企業法務コラム
新入社員を採用したときには要注意!~試用期間と経歴詐称~
更新日:2024/07/30
東京・神戸・福岡・熊本・長崎・鹿児島に拠点がある弁護士法人グレイスの労働法コラムです。
今回のテーマは、新入社員の雇用についてです。
相談者
労働に関する問題が多い中、社員を採用するにあたっては例えばどのような問題がありますか。
弁護士
新卒採用か中途採用かを問わず、新たな人材を採用しようとする際に、面接だけでその人材の適性や能力を見極めることが困難です。そのために「試用期間」を設ける企業も少なくありません。
相談者
試用期間とは何でしょうか。
弁護士
直ぐには確定的な採用とはしないで、一定の期間勤務させ、そのうえで問題がなければ本採用をするという方法が採られることがありますが、その場合の「一定の期間」のことを「試用期間」といいます。
相談者
本採用と何が違うのですか。
弁護士
本採用と違うのは、試用期間の付された雇用契約は使用者が従業員として不適当と判断した場合に解約権を行使できるという点です。
相談者
試用期間が長ければ、その従業員はずっと不安定な立場となりますね。
弁護士
そのとおりですね。そのため、試用期間は可能な限り短く設定すべきと解されており、半年を超えるような試用期間の設定は公序良俗に反し無効とされる可能性があります。
相談者
試用期間であれば、使用者はいつでも本採用を拒否できるのですか。
弁護士
そんなことはありません。実際には本採用を拒否するためには、解約権留保の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的な理由が存在し、社会通念上相当と認められる必要があります。
相談者
そうすると、試用期間中でも本採用の拒否は難しいのですか。
弁護士
試用期間中であると一定の裁量こそ認められますが、解雇と同様、本採用の拒否は厳しく判断されることに変わりはありません。
相談者
一度採用しても、使用者が求めていた人材と違う場合にも解雇が難しいのでしょうか。
弁護士
経歴詐称の問題が典型例ですね。
相談者
経歴詐称ってどのようなものですか。
弁護士
採用をする際に、年齢や職歴、犯罪歴を秘匿したり、虚偽の申告をした場合のことを指します。
相談者
それは、悪質だから解雇ができそうな気もしますが。
弁護士
確かに、経歴詐称は労働者と使用者との間の信頼を失わせるだけでなく、使用者による労働者の能力の適正な評価を誤らせるものなので、懲戒処分が認められ得ると考えられています。
相談者
経歴詐称があれば必ず懲戒処分ができるのですか。
弁護士
そうではありません。
懲戒処分は就業規則上に懲戒の事由として経歴詐称が定められていなければなりません。また、あらゆる経歴詐称が懲戒事由として認められるものではなく、重要な経歴詐称に限られるとも考えられています。
相談者
重要な経歴詐称になるのは例えばどのようなものですか。
弁護士
最終学歴や職歴、使用者が求めていた資格の有無や、犯罪歴の有無等が挙げられます。
相談者
よく分かりました。
【著者情報】
播摩 洋平弁護士
企業法務部 部長 福岡県弁護士会(弁護士登録番号:33334)
九州大学大学院法学研究科修士課程 修了
米国Vanderbilt Universityロースクール(LLMコース) 卒業
三菱商事株式会社、シティユーワ法律事務所を経て、現在弁護士法人グレイスにて勤務
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