企業法務コラム
弁護士が解説|内容証明の書き方・出し方とその注意点
更新日:2025/07/29
取引先が売掛金を支払ってくれない。退職した従業員が会社との競業行為を行っている。
様々な対外的トラブルに対して、企業が最初に取るべき対応として、内容証明郵便を送ることが考えられます。ご自身で内容証明郵便を作成して相手方に送付したいという方に向けて、以下のとおり、内容証明郵便の書き方・出し方や注意点について解説いたします。
内容証明の正しい書き方
そもそも内容証明は、誰が、いつ、どのような内容の文書を誰に送ったかを、郵便局が公的に証明してくれる郵便を指します。このため、内容証明郵便の書き方は厳格に定められており、これに違反するとそもそも内容証明郵便の送付が認められません。
郵便局に何度も行って訂正をすることのないよう、正しい書き方を理解しておくことが重要です。
内容証明を書くときの3つの基本ルール
まず、内容証明郵便を書くときには、3つの基本ルールがあります。いずれも形式的なものですが、これに違反するものは内容証明郵便として送付することができません。
形式
形式については、文章が書かれた文書のみ送ることができるとされています。つまり、図面や返信用封筒を同封したり、現金・有価証券・その他の物品を同封したりすることはできません。
例えば、売掛金を請求する内容の文書を内容証明郵便で送る場合には、請求書を同封することはできません。どうしても他の資料も送りたい場合は、資料は別途送付する必要があります(また、資料を送付したこと自体は証明されないので注意が必要です。)。
書式
書式は、縦書きでも横書きでも良いとされています。送付する紙のサイズには特段限定はありませんが、A4が一般的でしょう。
文字数
内容証明郵便は、中でも文字数の制限が独特かつ厳格です。
縦書きの場合には、1行20字以内・1枚26行以内と決まっており、横書きの場合には、①1行20字・1枚26行以内、②1行13字以内・1枚40行以内、③1行26字以内・1枚20行以内のいずれかでなければならないと決まっています。
記号は基本的には1文字とかぞえられますが、例えば、括弧は“()”の両方で1文字と数える、“⑴”は序列を数える記号として用いる場合には1文字と数えるなど、細かな決まりがあります。
郵便局で内容証明郵便を出す際には、郵便局員がこの文字数をカウントすることになりますので、文字数を原因に内容証明郵便の修正をすることとなる方が多いです。これは、例えばページ数として記載した数字が1行分としてカウントされる、ワードのぶら下がり機能で文書の右端にはみ出した句読点のせいで1文字オーバーするなど、様々な想定外のミスが起きるためです。
宛名・差出人・日付の書き方
これらの形式的制限に合致した文書であることに加え、宛名・差出人・日付も正確に書く必要があります。特に宛名は、住所や相手の氏名・名称の記載を1文字でも誤ると文章が届かないで返送されてきてしまいますから、注意が必要です。
文書が返ってきて無駄に日時を浪費することのないよう、確認を怠らないようにしましょう。
本文の構成
内容証明郵便の本文の構成は、一般的な手紙と同じです。ただし、文字数制限が厳しく、かつ、何枚送るかによって費用が変わりますから、相手方に意思表示するべき事項を端的かつ直接的に記載するべきといえます。
まず、タイトルとして「請求書」、「催告書」など、分かりやすい標題を選びましょう。次に、誰から誰に、何を伝えるために送付する文書なのか概略を示した上で、その具体的内容を記載していきます。終盤で相手方からの回答期限を設けておくと、良いでしょう。
内容証明でよく使われる表現例
ここで、内容証明郵便でよく使われる表現の例を解説します。内容証明郵便では、格調高い表現や丁寧な表現を用いることで、文書の意味付けを重くすることが重要です。受け取った相手方が真摯に対応を検討するよう促すのです。このため、基本的には「ですます」調で作成します。
避けるべきNG表現
他方で、あまりにラフすぎる表現は避けるべきです。
また、強い言葉を用いて請求をしたいとお考えの方もいらっしゃいますが、脅迫や強要に当たるような表現を用いてしまうと、そのような表現を含む内容証明郵便を送付すること自体が犯罪になってしまうおそれがあります。このような表現は避けましょう。
ちなみに、避けるべきNG表現としては、以下のようなものが挙げられます。
- ・「支払え。」、「持ってこい。」などの命令口調表現
- ・「支払わないならどうなるか覚悟しておけ。」「家族ともども許さない。」などといった脅迫的表現
- ・「誠意を見せろ。」などといった要求内容が不透明な表現
実際の文例
ここで、実際の文例を見てみましょう。
例えば、売掛金の請求をする場合には、以下のような文面となります。必要以上に長々とは書かず、必要事項を端的に書きます。
前略
当社は、貴社に対し、未払工事代金に関し、以下のとおり、通知します。
当社は、●年●月●日、貴社から、「(仮称)●●工事」の外構工事を工事代金●●万円で行うよう発注され、これを受注しました。当社は工期どおり、同工事を終え、工事結果を貴社に引き渡しました。しかしながら、貴社は工事代金●●万円を、支払期限である●年●月●日を過ぎた現在まで、支払っておりません。つきましては、本書面をもって、改めて、上記工事代金全額の支払いを求めます。
本件につきましては、既に当社顧問弁護士にも相談しているところですので、本書面到達後2週間以内にお支払いがいただけない場合には、やむを得ず、民事訴訟の提起等の法的措置をとる予定ですので、ご承知おきください。
以上、ご対応のほど、よろしくお願いいたします。
草々
内容証明の出し方
続いて、内容証明郵便の出し方についてご案内します。
内容証明を出す前に準備すべき3つのもの
内容証明郵便を出す際には、以下の3つのものを用意する必要があります。
本文原稿
まず、内容証明郵便として送付する本文原稿を用意しましょう。
複数ページにわたって記載がある場合には、各ページに契印を押しますので、印鑑(実印である必要はありません。)も持っていく必要があります。
封筒
また、内容証明郵便を入れるための封筒も必要となります。
この封筒には、内容証明郵便に記載されたものと全く同じ内容で、差出人であるあなたの住所・氏名と、受取人である相手方の住所・氏名を記載する必要があります。
控え
上記本文原稿は、控えも含めて準備する必要があります。
ここでいう控えとは、あなたの控えと郵便局保管用の控えとになります。
内容証明を提出できる郵便局
内容証明郵便を提出する際には、内容証明を提出できる郵便局に限定がされている点にもご注意ください。事前に郵便局に問い合わせた方が良いでしょう。
提出する書類の部数とルール
上記のとおり、内容証明郵便を出す際には、送付する文書原本と、この控え2通の合計3通が必要となります。これらは、いずれも内容が完全に一致している必要がありますから、ご注意ください。
郵便局での手続きの流れ
ちなみに、郵便局で内容証明郵便を出す際には、以下のような流れを辿ります。
- ⑴ 郵便局へ行く
- ⑵ 郵便の列に並んで内容証明郵便の送付を申し出る
- ⑶ 準備した文書と封筒を提出する
- ⑷ 郵便局員による確認
※不備がある場合には、ここで修正を求められます。厳格な要件が課されているため、郵便局員の確認には、相応の時間を要します。 - ⑸ 料金の支払
- ⑹ 原本の発送と、控えの受取り
内容証明の郵便料金と内訳
また、内容証明郵便を発出する際には、書留郵便扱いにする必要があることや、必ず配達証明を付すべきことなどから、複数の郵便料金を要することとなります。
- ・通常郵便料金 : 送付物の重さによって変わります
- ・内容証明料金 : 1枚目480円、以降1枚増えるごとに290円
- ・書留料金 : 480円
- ・配達証明料金 : 350円
但し、最近は郵便料金の価格変更が頻繁になされますので、内容証明郵便送付前に再度確認することが必要です。
内容証明における注意点
さて、内容証明郵便は強力な効力を発するように見える反面、それだけに送る際には以下の点に注意しなければなりません。
脅迫と受け取られない文面
まず、上述のとおり、脅迫と受け取られない文面にすることは必須です。もし心配な場合には、弁護士にご相談なさることをお勧めいたします。
内容証明に“法的強制力”はない
また、内容証明郵便には、実は法的な強制力はありません。内容証明郵便を受け取った相手が、これを無視して何らの回答もしないことも多くあります。
このような場合には、訴訟等の手続を取らざるを得ないこともあるでしょう。
送るタイミングは慎重に
内容証明郵便は、送付のタイミングにも慎重になる必要があります。
不用意に内容証明郵便を送ってしまうと、これを読んだ相手方が資産隠しをするなど、相手方に時間的余裕を与えることにもなりかねません。このような事態が懸念される場合には、内容証明郵便を送る前に相手方の財産への仮差押えを行うなどの地粟生をとることとなります。
内容の不備で自社が不利になることも
内容証明郵便は、相手方の手元にも残りますから、記載内容に不備があると、あなたの会社が不利になりかねません。実際、ご自身で内容証明郵便を作成して送付し、その後裁判になってから弁護士にご依頼いただいたケースで、内容証明郵便に記載された一文が原因で敗訴に追い込まれる、という事案もあります。
内容証明郵便の作成に不安が残る場合には、早々に弁護士に相談しましょう。
内容証明の作成を弁護士に依頼するメリット
最後に、内容証明郵便の作成を弁護士に依頼するメリットについてもご説明します。
相手に与えるプレッシャーが強くなる
まず、相手方に与えるプレッシャーが強くなります。
やはり、弁護士からの内容証明郵便を受け取るとインパクトが非常に大きいのです。
法的リスクを回避できる
次に、法的リスクを回避することが期待できます。
弁護士であれば、脅迫等に当たるような違法性を帯びる表現は用いませんし、のちに不利になるような記載はしませんから、これらの法的リスクは免れることができます。
トラブル解決までの流れも
また、弁護士に依頼すれば、そのまま弁護士に交渉までお願いしてしまい、トラブル解決まで任せることもできるでしょう。当然ながら、弁護士であれば訴訟等の裁判対応も十分に行うことができます。
次の法的対応にスムーズに移行できる
上記の点は、次の法的対応にスムーズに移行できるメリットとも言い換えることができます。弁護士に内容証明郵便作成を依頼することで、他の法的手続(特に裁判)まで視野に入れた対応を任せることができます。
まとめ
以上のとおり、内容証明郵便の出し方や注意点について解説しました。当事務所では、企業顧問・会社関係の事件を多く扱っています。ぜひお困りの際には、当事務所までご相談ください。あなたからのご相談をお待ちしております。
監修者
弁護士法人グレイス企業法務部
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