企業法務コラム
休職とはどのような制度なのか?
更新日:2024/11/26
東京・神戸・福岡・熊本・長崎・鹿児島に拠点がある弁護士法人グレイスの労働法コラムです。
今回のテーマは、休職と復職に関する諸問題についてです。
相談者
近年、心の病により、会社を休職する社員が増加しているように思われますが、休職制度の利用をめぐるトラブルはあるのでしょうか。
弁護士
もちろんあります。それは、使用者も労働者も休職制度の正確な理解を欠いていることにより発生しているように見受けられます。そもそも休職制度とはどういう制度でしょうか。
相談者
雇用関係を維持しながら、労働を免除する制度という話を聞いたことがあります。
弁護士
そうですね。より詳しく説明すると、ある労働者につき労務に従事させることが不能または不適当な事由が発生した場合に、使用者がその労働者に対し労働契約そのものは維持させながら労務への従事を免除すること又は禁止することをいいます。
相談者
これは法律上どのように規定されている制度なのでしょうか。
弁護士
労働基準法には規定はありませんが、労働基準法施行規則には「休職に関する事項」が労働契約の締結にあたって使用者が労働者に対して明示しなければならない労働条件の1つとされており、休職制度の存在は当然の前提とされています。
相談者
さきほど休職について「労務に従事させることが不能または不適当な事由が発生した場合」という説明がされていましたが、具体的にはどのような場合があるのでしょうか。
弁護士
これも具体的に法律によって定められていないので、使用者によって種々の制度設計がされているのが実際です。代表的なものに私傷病による休職や事故欠勤休職があります。
相談者
私傷病による休職とはどのようなものでしょうか。
弁護士
これは業務外の傷病による欠勤が一定期間に及ぶ場合に利用される休職です。休職期間は傷病の内容や勤務年数に応じて決められることが多く、数ヶ月の場合から1年にわたる場合まで多岐にわたります。使用者が定めている期間中に就労可能に至れば復職することになりますが、回復しないまま期間が満了した場合には自動退職や解雇となる旨定められていることが多いです。
相談者
定められていることが多いというのは、使用者によって休職の扱いが異なるのですか。
弁護士
そのとおりです。さきほども説明したように休職についての細かな規定が法律上存在する訳ではないので、休職制度をどのように設計するかについては使用者に一定の裁量が与えられているとはいえますね。休職事由をどうするか、休職期間をどれだけにするかといった内容は使用者によって異なっていますね。
相談者
使用者が自由に定められるということでしょうか。
弁護士
裁量があるといっても当然、一定の限界はあります。休職は種々の目的によって制度設計されますが、例えば私傷病による休職は、就労不能の場合に直ちに解雇とするのではなく、一定期間解雇を猶予する目的で利用されることが多いです。そうすると、解雇猶予である以上、休職期間として定められる期間が通常の解雇予告期間よりも短い場合や、回復が見込まれるにもかかわらず形式的に期間満了をもって解雇する場合等においては、解雇猶予として十分ではなく、解雇自体が無効であるとの判断がなされるおそれがあります。
相談者
従業員が休職を求めることができるのでしょうか。
弁護士
一般には、従業員が休職を求めるのではなく、使用者が従業員に休職を命じるという制度設計をしていることが圧倒的に多いです。というのも、休職は使用者による解雇の猶予として利用されていることが多いためです。
相談者
それでは使用者が休職を命じた場合、休業手当は発生するのでしょうか。
弁護士
使用者が休職を命じる場合は、通常、私傷病による休職等、従業員本人に原因のある事情からなされることが多く、休業手当につき定める労働基準法26条にいう「使用者の責に帰すべき事由による休業」とはいえません。そのため、休業手当の支払いが不要な場合が多く、就業規則でもあえて「無給」と注意的に規定しているものが多いです。
相談者
一言で「休職」といっても、休職事由の有無や、休職期間、その間の手当の有無、復職させることの妥当性判断等、種々の問題がはらんでいるようですね。よく分かりました。
【著者情報】
播摩 洋平弁護士
企業法務部 部長 福岡県弁護士会(弁護士登録番号:33334)
九州大学大学院法学研究科修士課程 修了
米国Vanderbilt Universityロースクール(LLMコース) 卒業
三菱商事株式会社、シティユーワ法律事務所を経て、現在弁護士法人グレイスにて勤務
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