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企業法務コラム

休業手当の誤解

投稿日:
更新日:2024/12/17

東京・神戸・福岡・熊本・長崎・鹿児島に拠点がある弁護士法人グレイスの労働法コラムです。

今回のテーマは、休業手当の誤解についてです。

相談者
相談者

コロナウイルスが猛威を振るっていた時期に、会社が営業できないということで、休業手当という言葉をよく聞きました。休業手当というのは、休職とは違うのでしょうか。

播磨先生
弁護士

結論から言いますと、全く違うものです。休職と休業は、語感としてはよく似ていますので、誤解されても仕方がないとは思いますが、法律的には全く違います。

相談者
相談者

実は、私もよく分かっていません…。

播磨先生
弁護士

休職は、特定の従業員の方が業務外でけが・病気になり、出勤できなくなった場合のお休み期間のことです。つまり、特定の従業員の方がお休みする原因は、 会社とは全く関係がない場合です。

相談者
相談者

休業手当というのは、違うのでしょうか。

播磨先生
弁護士

これは法律で決まっている用語でして、休職とは違います。休職と休業手当が同時に認められることはありません。休業手当というのは、従業員側は普通に出勤できるのですが、会社側の事情で勤務を止めてもらうときに、お支払する給与の代わりのお金というイメージです。

相談者
相談者

どのようなケースをイメージすればよいでしょうか。

播磨先生
弁護士

昔からある話としては、会社の業績が良くないので、しばらくの間について、会社の営業を止めるというような場面です。よくあるのは、工場の製造ラインをしばらくの間について止めるというパターンです。

相談者
相談者

このケースでは、従業員には何の非もありませんね。

播磨先生
弁護士

その通りです。

相談者
相談者

コロナ禍で、飲食店を開けていてもお客さんが来ないという場合も、同じように考えてよかったのでしょうか。

播磨先生
弁護士

その理解でよいと思います。

相談者
相談者

休業手当の金額は、法律で決まっているのでしょうか。

播磨先生
弁護士

法律で決まっています。休業対象になる従業員の方の平均賃金の60%です。

相談者
相談者

100%の全額を支払う必要はないのですか。

播磨先生
弁護士

法律上では、60%で足ります。但し、細かい点ですが、就業規則で要確認の点があります。

相談者
相談者

どのような点でしょうか。

播磨先生
弁護士

ほとんどの会社の就業規則では、休業の条文があるはずです。それ自体は問題ないのですが、その条文の中に、「民法536条2項を適用しない」という記載があるかどうかです。

相談者
相談者

何のことかよく分かりませんが…。

播磨先生
弁護士

分からなくて当然のことと思います。法律の話ですので、細かい点は省略しますが、「民法536条2項を適用しない」という条文がない場合には、会社として、60%ではなく100%全額の支払が必要になりうるということです。休業をするということは、ただでさえ会社の財務状態に悪影響がありますので、この差異はかなりのポイントになってきます。

相談者
相談者

その点の違いは、会社としては気になるところですね。ただ、会社として、60%の支払では従業員が辞めていってしまい、営業を再開するときに人手が足りないということを懸念するのではないでしょうか。

播磨先生
弁護士

その点は、人手不足の業界で特に出てくる点です。営業再開のことを考えて、あえて100%の全額を支払うという判断もあります。会社として判断に迷うところと思います。

相談者
相談者

最後に、60%の休業手当は、会社側の都合で営業をしない場合には、どのようなケースでもすべて支払わなければならないのでしょうか。例えば、地震でその地域のインフラ全体が止まってしまうような場面もあると思います。その場合は、会社側の都合とも言い切れないと思うのですが…。

播磨先生
弁護士

その点を最後にご説明しますね。休業手当は、会社側に責任があって会社の営業ができない場合の手当です。地震のようなケースは、そもそも会社に責任はありませんので(法的には、このようなケースを「不可抗力」と呼ぶことがあります)、法律上では、60%の休業手当の支払は要らないでしょう。ただし、この解釈を使いすぎると、従業員の生活に影響が出ますので、かなり狭い範囲でしか認められないと考えてください。コロナ禍では、この点が論点になりましたが、最終的には、国がコロナ禍の休業支援金制度を作りましたので、従業員から見て、全く何も補償がないという事態にはなりませんでした。

相談者
相談者

よくわかりました。まとめると、休業手当は、①法律で決まっている制度である・②休職とは全く違うものである・③休業手当は、会社側の都合で営業を止める場合に支払うものである・④法律上の義務は「平均賃金の60%」支払でよいが、敢えて100%支払いにしてもよい・⑤会社に全く非がない理由で休業しないといけない場合には、休業手当の支払義務自体がなくなるが、その範囲はかなり狭い、ということですね。

播磨先生
弁護士

そのようなイメージでよいと思います。

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【著者情報】

企業法務部 部長 福岡県弁護士会(弁護士登録番号:33334)

九州大学大学院法学研究科修士課程 修了

米国Vanderbilt Universityロースクール(LLMコース) 卒業

三菱商事株式会社、シティユーワ法律事務所を経て、現在弁護士法人グレイスにて勤務

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監修者

弁護士法人グレイス企業法務部

本店所在地
〒105-0012 東京都港区芝大門1丁目1-35 サンセルモ大門ビル4階
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