものであり、業務の遂行ではないことが必要です。取得する資格がもっぱら会社の業務に関するものであった場合、その費用は会社が負担することが当然だからです。

次に、資格取得は労働者の自由な意思に基づいて行うものですので、労働者の自発的な申し出によって行う制度とすべきです。
そして、仮に、免除要件を満たさなかったために、退職者が会社に返還しなければならない費用の範囲は資格取得にかかる合理的な実費ないし援助金の範囲とし、併せて免除されるための勤続期間を貸与額に照らして合理的な期間になるよう明確に規定しておく必要があります。

最後に、資格取得費用の支出については、あらかじめ希望者と資格取得費用について本稿で解説してきた要件を具備した金銭消費貸借契約書を取り交わしておくべきです。

3. 最後に

せっかく資格取得費用を援助したのに労働者が退職してしまい、トラブルになるケースは企業と労働者双方にとって不幸なものです。そのようなケースに陥らないため、適切な備えをしておくためにも当事務所の弁護士に御相談下さい。

監修者

弁護士法人グレイス企業法務部

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