企業法務コラム
組織の内規について
更新日:2022/03/23
私は、当事務所に入所する前、2つの組織に所属した経験があり、1つは法律事務所、もう1つは生命保険会社でした。個人的に感じたこととして、企業は、部署ごとの職務領域、役職ごとの決裁権限、決裁手順、決裁方法(簡易な決裁でよいのか押印で決裁を行うのかなど)、懲戒処分時の手続きなど、非常に細かく内規やマニュアルでルール化されておりました。
細かいルール化にも良し悪しがあり、ルールが細かすぎると想定外の事象が生じた場合に組織として動きが遅くなったり、社員としては窮屈さを感じることがあるというデメリットはあります。しかし、一方で重要な決定に関して、何重にも決裁が行われ、最終的に責任者の判断が経られることを、ルールで担保できるという代えがたいメリットがあります。
また、組織の内規は、単に組織内での効力しかないわけでない点も認識する必要があります。例えば、社員への不利益処分をする場合、適切な組織の内規が定められ、かつその手続きが履践されていることが、裁判などで不利益処分の有効性を基礎づけることがあります。また、職務発明の対価として従業員が得るべき利益に関して定めた特許法35条などは、社内ルールが尊重されることを法律の明文で定めています。
このように、企業の内規や社内ルール策定にあたっては、ルール運用によってもたらされるメリット・デメリットの検討にとどまらず、法的見地を踏まえた検討を行うことが有益な場合があります。内規や社内ルール策定のご相談に弁護士が対応することも可能ですので、ぜひご相談ください。
【著者情報】
播摩 洋平弁護士
企業法務部 部長 福岡県弁護士会(弁護士登録番号:33334)
九州大学大学院法学研究科修士課程 修了
米国Vanderbilt Universityロースクール(LLMコース) 卒業
三菱商事株式会社、シティユーワ法律事務所を経て、現在弁護士法人グレイスにて勤務
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